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メカデザイナー山本薫のBlogです~2006・11・30 お仕事募集中 sp2q6z79@polka.ocn.ne.jp

今年見た映画

2010-12-30 19:32:13 | 日記・エッセイ・コラム
  今年もあと一日半を残すのみとなりました。ちまたではコミックマーケットの最中だそうですが
毎年私は参加していません。そこで、今年見た映画について感想など綴ってみようかと思います。
もともと、ここ10数年は映画館にほとんど行かず、ビデオやDVD観賞に頼っていましたし
TV放送の映画もよく録画しました。
 宇宙戦艦ヤマトの映画(SPACE BATTLESHIP ヤマト)は私にとっても特別のイベントで、
久しぶりに劇場へ足を運びました。劇場で観賞するのはやっぱり良いものです。
 そしてここ5・6年はレンタルビデオ店がDVDへソフトを入れ替えたり閉店するのにともなって
レンタル落ちと呼ばれるビデオソフトが多く市場に出回るようになりました。画質云々を問題
にする向きもありますが、映像を所有している事と無い事とでは雲泥の差があります。
安価で大量に発売されるこれらのソフトの中には貴重な作品も散見され、それを見つける
のも一つの楽しみであり、私は精力的に探して自分のアーカイブスを作りました。
 また、過去の埋もれた秀作をDVDとして再発掘する動きも盛んで、これも勉強になる教材
として購入したりしています。
 こうした映画鑑賞を有効な学習とするには、それぞれの映画の関連や背景を知りポイントを
押さえる必要があります。そして自分が何に感じたか悟ることも大切です。
 そのようにして今年は50近い映画を鑑賞しましたが、心に残る作品をいくつかピックアップ
してみましょう。
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   ● アルファビル (1965年 フランス)
 フランスでは1960年代にヌーベルバーグというムーブメントがあり、その旗手でもある
ジャン・リュック・ゴダール監督の手になる唯一のSF作品がこの映画です。
 SF映画でありながら特殊撮影は一切無く、全篇パリ内でのロケーション撮影で俳優の演技
演出や効果音を上手に使って後世に多くの影響を与える作品が製作されました。
 日本特撮「ウルトラセブン」の某エピソードにその影響が見られますが、ハリウッドSF映画
においてもその影響は大きく「ブレードランナー」等は非常に描き方が似ていると思います。
 SF映画と言えば科学考証や舞台装置やガジェットの派手さと思われがちですが、この作品
の示している所は、SFと言えども人間のドラマでありSFらしさは雰囲気の演出が大きな
ファクターを占めているという点ではないか、と考えられます。
 それは次に紹介する作品にも言えることなんですが、現代の派手なSF映画でも見習うべき
点ではないかと思えます。

   ● ラ・ジュテ (1962年 フランス)
 一種の実験映画でありますが、28分と言う短さの中でしっかりとした物語が展開されています。
上記のアルファビルに影響を与えていると見られますが、確証はありません。
 全篇がモノクロスチール写真とナレーションによる紙芝居形式で、一部動画が挿入されています。
それがドキュメンタリー風の演出となり独特の緊張感を演出しています。
 タイムトラベルによって現在の状況を打破しようとする政府の実験によって、主人公は過去に
未来に赴きます。その過程において語られる彼の記憶は、感傷的に我々の心に訴えかける部分
があり、その個人的事情に踏み込んでくる政府の科学者の冷淡さは、第二次大戦中の精神的
拷問を伴う尋問風景の再現とも取れます。
 タイムトラベルはケミカルな方法が描写されており、はたして精神的な旅が物質的な時間軸と
フュージョンするのかと言った疑問は残ります。しかし、こうした未知の技術については、現在の
我々にも自由な発想の展開が許されているわけで、そうした可能性について大いに検討すべき
ではないかと考えさせられました。

