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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「東一族と裏一族」12

2018年09月07日 | T.B.1997年


「さっきも云っただろう」

 裏一族が云う。

「ほかの同一族が羨ましかろう、って」

 佳院はそのまま。
 裏一族を見る。

「俺の子たちもそうだ」
「…………?」
「他一族の血が混じれば、少なからず容姿は変わってくる」

「……子、たち?」

「一族から、外れにされる可能性が高くなると云うことだ」

「先ほどから、何を云っている……?」

「だから、家族を帰せと云ったんだ」

 佳院は肩を押さえる手に、力を込める。
 額から、汗が流れる。

「まさか、」

「東一族は純血だからな」
 裏一族が云う。
「そもそも、混血は不要だろう?」

「お前、水辺の一族たちに……?」

 その言葉に、裏一族はふっと笑う。

 各一族で理由も判らず失踪する者たち。
 もし
 そのすべてが、何かつながっているとしたら。
 ある程度、その一族の情報を持たせた上で、裏へと連れ込むのなら。

「そうか。満樹はお前の、……」
「うんうん。判ってくれたならそれでいい」

 裏一族は空を見る。

「日が昇るか」

 薄明かり。

「そろそろ、助けが来るんだろ」

 裏一族は手を上げる。

「じゃあな」

 その言葉と同時に、

 姿が消える。

 ただの砂漠。

 佳院しかいない。

 佳院は立ったまま。
 肩を押さえたまま。

 動かない。

 ただ、耐える。

 …………。

「…………」

「…………」

「……おーい」

 佳院ははっとする。

 どれぐらい時間が経ったのか。

「大丈夫か?」

 佳院は肩で息をする。
 目を開く。

 戒院が、顔を覗き込む。

 目が合う。

「意識はあるな」

 戒院は、陣を張る。
 その陣が光る。

「よく耐えたな」

 佳院の肩に刺さる矢には、

「毒だろう?」

 下手に動けば、身体に毒が回る。
 ただじっとすることで、その被害を最小にとどめる。

「今、毒を抜くからな」
 戒院は矢を見る。
「狩猟の毒だな。砂一族性ではなさそう、か」
「西一族性だ」

 佳院が云う。

「西一族が狩りで使う基本的な矢毒」

「なら、話は早い」

 身体を硬直させ、獲物の動きを止める毒。
 放っておけば、身体の機能がすべて止まり、死に至る。

「こればっかりはなー」

 処置をしながら、戒院が云う。

「鍛錬しても、慣れる、のは難しいからな」

 佳院は痛みに顔をゆがめる。

「しっかりしろ」
 戒院が云う。
「毒は抜いたから」

 佳院は、地面に坐り込む。
 感覚を戻そうと、目を閉じる。

「これ、持って行くだろ?」

 戒院は、刺さっていた矢を持つ。



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