「親を呼んでるんだな」
相方が云う。
「どこだ?」
辰樹は、鳴き声を辿る。
「どこにいるんだー」
あたりを見る。
鳴き声が止む。
辰樹は、草をかき分ける。
「鳴かなくなったな」
「こっちに、驚いたんだよ」
相方が云う。
「ほら、そっちの草むらだ」
辰樹は、相方が指差す方を見る。
草をかき分ける。
そこに、雛がいる。
「いた!」
小さな雛。
けれども、いずれ、大きな鳥となる。
雛は、再度鳴き出す。
「やっぱりすごいな、お前!」
「それは、ありがとう」
辰樹は、雛を見る。
「親鳥はどこだろう?」
「近くにいるさ」
「探してやるか」
「そうだね」
「…………」
「…………」
「すごいよな」
「何が?」
「食べちゃうんだぜ、西は」
「……ああ。急にその話」
「よく、食えるよな」
東一族には、肉を食べる習慣がない。
敵対する西一族は、狩りを行い、肉を食べるらしい。
雛が鳴く。
辰樹は、雛を抱える。
「…………」
「……辰樹?」
「…………」
「辰樹、どうした?」
「……かわいい」
辰樹は、雛を見つめる。
相方は、何だそりゃ、と、辰樹を見る。
「そりゃよかった」
「俺、飼い慣らそうかな」
「親鳥がいなかったら、ね」
「判ってるって」
相方は、耳を澄ます。
「いるかな」
「どこか、木に巣があるんじゃないか」
「この時期は、どの巣にも雛がいっぱいだからな」
そう云う時期。
巣を間違えないようにしなければ。
「あ、ほら。あそこに巣がある」
辰樹は、指を差す。
相方は頷く。
「訊いてみるか」
相方は枝を掴み、木を登る。
巣の近くまで行く。
辰樹はその様子を見る。
しばらく待つ。
「違うって」
相方が降りてくる。
「そうか」
「でも、向こうの巣の雛だろうって」
「向こうの巣か」
相方は、辰樹から雛を受け取る。
そのまま、別の木に登り、雛を巣に帰す。
「やっぱり、そうだって?」
「うん」
東一族は、動物を供とする、が
相方のように、動物と話せる力を持つのは、ごくわずか。
「お前がいてくれてよかったよ……」
「うん。親鳥が見つかってよかった」
「…………」
相方は、辰樹をのぞき込む。
「……辰樹」
「なんだよ」
「泣くなよ?」
「泣かないし!」
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