TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「律葉と秋葉と潤と響」2

2018年09月18日 | T.B.2024年

「この班で動くのは初めてだから
 まずは近場で狩りをしようと思う」

班長の潤(じゅん)が
先頭に立って歩き出す。

「いいね。
 よし、確実に攻めていこう!!」

うんうん、と
答えているのは響(ひびき)。

この二人は、
同い年で、律葉の二つ年上。

二人とも村の中では
有名なので
律葉もよく知っている。

医師先生の息子と
村長の息子。

「ちょっと、響。
 歩くの早い!!
 みんなに合わせて」

もーう、と声を上げているのが秋葉(あきは)。

この四人の班で一番年下。
十三歳と、律葉の頭一つ分背が小さい。

選ばれたのだから
狩りに行く腕はあるのだろうが、
大丈夫だろうか、と思ってしまう。

「………」

潤に響に秋葉。
このメンバーできちんと狩りが出来るのか
律葉はじわじわと不安になる。

「ゆっくり歩くよ。
 秋葉早く背が伸びると良いね」
「むーーー!!」
「響、秋葉をからかうと
 後で知らないぞ」
「待って!!
 潤&秋葉VS俺!?」

「………」

あれ?と
律葉は首を捻る。

なんだか、
三人共、班になったばかりにしては
打ち解けて話している。

「そうか、確か」

彼らは親戚同士だった。
すこし、やりにくいな、と
律葉は三人の後を着いていく。

「律葉!!」
「わ。な、なに?」

急に響が顔を覗き込む。

「律葉はどっちの味方。
 俺だよね?」
「違います。
 律葉はこっちですーー!!」

秋葉が律葉の腕を引く。

「そもそも、
 響が秋葉をからかったのだから、
 味方も何も無いだろう」

潤が呆れて響の耳をひっぱる。

「俺、からかってないよ~。
 そう言う意図はないです」
「反省してる?」
「してるしてる!!」

うーん、と
律葉は苦笑いしながら忠告する。

「ねぇ、一応狩り場に入ったのだから。
 静かにしないと
 獲物が逃げていくわよ」

「ほらーー!!」
「そうだぞ、響」
「悪いの俺なの?」

自分の横を歩く秋葉に
律葉は問いかける。

「ねぇ、私の事知っていたの?」

そう言えば、
先程同じ班で嬉しいと言っていた。

「うん」

ニコニコと秋葉は答える。

潤や響の様に
親が有名な訳でも無い。
目立つ存在じゃ無いと律葉は自覚している。

「そう?」

なんだろうな、と
思う律葉に
えっとね、と恥ずかしそうに秋葉は答える。

「あのね、
 律葉、雰囲気が、
 おとうさんに似ていて」
「うん?」
「前から気になってたの」

秋葉の父親は確か。

いや、それよりも。

「……父親に似ている」

それってどうなのか。
男らしいって事なのか。

「う、うーーん?」
「ん?」
「なんでもない。
 秋葉、お父さんの事好き?」
「うん、大好き!!」
「ならよし」

少なくとも
好意は抱かれているという事だろう。


NEXT
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする