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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「水樹と嗣子」2

2019年06月18日 | T.B.2003年

「わるいわるい」

ごめんな、と
水樹はその子の手を引く。

が、

ふん、と
手を払いのけられる。

「平気」

「嫌われた!!」

ガーン、となる水樹に
そりゃそうだね、と裕樹は答える。

「あ~なんだよ、
 嗣子(つぐこ)か」

覗き込んで
裕樹は顔をしかめる。

「またお前、いい加減にな」
「誰にも迷惑かけてないし」
「かけてるから」

放って置いて、と
嗣子と呼ばれたその子は
スタスタと村に向かい歩き始める。

「そうやって、
 どこに地点があるか分からないんだからな」
「いいもん」
「はぁ?」
「別に、地点に当たったって」
「本気で言ってるのか?」
「………」
「そうやって、
 すぐ黙るだろ!!」

おお、揉めとるな、と
2人の後ろをスタスタと歩く水樹。

「もう、勝手にしろよ」
「誰も相手にしろなんて
 言ってないから」

あー、もう、と
裕樹は嗣子から距離を取る。

嗣子が先に進み
その後ろを水樹裕樹が
ゆっくり着いて行く形になる。

なあなあ、と
水樹は裕樹に問いかける。

「知り合い?」
「俺の近所」
「俺、あの子
 初めて見るような」

同じ一族の同年代なら
顔ぐらい一度は合わせているはずなのに。

「そういうやつだから」
「うーん」

分かったような。
分からないような。

「変わってるんだ」

裕樹の言葉に
嗣子はどすどすと
歩き始める。

「言われるのが嫌なら
 直せばいいのに」
「………っ」

ぴたり、とその歩みが止まる。

「?」

ぐずっと
小さく鼻を啜る音が聞こえる。

「おい、嘘だろ」

あーーと、水樹は声を上げる。

「泣かせたーーー!!」
「兄さん黙ってて」

しずしず、と裕樹は嗣子に近寄る。

「その、
 言い方が悪かった。ごめん」
「………い」
「え?」

「そんな、仕方無いから謝る
 みたいなの………いらない」

「あーーーーー!!?」

「ストップストップ!!
 裕樹、ステイ!!」

落ち着け、と水樹は2人の間に
割って入る。

「お前達、ここまだ砂漠だから。
 とりあえずは
 村に戻ってから続けて」
「止めないのか兄さん!!」


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