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今日の筆洗

2017年09月12日 | Weblog

 アガサ・クリスティの推理小説「七つの時計」の中に目覚まし時計を使ったちょっとした、いたずらの場面が出てくる▼ひどく朝寝坊の男を起こすために友人たちが男の部屋に八つの目覚まし時計を仕掛けて、午前六時半から順に鳴りだすようにセットする。これならば、男は必ず起きるはずだ▼翌朝、目覚まし時計は鳴った。ところが男は起きない。なぜ目覚まし時計の連続攻撃にもはね起きなかったのかはちょっと伏せておく▼さて、同じ時計でも、地球環境の悪化に伴う人類存続の危機を時刻で示す「環境危機時計」の話である。先日の発表によると、今年は九時三十三分となり、昨年より二分も進んだと旭硝子財団が発表した▼世界の研究者、政府関係者からのアンケート結果で時計の針を動かしている。九時三十三分は二〇〇八年と並び、最も危機に近い。米トランプ政権の地球温暖化対策「パリ協定」からの離脱表明も二分進んだ背景となったのだろう。気候変動、環境汚染、水資源…。危機の針は刻々と進んでいく▼あの男はなぜ目覚まし時計に微動だにしなかったか。なんということはない。既に毒殺されていた。死んでいては、目覚ましに気がつくことはない。環境危機の大きなアラーム音に「心配ないさ」の毛布をはねのけ跳び起きたい。それができるのも今のうちとは脅しすぎか。されど時間はあまりない。