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「辰樹と天樹」2

2015年05月22日 | T.B.2016年

「親を呼んでるんだな」

 相方が云う。

「どこだ?」
 辰樹は、鳴き声を辿る。
「どこにいるんだー」
 あたりを見る。

 鳴き声が止む。

 辰樹は、草をかき分ける。

「鳴かなくなったな」
「こっちに、驚いたんだよ」
 相方が云う。
「ほら、そっちの草むらだ」

 辰樹は、相方が指差す方を見る。

 草をかき分ける。

 そこに、雛がいる。

「いた!」

 小さな雛。
 けれども、いずれ、大きな鳥となる。

 雛は、再度鳴き出す。

「やっぱりすごいな、お前!」
「それは、ありがとう」

 辰樹は、雛を見る。

「親鳥はどこだろう?」
「近くにいるさ」
「探してやるか」
「そうだね」
「…………」
「…………」
「すごいよな」
「何が?」
「食べちゃうんだぜ、西は」
「……ああ。急にその話」
「よく、食えるよな」

 東一族には、肉を食べる習慣がない。
 敵対する西一族は、狩りを行い、肉を食べるらしい。

 雛が鳴く。

 辰樹は、雛を抱える。

「…………」
「……辰樹?」
「…………」
「辰樹、どうした?」
「……かわいい」

 辰樹は、雛を見つめる。

 相方は、何だそりゃ、と、辰樹を見る。

「そりゃよかった」
「俺、飼い慣らそうかな」
「親鳥がいなかったら、ね」
「判ってるって」

 相方は、耳を澄ます。

「いるかな」
「どこか、木に巣があるんじゃないか」
「この時期は、どの巣にも雛がいっぱいだからな」

 そう云う時期。
 巣を間違えないようにしなければ。

「あ、ほら。あそこに巣がある」
 辰樹は、指を差す。
 相方は頷く。
「訊いてみるか」

 相方は枝を掴み、木を登る。
 巣の近くまで行く。

 辰樹はその様子を見る。
 しばらく待つ。

「違うって」
 相方が降りてくる。
「そうか」
「でも、向こうの巣の雛だろうって」
「向こうの巣か」

 相方は、辰樹から雛を受け取る。

 そのまま、別の木に登り、雛を巣に帰す。

「やっぱり、そうだって?」
「うん」

 東一族は、動物を供とする、が
 相方のように、動物と話せる力を持つのは、ごくわずか。

「お前がいてくれてよかったよ……」
「うん。親鳥が見つかってよかった」
「…………」

 相方は、辰樹をのぞき込む。

「……辰樹」
「なんだよ」
「泣くなよ?」
「泣かないし!」



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