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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「ヨツバとカイ」3

2014年08月12日 | T.B.2000年

「はい、どうぞ」

カイと言った東一族はヨツバに暖かいお茶を差し出す。
露店で売られていた物だ。
少し肌寒い今の季節にちょうど良い。

「どうも」

カイは一人分の距離を開けて
ヨツバの隣に腰かける。

並んで座る東一族と西一族に驚く人も多い。
もし、誰か見ていたら何と言うだろう、と
ヨツバは思う。

村の誰か、とか。
―――サトル、とか。

ふと見ると、カイは自分の持っていたお茶に口を付けている。

「ちょっと、大丈夫??」
「え?」

ぽかんとした、カイに
ヨツバは、あ、間違えた、と気付く。

熱い飲み物がダメなのは
猫舌なのは、サトルだった。

「なんでもないわ」
「なんだ?恋人と間違えた??」

カイは笑う。

普通だ。
と、ヨツバは思う。
普通のそこら辺に居るような人だ。

なのに、なぜ
西一族と東一族は対立しているのだろう。
それとも、
自分が少し変わっているのだろうか。

「あぁ、悪い
 少しからかっただけなんだ」

返事を返さないヨツバに、カイは勘違いをしたようだ。

「気にしていないわ。恋人とは」

うん、そうね。とヨツバは呟く。

「別れようかなって、考えてるところ」

二人の間に沈黙が落ちるが、カイが口を開く。

「なんだ、
 西一族は狩りの一族だろう。
 それで、恋人が失敗でもしたのか?」

ヨツバは首を振る。
何か間違えたのだとしたら
それはきっと、サトルではない。

「ヨツバも狩りとか行くの?」
「えぇ、そうよ。なに?」
「うちの一族は狩りには行かないけど
 そういう役目は男だけだからな」
「ふぅん」

「でもさ」

「危ないんじゃないのか、獣は菌を持っているじゃないか」

面白い事を聞く人だ。とヨツバは思う。
普通こういう時は
動物の凶暴さが気になるのじゃないだろうか。

ヨツバは笑う。

「そうね、注射は少し怖い、かもね」
「―――なんだ、それ」

「もしもの時は、薬があるから大丈夫よ。
 それに、予防策として年に一度予防接種をするの」

一昨日は
そのために病院に向かったのだった。

「そんな感じよ」

そう言いながら
ヨツバは違うことを考える。


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