たけじいの気まぐれブログ

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若竹千佐子著「おらおらでひとりでいぐも」

2021年06月27日 11時41分47秒 | 読書記

図書館から借りていた、第158回芥川賞、第54回文藝賞、受賞作品 若竹千佐子著「おらおらでひとりでいぐも」(河出書房新社)を 読み終えた。読書初心者の爺さん、相互フォロワー登録している数多の方々の読書感想記事等を拝見させていただきながら、以前から「読んでみたい本リスト」に入れていた書、今回、ようやく 借りることが出来た。これまで、短編時代小説等を中心に、手を伸ばしてきたが、少しづつ、他のジャンルの書も読んでみようかな等と思っているところだ。主婦から小説家へ、63歳にして小説家デビューした若竹千佐子氏の処女作「おらおらでひとりでいぐも」は 女として第二の人生を歩もうとする女性の多くに感動を齎したようだが、男性が読んでも 「んだ!、んだ!」、随所で頷いてしまう。「歳をとるのは悪いことばかりではない」と思いたくなる書だ。

あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼかおがしくなってきたんでねべが、どうすっぺぇ、この先ひとりで、何如(なんじょ)にすべがぁ、何如にもかじょにもしかたながっぺぇ、てしたごどねでば、なにそれぐれ、だいじょうぶだ、おめには、おらがついでっから。おめとおらは最後まで一緒だから、あいやぁ、そういうおめは誰なのよ、決まってっぺだら。おらだば、おめだ。おめだばおらだ。

冒頭から翻訳が欲しい?程の濃厚な東北弁で始まる玄冬小説。ほとんどが、主人公桃子さんの独り言、心の内側から大勢の桃子さんが出てきて、会話するという形で進む小説だが、岩手県遠野市出身の作者ならではの濃厚な東北弁で貫かれている。

主人公の桃子さんは 74歳の独居老人。40年間住み馴れた都市近郊の新興住宅で、一人、お茶を啜りながら、過去を思い出し、これからに思いを馳せ、時々は 幻想の世界に入り込む。捨てた故郷のこと、疎遠になった息子、娘のこと、突然死した夫への愛のこと。桃子さんの心の内側からは いろいろな桃子さんが出てきて会話をし、落ち着くのは 震えるような悲しみの果ての「圧倒的自由」と「賑やかな孤独」、「おらおらでひとりでいぐも」だった。
「賑やかな孤独」という言葉に ビビッときた。
独居老人ばかりではなく、本物の賑やかな暮らしをしている人であっても、人は誰も「孤独」を感じることが有るものだが、自分の内側から いろいろな自分が出てきて、「そうするか?」「いや、そりゃ、ダメだ」「こうすりゃ どうだ?」「馬鹿なことするな」「いいね!、いいね!」「早く せい!」・・・、多分 意識すること無く 普段 自分の心の中でそんな会話をしているような気がする。「独り言」になってしまったら、ちょっと「危ない?」気がしないでもないが、それは、「賑やかな孤独」と言ってもいいのかも知れない。


参照 河出書房新社「おらおらでひとりでいぐも」 ➡ こちら


 


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