   ● MOON 月に囚われた男 (2009年 イギリス)
 つい前年公開されたSF映画で、私は英語版DVDを手に入れて観賞しました。
残念なことに日本語字幕が無いので半分ほどしか理解できませんでしたが、見た感じで大体の
ストーリーは把握できます。舞台は月面の小さな採掘基地であり、セットもその内部が多用されて
他は月面作業などの地味な画面の映画となっています。
 このセットデザインが最近の派手なデザインの未来ではなく70年代SF(もっと直接的に言うと
1968年製作の2001年宇宙の旅)を意識した抑えたデザインになっている所が良いのですが、
その内部で展開されるサスペンスが、究極的には自分ひとりしか頼ることが出来ない現代人の
苦悶をよく表現していて共感するところがありました。

  ● π (1998年 アメリカ)
 公開後まもなくレンタルで見たソフトを入手して今年再び観ました。
 π(パイ)とは、言うまでも無く円周率のことですが、この映画に出てくる数値とは関係ありません。
暗に難解な数字列が世界を形作っている法則と深く関わっていることを指しているように思えます。
 主人公は上記のMOONの主人公のごとく孤独で、自室で電子計算機を相手に株価の予想をする
プログラムを開発しています。そのさなか偶然見つけてしまったある数学の命題を解くことに人生
を捧げる事になります。
 舞台は都会のただ中で、月面と違って周囲の様々な人間と関わりがあり、彼の人生に干渉してきます。
しかし、数学の天才である彼は命題の解決に取り付かれ、それが彼を孤独にしているのです。
 孤独のうちに彼は、世界を支配している神の法則を自分が理解できることを悟りますが、それを自ら
放棄します。それまでの過程で、彼はほとんどのものを失い人間の身勝手さも見てしまったのです。
私は彼の無常がなんとなく分かる気がしました。

  ●バーチャルジャッカー (1990年 イギリス・ハンガリー)
 日本ではほとんど無名のハンガリー映画でありSF映画です。ネット上で検索をかけると某所の
アーカイブスの解説に行き当たり、
>近未来, ある東欧の都市に繰り広げられる無軌道な人々の事件.
>ハンガリー映画は, 1960~70年代国際映画祭で注目を浴びたが, 1989年の民主化以降映画へ
>国家的助成の削減などで転機に立ち, 外国との合作などで新しい道を模索中という
 と言う一文以外は個人的な感想ページがヒットするのみでした。そして、それらの感想でもB~C級の
評価しか得られていません。
 主人公は近未来のスラムで気象観測の仕事をする無口で孤独な青年で、ギャングまがいの友人が
いるのみです。バスタブの水に漬かって宇宙の夢を見る彼はコンピューターに関しては天才的で、
彼の仲間と共にコンピューターでギャンブルの勝ちを予測し儲ける計画を実行します。
 彼の気象予報のアルゴリズムがギャンブルの予想に一役買っているらしいのですが、説明不足でうまく
伝わっておらず、そこが残念な点です。
 果たして彼に、金に対する欲望があったのかは分かりません。金を儲けてスラムから抜け出すこと
を切望していた友人がこの計画を成功させたともいえます。
 内向的で天才的な主人公と肉体派で享楽的な彼の友人との奇妙な友情関係は、しかし突然終わり
を告げ、物語は感傷的なエンディングへ向かいます。
 こうしたプロットを正しく理解できれば必ずしも悪い映画ではなく、むしろ描き方の稚拙と予算や撮影
機材の少なさが惜しまれる所です。
 最近NHKでシリーズが放送されている「カイルXY」というアメリカのTVシリーズSFが、根幹ではこれと
通じるところがあり、20年前の無名のハンガリー映画人が狙った所は正しかったと思えます。
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 これらの他にも様々な映画を観ました。当たり外れもありますが、私はあまり派手な映画は好きではなく
低予算でも製作に工夫をこらした作品を好んでみる傾向があります。
 今回はSF映画を紹介しましたが、ジャンルにはこだわらず良いものを見たいと常々考えています。
以前、ここでプロットを紹介した邦画の忍者映画のオリジナルを購入したので、そのうち見る予定です。


コメント
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