「西、一族……」
山一族は、琴葉を見る。
云う。
「武器は?」
「…………」
「訊いているのか」
「持ってない」
彼らは互いに頷く。
「探しに来たのは、黒髪の西一族だな」
「……知っているの?」
「知っている」
山一族は、琴葉を囲む。
「我々の村にいるからな」
「…………」
「来い」
「彼を、……助けて、くれたの?」
「助け?」
「…………」
「族長様の命だ」
「そう……」
山一族は歩き出す。
「行くぞ」
「…………」
「どうした?」
「……ありがとう」
琴葉も歩き出す。
雨が降り続く。
夜も更け、気温が下がる。
琴葉は、山一族に続く。
が
思うように、進めない。
「急ぐぞ」
「夜の山は危険だ」
「走れるか?」
「……走れない」
「足が痛むのか?」
「平気っ」
琴葉は目を細める。
彼のことを思うと、これぐらい何ともない。
見かねた山一族が云う。
「おい、肩を貸してやれ」
「平気だってば!」
「我々の時間も限られている」
「時間って何よ」
「急げ。時が経てば、族長の考えも変わらんこともない」
山一族の村にいる西一族への扱いが、変わるかもしれない、と。
琴葉は黙る。
腕を、山一族が掴む。
山一族は琴葉を抱えるように、山道を進む。
どれぐらい歩いたか。
しばらくして、
明かり。
山一族の村。
琴葉は空を見上げる。
雨が止んでいる。
夜明けまでどれくらいか。
「こちらへ」
琴葉は村を見渡す。
西一族とは違う、景色。
におい。
別の山一族がやって来る。
「西一族が来たのね」
「黒髪の西一族を探しに来たらしい」
「ふうん」
山一族の女性が、琴葉を見る。
「こちらは、現族長様の娘様だ」
「いいよ、紹介なんて」
鼻であしらう。
「あんたは、まっとうな西一族のようだねぇ」
「あいつはどこにいるの」
「ふふ。こっちだよ」
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