数名の山一族は、馬で、一気に崖を下りる。
一歩間違えれば、命はない。
けれども彼らは、手慣れたように、崖を下りる。
「いたか!?」
「いや、こちらには!」
「やはり、裏には逃げられているな」
馬に乗ったまま、山一族はあたりを警戒する。
裏一族の気配は、もはやない。
「落ちたと云う、西一族は?」
「もはや、助からんだろう」
「村へ戻るか」
ひとりが、馬を動かす。
が
「待て!」
別の山一族が、何かに気付く。
「いるぞ!」
「何!?」
「どこだ」
山一族は集まる。
ひとりが、馬から下りる。
さやを持つ。
叩く。
「死んでいるのか」
「当たり前だろう」
「死んだな」
黒髪の西一族が倒れている。
ひとりだけ。
「ひとりなのか?」
「そのようだな」
「声はふたりしたんだが」
再度、さやで、西一族を叩く。
けれども、動かない。
「あの上から落ちてきたんだぞ」
「雷に、当たったか」
「残念だったな」
と、
山一族は一歩下がる。
「……どう云うことだ」
倒れている黒髪の、指がわずかに動く。
「生きて、る」
「ありえない」
山一族は顔を見合わせる。
「どうする?」
「奇跡じゃん」
「なら、」
ひとりが頷く。
「この状況を聞き出せるわけだ」
「ははっ」
「山へ連れて行くか」
もうひとり、馬から下りる。
ふたりで、西一族を馬に乗せる。
「とにかく、山へ戻ろう」
「族長に、こいつを差し出せ」
「行くぞ!」
雨が降り続いている。
馬が走り去る。
が
ひとりだけ残る、山一族。
辺りを見回す。
この場に残る感覚に、気付く。
「……何だろう?」
山一族は首を傾げる。
この、感じたことのない、
「魔法の痕跡、は」
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