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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

カナタ

2015年10月27日 | イラスト


カナタ・イ・フタミ

山一族
T.B.1947年生まれ
158cm・AB型


「山一族と規子」の作中では15歳。
身長はまだまだ伸びるかも。

族長の三番目の孫であり
お孫様という通称で呼ばれているが
カナタ自身はその呼び方は好きじゃない。

「カナタとハヤト」

2015年10月27日 | T.B.1962年

「先生」

村のはずれにあるハヤトの家に
カナタが1人尋ねてくる。

「先生言うの止めろ」

うんざり、と言った表情でハヤトが答える。

「僕の狩りの先生じゃないか」
「いいから止めろ」
「じゃあ、ハヤトさん」
「ハヤトでいいよ。
 フタミ様に敬語を使われるのは妙な気分だ」
「でもなーハヤトの方が年上だし」

カナタは、山一族の中で
一族を束ねるイ・フタミの者だ。

「僕は、そんなに権力がある訳じゃないし」

だが、身分違いのハラ家の者を
嫁に貰ったことで
フタミの名を持ちながら
以前とは段違いの生活を送っている。

その出来事に自分も多少は関わっているので
ハヤトはついつい面倒を見てしまう。

手間のかかる弟が出来た気分だ。

「ところで
 ハヤト、何しているんだ?」

庭で石を削るハヤトを
カナタはのぞき込む。

「うん」

ハヤトは手元の石をカナタに見せる。

「俺の妹は西に嫁いでいるだろう?」
「―――あぁ、そうだったな」
「手紙が届いたんだ。
 色々な事が書いてあったよ。
 今の暮らしぶりとか」

それで、とハヤトが言う。

「首飾りを貰ったと書いてあった。
 嫁いだ家からの贈り物だそうだ」
「ふぅん、
 西はそう言うしきたりがあるのかな」
「だろうな」
「で?」

カナタは笑う。

「ハヤトはもしかして
 その贈りものを作っているのか?」

「笑うなよ。
 ただ、そういう風習だったのなら
 何か欲しいのじゃないかと思っただけだ」

「あぁ、なるほどそういう事か」
「何がだ?」
「いいんじゃないか、
 キコも喜ぶよ、きっと」

どれどれ、と
カナタは正面に腰掛ける。

「僕も手伝おうか
 手先は器用だと思うよ」
「止めとけ止めとけ、
 ただでさえ元嫁が居る家に出入りするなんて
 アサノは気が気じゃないだろう」

あぁ、とカナタは唸る。

「そうなるな」

複雑な理由があるとは言え、
ハヤトとカナタは
今の夫と前の夫という状態だ。

カナタは余っている石を手に取る。

「全部同じ色だ」

緑色の鉱石。

「この石だけは、山一族でしか採れないだろう。
 まぁ、谷一族の鉱石は
 高価すぎて手を出せないってのもあるんだが」

だからせめて、
キレイな細工ぐらいは。

「ハヤトはきちんとキコの事
 考えているな」
「からかうな」
「からなっていない。
 良かったと思っているんだ。
 キコがハヤトの所に嫁いで」

ハヤトはカナタを見る。

「やっかい払いができたて意味じゃないよ」
「分かっている。
 だからお前もきちんと
 アサノの事を考えてやれ」

俺だって、とハヤトが言う。

「前の夫が、頻繁に訪ねて来るのは
 いい気分じゃないからな」
「僕はハヤトを訪ねているんだけどな」
「それでも、だ」

はいはい、とカナタは立ち上がる。

「じゃあ今日は帰ろう。
 僕もアサノに何か手作りの品でも贈ろうかな」

それじゃあ、と
カナタはハヤトの家を後にする。

村の中心地へと続く坂道を下りながら
途中の畑を手入れしている規子とすれ違う。

「なるほど、
 あれじゃあ、帰りづらいね」

そうでしょう、と規子は笑う。

「気持ちだけで嬉しいんだけど
 気付かないふりも大変ね。
 もう少しここで時間を潰すわ」

自分の所では見なかった表情だ。
出来れば同じ顔を
アサノにもさせてあげたい。

そう思いながらカナタは家路につく。