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「成院とあの人」11

2014年07月22日 | T.B.1999年

「君が医師見習い?」

「はい」

医師は首をひねる。

「医師を目指していたのは、戒院だっただろう」

えぇ、と彼は頷く。

「俺は、助かった命の代わりをしたい」

「君が悪いわけではないよ」

誰でもない、憎むなら病を、と。
医師は言う。

「それでも、ですよ」

医師は病室の窓を開ける。
そこから湖をながめながら言う。

「……戒院は、死ぬ運命だった」
「え?」
「病のことが宗主に知れたからだ。
 病が広がる前に殺せと、命令が出ていた」

「なぜ、今、その事を言うんですか?」

「―――あの時、この事を伝えていたとしたら
 結果は変わっていただろうか」

気にするなと言いながら、
医師は彼を試すような事を聞く。

「同じだったと、思います」

「そうか」

医師は窓を開けたまま病室を後にする。
もう、彼から感染を恐れる必要が無い。

「じきに起き上がれるようになるだろう。
 そうしたら、君は医師見習いだ」

医師はいう。

「とりあえずは、体調を元に戻すんだな
 ――― 成院」
 

T.B.1999年 東一族の村にて


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