冷たい風が吹く。
辰樹と天樹は、東一族の村からほど近い砂漠へと出る。
「寒っ……」
辰樹は呟く。
まだ、日が沈む時間ではない。
けれども、雲が出ているせいか、あたりは薄暗い。
「辰樹、はぐれるなよ」
「判ってる」
天樹が指を差す。
「そこに地点だ」
「解除するか?」
「いや」
天樹は首を振る。
「こちらの居場所がばれる」
辰樹と天樹は砂漠を進む。
冷たい風。
あたりを見る。
一面の砂。
「天樹、」
「…………」
辰樹は緊張する。
何かが近くにいる。
そんな気がする。
「多いな」
天樹が呟く。
「多い?」
辰樹も小さな声で返す。
「多いって、何が?」
「砂の数だよ」
天樹が云う。
「思っていたより、多い」
「まさか」
辰樹は、刀を持つ。
「辰樹」
天樹が云う。
「俺が、非常時の転送術を準備しておくから」
天樹は持っている弓で、足下の砂をなぞる。
そこに、法則を持った紋章を描く。
東一族の紋章術。
「何かあれば、ここに来い」
天樹が云う。
「東に転送されるようにしておく」
「判った」
「砂をよく見て」
天樹が云う。
「浄化方法を知っている砂一族を洗え」
「判った」
…………。
「……??」
…………。
「でも自身を守るのが、一番だ」
「……おう」
答えながらも、辰樹はあたりを見る。
…………。
何かの
「音が、」
「!!」
突然の砂嵐。
「辰樹!」
天樹が叫ぶ。
「砂だ。天樹!!」
舞い上がった砂に、目がくらむ。
「…………っ!」
「東だ」
ふたり以外の声。
「やっと来たか」
「遅かったねー」
「待ってたし」
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