「……あれ?」
マジダは閉じられた扉を見る。
いつもは開け放たれているタロウの作業小屋だが、
今日はぴっちりと扉に鍵までかけてある。
「ターローウー!!
こんにちはー!!」
「……」
返事がない。
「大変!!」
取っ手に手をかけたところで、向こう側から声がする。
「マジダ?」
「タロウ!!生きてたのね!!」
「……殺さないでくれマジダ」
扉の向こうでタロウは脱力する。
「ああ、でも、ちょっと具合がね」
「そうなの?風邪?」
「うーん、なんだろうな
明日もこの調子だったら病院に行くよ」
声に覇気がない。
「今日はごめんね。
また別の日においで」
「でも、病気なら看病しなきゃ」
「ダメだ、帰りなさい!!!」
タロウは思わず大きな声になる。
「……ごめん……なさい」
あ、しまった
言い方が悪かった、と
タロウは声を抑える。
「マジダに感染しちゃいけない。
子どもだと大人より酷くなったりするから」
「……うん」
マジダの気配が遠ざかる。
しばらくして、扉を開けて、
彼女が帰ったことを確認してタロウはベッドに戻る。
具合は優れない上に
悪い事したな、という罪悪感も併せて視界が回る。
まず
心配してくれてありがとうと言うべきだった。
早く治さなくては。
……ン。
……ポーン。
「?」
タロウは目を開ける。
しばらく寝ていた様だ。
横になって居た分、先程より少し楽になったが
まだまだ全快には遠い。
タロウは再びまぶたを閉じ
「ピンポーン」
「???」
タロウは思わず起き上がる。
ちなみに彼の家にインターホンは付いていない。
「ピンポポーン」
あぁ、これは
人の声でピンポンと言っている。
出たら面倒くさいやつだ!!!
タロウは布団に潜り込み目をつぶる。
が。
ばこーん!!
何かがはずれた。というか
蹴り飛ばした音がした。扉かな。
タロウは病とは違う頭痛を感じる。
「看病!!」
「来たぜーーーー!!」
マジダ&マジダ父――――――!!!!!
「子どもはダメだと言うから
大人を連れてきたわ」
「ええっと」
「大丈夫だぞ、マジダはきちんと家に帰すし、
俺が付きっきりで看病してやるからな!!」
「……ウチの扉……」
もう、いっそ、
医者を連れてきて欲しかった。
「タロウ、他には??
私は本当に何もしなくて大丈夫?」
凄く遠く離れた所からマジダが言う。
タロウの言いつけを守っているらしい。
「あぁ、それなら
水をくんで来てテーブルに置いててくれるかな
喉が渇いたから」
分かった、と頷くマジダに
今度こそタロウは言う。
「マジダ、今日はありがとう」
「えへへ、どういたしまして」
マジダ1人じゃ背が届かないのか
よいしょーっと抱え上げているマジダ父がちらりと見えた。
家族って良いな。
「じゃあ、栄養がつくように
色々と入れるかー」
マジダ父は何やら色々持っている。
入れるって何に?
頼んだのは水だったんだけど?
家族―――親子なのである。
マジダ父は、マジダを育てた父なのである。
信じられない食材がちらほら
視界の端に映りつつ、
いよいよ目が回り始めたのを感じて、
タロウは
明日こときちんと病院行こう、そう心に誓った。
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