ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本S・ウェルター級TM クレイジー・キムvs前田宏行

2005年04月19日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
前田はここまで、日本タイトルを3階級に渡って獲得してきた。
これに勝てば、前人未到の「日本タイトル4階級制覇」を達成
することになる。注目の試合だ。

前田は僕がボクシングを見始めた時からずっと、日本のトップで
活躍してきた選手だ。そんな前田がついにここまで来たか・・・
という感慨がまずあった。また、多くの人が、これが前田の長い
ボクシング人生のゴールになるんじゃないかと何となく感じていた
ように思う。

彼が歩いてきたライト~スーパー・ウェルター辺りの階級では、
世界レベルの選手層が物凄く厚いため、「目標は世界」と
言うことすら憚られるような雰囲気がある。世界に行くのは難しい、
じゃあどうするか・・・。前田は、自分を燃えさせるための
目標を、いつしか国内タイトルの複数階級制覇に求めていたのだ。

果たして試合は・・・残酷なまでの結果となってしまった。
わずか2ラウンドでのKO負け。これまで打たれ強さには
定評のあった前田が、まさかこんな形で負けるなんて・・・。

ライト級で最初の王座を獲った前田に対し、ずっとこの辺りの階級で
戦ってきたキム。技術以前に、その「肉体の差」が、明確に表れて
しまったようだ。試合後の前田も、「こんな強いパンチを受けたのは
初めて」と驚いていた。

ここまで前田を中心にして書いてきたが、僕はキムのことも決して
嫌いではない。これ以上ないほど露骨に「在日」であることを前面に
押し出したリングネームと、それに負けず劣らずの強烈な個性。
日本のジムの選手にしては珍しいくらい相手を罵り、記者にまで
食ってかかる激烈さは、見えない何かに対する怒りをぶつけて
いるようで、なぜだか切なささえ感じさせる。そして何より、
次々と相手を打ち倒す圧倒的な強さが魅力だ。

そんなキムにとっても世界の頂はあまりにも高く、だからこそ彼は
みっともないくらいに吠え、叫ばずにはいられないのかもしれない。
敗れた前田、そして勝ったキム。二人はこれから、どこへ向かって
いくのだろうか。

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