「君が医師見習い?」
「はい」
医師は首をひねる。
「医師を目指していたのは、戒院だっただろう」
えぇ、と彼は頷く。
「俺は、助かった命の代わりをしたい」
「君が悪いわけではないよ」
誰でもない、憎むなら病を、と。
医師は言う。
「それでも、ですよ」
医師は病室の窓を開ける。
そこから湖をながめながら言う。
「……戒院は、死ぬ運命だった」
「え?」
「病のことが宗主に知れたからだ。
病が広がる前に殺せと、命令が出ていた」
「なぜ、今、その事を言うんですか?」
「―――あの時、この事を伝えていたとしたら
結果は変わっていただろうか」
気にするなと言いながら、
医師は彼を試すような事を聞く。
「同じだったと、思います」
「そうか」
医師は窓を開けたまま病室を後にする。
もう、彼から感染を恐れる必要が無い。
「じきに起き上がれるようになるだろう。
そうしたら、君は医師見習いだ」
医師はいう。
「とりあえずは、体調を元に戻すんだな
――― 成院」
T.B.1999年 東一族の村にて