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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「東一族と裏一族」14

2018年09月21日 | T.B.1997年

 満樹は、光院の横に坐る。

 川では、集まった者たちが戯れている。
 その様子を見ながら、光院が云う。

「満樹、また村外に行くんだって?」
「え?」

 光院の言葉に満樹は驚く。

「うん、まあ。その予定だけど」
「しばらく、やめた方がよくないか?」
「何が?」
「村外に行くことを、だよ」

 光院が云う。

「とにかく、今は外の動きがおかしい」
「…………」
「やっぱり、仲間に何かあるのは心配だからさ」
「光院?」

 満樹は首を傾げる。

 光院は、満樹を見る。

 満樹は、
 この状況を、そんなに深刻だと思っていないのか。

 いや

 でも、狙われているのは自分であると

 満樹も判っているはずだ。

 判っていて

 東一族に危害を及ぼさないために、村外へ出ようとしているのか。

 光院は考える。

 昨日、自身の弟が接触した裏一族。
 が
 まだ、東に入り込む機会を窺っているはずだ。

 満樹を連れて行くために。

 それは、無理にでも裏へと連れて行くのか
 それとも
 何かしら、説得をするのか。

「満樹」
「何?」

 光院が云う。

「満樹が村外に行けない理由はもうひとつあって」
「え?」
「今夜も務めが入っている、だろ?」
「お!」

 満樹は驚く。

「2夜連続?」
「そんな云い方?」

 川縁では、火を起こしはじめている。
 その横で、野菜を串に刺す者。

 昼に食べるものを、焼くつもりなのだろう。

「何々、どうした?」
 戒院がやってきて、満樹の横に坐る。
「俺、今夜も務めなんだけど……」
「すごい、連続!」
 戒院が云う。
「何かしでかしたのか?」
「何も心当たりは……」

 その様子に、光院は笑う。

「あいにく、俺は予定があって代わってやれない!」
「判っているよ……」
「悪い!」

 戒院は、大きな声で兄を呼ぶ。

「おい成院! 満樹の務めを代わってやれよ!」
「何を云う!」

 成院は、薪を集めながら云う。

「代わるも何も、俺も務めだ!」
「えっ、成院もか」
「俺と満樹が一緒に務めに出るんだよ」
「意味ないな」

「仕方ないよ」

 はあ、と、満樹はうなだれる。

「満樹の兄さん」

 光院が云う。

「村外へ行く前に、もっと東でゆっくりして行きなよ」

「ゆっくりと云うか」

 満樹は顔を上げる。

「延々と、務めをさせられそうな気がする」



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