Ⅳ号戦車の砲塔改造について、分りにくい部分を補足します。
●砲塔の変遷
Ⅳ号戦車の初期の砲塔は、一番上のようなものでした。
前面装甲板は厚さ30mmしかなく、大砲の砲身も短いものです。
この状態でバランスが取れるように設計されていましたので、その後
様々な工夫が見られます。
真中のものが後期の状態。主砲を長い砲身に前面装甲板を50mmに増強
した関係で、砲塔の後ろにバランスウェイトを兼ねた雑具箱が設置されました。
この頃、Ⅳ号戦車の前面装甲板を80mmにする命令が出され、車体の方は
直ちに増加装甲板が溶接され後に80mm一枚板になりましたが、砲塔は
50mmのままだったのです。これは、砲塔のバランスが限界に来ていた事
を指し示すデータといえましょう。
そこで、下のように緑の部分を切断し赤の装甲板を溶接します。
天井の一部が切り取られているのは、スロープ付の物と取り替えて、追加バスル
に車長が座れるだけの高さを確保する為です。そして、装填手用のハッチを付け
側面の弱点であるハッチを装甲板で閉鎖します。砲手は車長用ハッチか後部の
脱出用ドアから出入りします。
この改造は、おそらくすでに稼動している車体からの改造も可能です。
●宮崎案
例のモデルグラフィックスに掲載された宮崎駿氏の案は上のような物でした。
彼は赤い矢印のように前面を絞り、キューポラを重いものと取り替える事によって
前面の装甲厚を厚くする重量を捻出しようと考えたのです。
これは、パンターのF型砲塔が砲塔をくさび形に成型して前面装甲を厚くした例
に見習ったように見えます。そして、ドイツ戦車の垂直面に魅入られた彼らしく、
その側面装甲はほぼ垂直なのです。
コンテストの出品者の中で面白かったのは、下の例です。
重い正面装甲の一部を位置を後ろに退ける事によって前を軽くしようと言う物でしょう。
この例にしても宮崎氏の例にしても、Ⅳ号戦車の砲塔前半分に余分な空間がある事
は知られていた事らしく、ここを如何に削減するかが一つの焦点でした。
●Ⅳ号K型 車体前部
車体前部はこうする事が望ましいのですが、操縦士の光学機器について資料が不足
していますので、今はこれで暫定的に決定稿とします。
操縦席前の装甲板は45度に傾斜した80mm装甲板とし、ガンポートとペリスコープ
とハッチはパンターの物を流用します。内部スペースの容量は充分に余裕がありますが、
操縦者のポジションが動かせないので、今一つ定まりが付きません。
操縦者はギアボックスやクラッチに直接設置されたレバーを操作するので、頭部の位置
もおのずから固定されています。この辺は今後の研究課題でしょう。
操縦者の背後には弾薬箱があり主砲弾が20数発置かれています。砲塔にバスルを付ける
ことによって、そちらに10発程度の主砲弾を置く事が出来ますから、車体側の弾薬箱は縮小
して燃料タンクに当てるなどすれば、航続距離を補えるはずです。
最前部の補助装甲板の後はヒンジつきの金網枠でカバーします。爆発物を投げ込まれる
防御対策と同時に火炎瓶のビンが割れるのを防ぎます。また、水などが溜まらないように
このスペースの下には水抜き穴がいくつか必要になるでしょう。
さて、こうして改造された砲塔の主砲をより大きいL70に換装するのが最終的な目標ですが、
これはまた次の機会にしましょう。宮崎氏によると実際にⅣ号戦車にL70を乗せた実験があった
そうですが、その実態が今一つわかりません。
ノーマルの砲塔にそのまま搭載したのであれば失敗は目に見えていますが、なんらかの改造
を施したのであればそれを知る必要があります。
取りあえず、暫定案は出来ていますので、作画ができたら公開します。