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「成院と戒院と」5

2017年11月21日 | T.B.1997年

東一族の村から離れた砂漠地帯。

「ねぇ、どうするのこれ」
「どうしようか」
「まさかね、南一族だったとは」
「この髪が邪魔で見えなかったんだよね
 頬のマーク」
「でも東一族の服着ているじゃない」
「紛らわしい方が悪いよね」
「今さらこっそり帰すわけにもいかないし」
「仕方ないから
 この子をそのまま使っちゃおう」

砂一族はその子を抱えたまま
思い思いに話す。

騒がないようにか
口元に布を掛けられている。

「運が悪かったと思って
 諦めてね」

ねぇ、と
屈託の無い笑顔で
砂一族は言う。

「あんまり煩わしいと
 ここで殺しちゃうからね」

暴れていた南一族の子は
その声に動きを止める。

「あぁあ、泣いちゃうかな?」
「ねぇねぇ怖い?」

面白そうに砂一族達は
声を掛ける。

が。

「……おかしいな。
 なんでここに居るの?」

声の調子を落として
後ろを振り返る。

「東一族さん」

砂一族から少し離れた場所に、
成院と戒院が立っている。

「東一族の村から
 随分と離れたつもりなんだけど。
 いつの間に追いついたんだ?」

成院が戒院に言う。

「間違い無い、南一族の子だ。
 でかしたぞ戒院」
「いや、頑張ったよ、俺」

ふぅ、と
座り込みながら戒院が答える。

「転送術使うの
 すっごい久しぶりだから
 緊張したわ~」

その言葉に
砂一族は舌打ちをする。

「東一族の紋章術か」
「へぇ、あいつら高位家系かな?」

「これ、結構体力使うから、
 後は成院、任せた!!」
「ああ」

言葉と同時に成院は飛び出す。

砂一族は二人。
躊躇いもなく刃物を振りかざす。
砂に足を取られながらも
成院は自身の武器で刃先を受け流す。

「その子を離せ」

「言われて、はいどうぞ、って
 渡すと思う?」
「そんなわけ無いよね」

言葉と同時に
二人の攻撃が続く。

「どうするつもりだ」

「どうって」
「決まっている」
「我ら砂一族の薬の実験だよ」

その言葉が終わらないうちに
砂一族の一人が
蹴り飛ばされる。成院に。

その勢いで、
辺りは一瞬砂煙に覆われる。

「………」

「おや、結構強い」
「参ったな、
 もしかして、ちょっと不利?」

砂一族の次の行動は早い。

「ねぇ、動かないで。
 この子殺すよ」

持っていた刃物を
そのままその子に突きつける。


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