「ただいま」
帰宅したタイラをアヤコは出迎える。
「おかえり~」
「はい、今日の取り分」
「お疲れ様」
疲れた、と言いながら
タイラは席に着かず、
狩りで使用した道具を持って裏手に回る。
洗って、磨いて、
道具は手入れをしてから仕舞う。
一通りの作業を行う背中に
ふふっと
思わず漏れた笑い声が届く。
「どうした、アヤコ?」
振り返ると窓からアヤコが
こちらを覗いている。
「姉ちゃん、でしょ」
「どっちでも一緒だろ」
「一緒じゃないわよ、ちょっと違う」
それで、と続ける。
「何か良いことあった?」
「……なんで?」
「鼻歌」
「え?マジ!?」
どうやら無意識に歌っていたらしい。
「今日、ニコと同じ班だった」
タイラは若者の間で人気の
彼女の名を挙げる。
狩りの班分けはその時の指示役が決めるので
運任せな所がある。
「そうなの?
良かったね~」
「なんか、良い香りした」
今日は良いことありそう、と
タイラが言うが、もう昼を回っている。
彼女はとても素敵だが、
タイラは別に恋人になりたいとは思わない。
今日は同じ班になれて良かった。それだけ。
自分に相手がつとまる訳では無い。
相応しい人がいる。
自分たちは、
特別狩りが上手い訳では無く、
かといって、狩りに行けないほど体が弱い訳でも無い。
中途半端。
位置付けると中の下。
頑張って、真ん中に居れられるかどうか。
「俺達みたいな平凡な奴は
何事も無く一生を終えるんだろうな」
「あら、みんなそうよ。
飛び抜けた人達が目立っているだけ」
沢山いる。村人その一。
「タイラって名前からして、なぁ」
平凡の平だし。と
皮肉って笑うタイラにアヤコが返す。
「何言ってるの、
特別な事なんて
なにもないのがいいの。
普通が一番じゃない」
なる程ねぇ、とタイラが答える。
「今日はやけに
姉っぽいことを言うな」
「そりゃそうよ、姉だもの」
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