青空が、曇り空へと変わる。
雨雲。
すぐに、雨が降り出すのだろう。
マユリは、風を確認する。
音を立てる。
鳥たちを呼ぶ音。
マユリは、持っていた箱を地面に置く。
目の前の止まり木を見る。
鳥を、待つ。
やがて
一羽が降り立つ。
大きな鳥。
止まり木で、羽を広げる。
「おかえり」
マユリが云うと、その鳥は再度、羽を広げる。
それを合図に、空から鳥が集まってくる。
たくさんの、鳥。
この、山一族が、飼い慣らしている鳥。
マユリは、この鳥たちを世話している。
マユリは、箱から餌を取り出す。
まず、最初にやってきた鳥に、それを与える。
「いい子ね」
マユリが云う。
「今日の空はどうだった?」
マユリは鳥を見る。
鳥も、ただ、マユリを見つめる。
「……そう」
マユリは頷く。
と
ふと、視線を感じて、マユリは振り返る。
「まあ」
そこに、
カオリがいる。
マユリは、微笑む。
「いつからそこに?」
「いつの間にか、よ」
カオリが云う。
「マユリの手伝いに」
「あら。ありがとう」
マユリは、カオリに箱を渡す。
カオリは箱から餌を取り出し、順番に餌を与える。
マユリは、布で鳥の羽を拭う。
「雨が降りそうね」
カオリは空を見上げる。
風が冷たい。
「急ぎましょう」
「ねえ、マユリ」
「何?」
カオリは、新しい餌を持ち、云う。
「私も、フタミ様のお鳥様に、さわれるかな?」
マユリは、顔を上げる。
カオリを見る。
微笑む。
「どうかしら?」
さわれるかどうか、は、鳥が決めること。
マユリは、一歩離れる。
手を向ける。
どうぞ、と。
カオリは、フタミの鳥を見る。
少し、ためらう。
が
息を吐き、鳥に近付く。
一歩。
鳥が、カオリを見る。
一歩。
鳥は、微動だにしない。
カオリは、緊張した面持ちで、さらに近付く。
一歩。
もう、一歩。
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