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「涼と誠治」15

2017年03月17日 | T.B.2019年

「入るよ」

 しばらくして、扉が開く。
 誰かが入ってくる。

 涼の担当医。

 涼は、目を閉じている。

「どうだ?」
「何が?」
「いや、体調だよ」
「…………」
「たまには様子を見に来た」
「…………」
「俺は、村長からお前のことを任されてるからな」

 涼は答えない。

 担当医は、涼の向かいの椅子に坐る。

 何も云わない。
 涼を見ている。

 涼は、目を閉じたまま、云う。

「俺を見張りに?」

「ん?」

「見張りに来たのか」
「見張りって、お前。」

 担当医は、笑う。

 涼は目を開く。

「どこにも逃げないし、見張りなんか必要ない」

「いやいや」

 何を云うんだ、と、担当医は手を上げる。

「俺は担当医だぞ。お前を診に来ただけだって」

 担当医は、苦笑いをする。
 その額に、汗が流れる。

「……ほら、お前の腕の模様」

 担当医が訊く。

「今も痛むのか」

 涼は、担当医を見る。
 けれども、視線は合わない。

 涼が云う。

「この模様が、何か、……知っているのか」
「え?」
「腕の模様」
「いや、……そう。どう云う病なんだろうな」
 担当医は首を傾げる。
「見当も付かない」

「本当は、」
「ん?」
「知っている?」

「…………」

「腕の模様。実は、」
「お前、」

「魔法痕、だと」

 担当医は、目を細める。

 その表情は今までと違い、怖ろしい。

「あんたは内部諜報員なのだから知っているんだろう」
「……だから、俺は反対したんだ」

 担当医は、怖ろしい表情のまま。
 涼の言葉をさえぎるように、云う。

「黒髪のお前を生かしておくこと」

「なぜ殺さなかった」

「今の村長が考えることは判らん」

「何も」

「おい、動くな」

「俺は何もしない」

「この家から出るな」
「…………」
「お前は狩り以外で、村外に出ることは禁じられている」
「なぜ?」
「村長は、お前が西から離族することを怖れている」
「…………」
「黒髪のお前が、東に付く可能性があるからだ」
「ばかなことを」

 担当医が云う。

「あの娘はこちらで迎えに行く」

 担当医は立ち上がり、扉へ近付く。
 振り返り、再度涼を見る。

 そのまま、外へと出る。



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