新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

ケネディ政権の脆弱性

2020年05月10日 | 日記

なんじゃもんじゃの木の白い花が満開です。5月10日撮影。

 ケネディの実妹を妻にした俳優ピーター・ローフォードの伝記から、ケネディ政権の危うさを見てとることができる。
 ケネディはキューバの指導者カストロを倒そうとした。フィデル・カストロは共産主義を標榜する独裁者であり、マイアミ・ビーチからわずか150キロしか離れていないところでソ連の勢力が誕生しているのは米国にとって何よりの脅威だった。キューバのナショナリストを支援し、カストロ政権を倒そうと、CIAをピッグズ湾に侵入させる作戦を開始した。だがそれが失敗に帰し、この失策の原因は自分にあるとケネディは国民に認めた。ケネディはもう一度その企てを別の手段で実行しようと、今度はマフィアのボス、ジアンカーナに話を持ちかけた。モングース作戦がそれだった。共産主義の脅威をとり除くことがケネディ政権の最優先事項だった。
 CIAは毒薬とたばこ爆弾でフィデル・カストロと弟ラウル・カストロ、それにチェ・ゲバラを殺害しようとしたが1961年4月までにことごとく失敗し、6月にはマフィアチームがフィデル・カストロを急襲し、暗殺しようとしたが、これも失敗した。ケネディがどれほどこのモングース作戦に関わっていたかは詳らかでないが、この本の著者は、ケネディが作戦のかなり細かい点まで承知していたとみている。ケネディと情交があった女優ジュディ・キャンベルがケネディ、ジアンカーナの会合を10回セットしたこと、マニラ封筒に入った書類をケネディ、ジアンカーナとマフィアのもう1人のボス、ジョニー・ロゼリ間を往復させていた。キャンベルは1983年に雑誌のインタビューでそのように述べた。
 ケネディは自分の浮気がばれるのを防ぐのもマフィアを頼っていた。マフィア側にとっては、さまざまな面でケネディ政権に協力しているのだから、FBIが自分たちの非合法行為に目をつぶってくれるものと思い込んでいた。ところがFBI長官エドガー・フーバーはマフィア攻撃の手を緩めなかった。司法長官ロバート・ケネディも米国社会からのマフィア追放を自分の使命と考えていた。1962年2月、FBI長官フーバーはロバート・ケネディにメモを渡し、ジュディ・キャンベルがジアンカーナとホワイトハウスの秘書あてにしばしば電話していることを知らせた。ロバートは兄ジャックにFBIが3人の関係を把握していることを知らせたが、3人の関係はやまなかった。ジャック・ケネディは40年間FBIのトップの座にいる頑固なフーバーを毛嫌いしていた。マフィア側はFBIの執拗な攻撃を避けるために、ケネディ大統領当選の際の不正な票の上積みなどの恩を思い出させながらケネディ政権に自分たちへの攻撃をやめるように働きかけていた。マフィアにつながりが深い歌手フランク・シナトラを通じてピーター・ローフォードの仲介を請い、司法長官ボビーを説得しようともした。若いボビーはピーターに耳を貸さなかった。マフィアは、ハリウッドのやつらに自分たちの怒りを見せてやると息巻き、フランク・シナトラにもケネディにもその矛先を向けていた。ボビーは、最上の方策は政権とマフィアを遠ざけること、政権とシナトラをも遠ざけることだと考えた。