雪が降っている。
が、まだ少ない方だ。
今のうちに畑を見ておこうと、彼は準備をする。
暖炉に火を起こす。
部屋が暖まる。
彼は暖炉の横を見る。
薪はない。
外の置小屋にもう少しあるはずだが、
今後を思うと、薪も集めておかなければならない。
彼女はまだ動き出さない。
早い時間。
人目に付かないうちに外でやることを覚えた、自分の時間。
彼は家を出る。
畑に向かう。
積もった雪が、いつもより厚い。
なかなか、前へと進めない。
息を切らして、彼は畑を眺める。
もちろん、雪一色。
先ほどより、あたりは明るくなっている。
判りやすい場所に荷物を置き、彼は、道具だけを持つ。
雪をかく。
彼は首を傾げる。
何も出てこない。
ここは、もう、掘り上げた場所だっただろうか。
彼は場所を変え、作物を探す。
雪をかく。
少し、多めに作物を持ち帰ろう。
雪をかき、土を掘り、作物を取り出す。
まだ、畑には十分に作物がある。
雪が溶け暖かくなるまで、食糧は保つ。
と、
何かがこちらを見ている。
巧は顔を上げる。
静かな場所。
ほんの少し、降っている雪。
その中に、
獲物。
一羽の兎
餌を求め、さまよっているのだろうか。
無意識に、彼は手に持つ道具を、握り直す。
目が合っている。
もちろん、彼のことは気付いている。
少しの距離。
彼は、一歩踏み出す。
獲物は、動かない。
また、一歩。
一歩。
瞬間
獲物は向きを変える。
「…………っ!?」
彼は走り出そうとする。
が
走り去る獲物。
追いつくわけがない。
狩りの飛び道具も、ない。
あったところで、扱うことは出来ない。
すぐに、獲物の姿は見えなくなる。
「…………」
その方向を、彼は見る。
また、現れるわけでもないのに。
彼は息を吐く。
畑に戻る。
作物をまとめ、道具を持つ。
空を見る。
先ほどより、雪の量が多くなっている。
けれども、まだ、薪を集めなければならない。
彼は歩き出す。
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