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「律葉と秋葉と潤と響」12

2018年11月27日 | T.B.2024年

潤が、もう次の狩りには居ない。
話しも出来ないまま。

それは、
きっと後悔する気がする。

潤にもそうだけど、
秋葉にも響にも言わないといけない。

「この前は、
 雰囲気を悪くしてごめんなさい」

「自分の意見を言っただけだろ」
「狩りは私達の誇りだからね」
「でも私、潤の事ひっぱたいちゃって」
「潤も強情だからね」
「だから、
 律葉が謝りたいのなら、潤にだけ。
 俺達には、何もないよ」

ね、と2人は言う。

「潤はまだ村に居る?」

律葉の問いかけに
うん、と響が嬉しそうに頷く。

「出発は明日って言ってたから」
「それじゃあ、会いに行く」
「うん」

「潤、喜ぶと思う」

秋葉も言う。

「ねぇ、潤の家を教えて。
 私知らなくて」

「………」
「………」

と、その場の空気が止まる。

「だから、潤の家」
「………あれ?」
「律葉、知らないの」

何が、と律葉が問いかけようとした時、
玄関のドアが開く音がする。

「ただいま」

そのまま、廊下を通り、
こちらに歩いてくる気配。

今の、声は。

「響、ちゃんと付いていただろうな。
 秋葉、頼まれた物買ってきたぞ」

「潤――――!!!」

「え?律葉、来てたんだ!?」
「どういう事!!」
「????」
「だから、どうして秋葉の家に、
 潤がただいまって帰ってくるの!?」
「???俺の家だから!???」
「俺の家ぇ???」

「落ち着いて、律葉」

どうどう、と
響がお茶を差し出す。

「いただくわ」

そのまま適温で出されたお茶を
一気飲みして、
ふーーー、と律葉は息を吐く。

「いい?聞いて律葉??」

秋葉が律葉の手を握る。

「私のおかあさんの弟が潤なの」
「………潤、叔父さんだったのね」

親戚と聞いては居たが、
叔父と姪っ子の関係だったとは。

「そして、この家は、
 おかあさんの家で、
 そして、南から戻ってきた時から
 潤もこの家に住んでるのよ」
「情報量が多い」

「ちなみに、俺は
 秋葉の父親の弟で」
「?????」
「響、律葉が混乱するから
 その話は後で」

「ええっと、つまり」

律葉は潤を見る。

「おかえり、潤?」
「ただいま」

事態はなんとなく把握出来たけれど、
心の準備がまだ出来ていなかった。

あの日の狩りから
なんとなく潤を避けていた。
律葉も勢いが付いて、引っ込みづらくなったのだ。

「あの、潤」

「よかった」

潤のそういう顔は初めて見た。
冷静に班を回していて、
どこか一歩引いて話していたのは
きちんと役割を務めようとしていたからなのだろう。

その時とは違う。

本当に、良かったと言うように。

「律葉、顔の傷
 跡には残らなかったみたいだ」
「あんなの、別に」

律葉は意地になっていたのに。
潤はそんな事構わず、
ケガを気にかけてくれていた。

そう、響もさっき、
よかったと言っていた。

あれもそう。

「ごめんなさい」
「律葉!?」
「私、潤に酷いことしたのに」

「いや、狩りの流れを上手く調整出来なかった
 俺のせいだから」

「そんな事言わないで」
「律葉、泣かないで」
「泣いてない」

ちょっと、
感傷的になっているだけ。

大丈夫?と
秋葉も手を握ってくれている。

「もう一度、
 潤とみんなで、狩りに行きたかった」

きっと、今度はちゃんと出来る。
このメンバーで狩りの成果を出して
皆に見せてあげたかった。

「うん。
 なるべく早く帰ってくるから」
「帰って………うん。帰って?」

「3ヶ月なんてあっという間だよ」
「そうね、3ヶ月
 律葉には私達が付いているよ」
「3ヶ月、班長を頼んだぞ響」

「はい?」

3ヶ月、とは。

「父さんも急だけど
 俺も早く用事を終わらせてくるよ」

律葉は先程までの皆の会話を思い出す。

『……(3ヶ月いないなんて)少し、寂しくなっちゃうね』
『とりあえずは、
 俺が班長として(3ヶ月)班を回すつもり』

律葉は変な噂を聞いたのだけど、と言ったが
詳細は話していなかった。

潤が班長を辞めるというのは話しが広まるうちに
内容が大きくなっただけ?

「ああああ」

「大丈夫律葉?
 顔すごく赤いけど」

「放っておいて、お願いだから」

何事も、情報の確認はきちんとしろ、と
父親も言っていたじゃないか。

「恥ずかしいぃい」
「律葉、しっかり!」

何が何やら、と
当の本人である潤も訳が分からず
困った顔をしている。

「ふふ」

もう、
律葉は何だか可笑しくなってくる。

「あぁ、もう」

今日はもう、驚いてばかりだ。

「早く帰ってきてね。
 待ってるわ、潤」

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