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5/7筆洗

2017年05月08日 | Weblog

 神罰など「年寄りの大うそ」と考えていたある少年、お稲荷さまの社に忍びこみ、ご神体を暴いてしまう▼中にあったのは石だった。少年はこれをうち捨て、別の石に取り換えてしまう。もちろん、何も知らぬ人たちはその後もお稲荷さまを大切にする。「馬鹿め、乃公(おれ)の入れて置いた石に御神酒(おみき)を上げて拝んでるとは面白い」。とんだ悪坊主(ぼうず)は、少年時代の福沢諭吉である▼非科学的な迷信や神罰に疑いの目を向けるのは学問の一歩かもしれぬが、この島ばかりは福沢少年から遠ざけておきたい。福岡県宗像市沖約六十キロの玄界灘にある沖ノ島である。世界遺産への登録勧告をユネスコの諮問機関から受けた▼島全体がご神体であるがゆえ、厳格な禁忌によって守られてきた。女人禁制。神職でさえ上陸前には海で禊(みそぎ)をしなければならぬ。島から一木一草一石たりとも持ち出すことは許されぬ。「おいわずさま」とは島で見たことを口外してはならぬというしきたりという。そこまでして守り続けた祭祀(さいし)の場である▼世界遺産といえば、観光資源や経済効果が注目されるが、本来の目的は遺産の保護と保全である。登録勧告で島への関心が高まるのは自然なこととはいえ、禁忌を無視した上陸などで島を傷つけるようなことがあってはならぬ▼非科学的とおっしゃるか。されど、そのおかげで神の宿る島は守られ、世界の遺産となる。