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自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
哲学・ビジネス・雑記・洒落物など等

五條瑛『心洞』

2006-08-20 10:25:44 | 小説

五條瑛『心洞』(双葉文庫)を読んだ。

革命シリーズ第三巻(全10作予定)。

印象に残った部分

「人という動物は、欲求の塊なのよ。゛欲しい゛と思う気持ちが、どんな動物よりも大きくて強い。例えば、食べたい、寝たい、交尾したいという基本的な欲求は全ての動物にあるけれど、いずれも節度を知っている。そうすることで種のバランス、群れの秩序が保たれてきたのよ。だけど、人間は違うわ。いったん欲しいと思い始めると、それを止めることをしない。一つ手に入れば、また次を。それが手に入れば、さらに次へとね。人はその欲望を゛向上゛という言葉に置き換え、正当化してきた。そうやって節操のない欲望が秩序を壊し、自らを滅ぼしていくという現実から目を背けて・・・。果てしない欲望の先にあるのは、破滅だけよ。全てにおいて完璧である必要はないのに、それに囚われ、後退を怖れている。どこかでその欲求を捨ててしまえば、信じられないくらい楽になれるのに」


恒川光太郎『夜市』

2006-08-03 11:17:02 | 小説

恒川光太郎『夜市』(角川書店)を読んだ。

1.夜市

2.風の古道

の二編構成。

P.174

「これは成長の物語ではない。何も終わりはしないし、変化も、克服もしない。道は交差し、分岐し続ける。一つを選べば他の風景を見ることは叶わない。私は永遠の迷子のごとくひとり歩いている。私だけではない。誰もが際限のない迷路のただなかにいるのだ。」


伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』

2006-08-03 00:20:31 | 小説

伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』を読んだ。

元SEの主人公は警察に追われているところを熊に似た人に助けられて、仙台の近くに位置する島にたどり着く。そこの島は、100数十年も外との交流がないところだった。

しゃべる案山子、うるさい人間を許さずすぐ鉄砲でそいつを撃ち殺す人、不器用だけど気の良いやつなどが住んでいた。

日々プレッシャーに追われて生活している人におすすめしたい。


乙一『暗いところで待ち合わせ』

2006-07-30 19:49:42 | 小説

乙一『暗いところで待ち合わせ』(幻冬舎文庫)を読んだ。

内容はミステリーである。ものすごく面白かった。『死にぞこないの青』を読んでからすぐ読み始めたのだが、面白くてすぐ読み終わった。ちなみに途中で犯人が誰かわかってしまったが。しかし、飽きさせないストーリー展開に著者の並々ならぬ能力を感じました。


白石一文『僕の中の壊れていない部分』

2006-06-30 02:48:45 | 小説

白石一文『僕の中の壊れていない部分』(光文社文庫)

を読んだ。人間にとって興味深い、生と死についてが内容である。

男性と女性は結ばれて、子供を生む。つまり人を生む。人は必ず死ぬ。死ぬのに人を生む?人間は、こうしたことを繰り返してきた。改めて、興味深く思った。人間は死を再生産しているともいえるのだから。

「自殺したいと考えている人」、「なぜ、人を殺してはいけないのか?」なんて疑問を持っている人は、これを読んでからもう一度生と死について再考・自問して欲しい。

著者はこう書いている。

P.243「~さんは自分で死んだわけじゃない。自分を殺してしまっただけだ。他人を殺すように自分を殺したんだ」

~略~「彼は自分に殺されたんだ。人を殺すことがいけないように自分を殺すことも罪だと僕は思う。というより、自分を殺すことは他人を殺すことと同じなんだ。自分を殺すことを認めてしまえば、他人を殺すことを否定できなくなる。戦争なんてその典型だよ」

「でも戦争は人を殺すための行為じゃないの?」

「そうじゃないよ。彦根に行ったときも言ったと思うけど、戦争は自分の死を前提に成り立っている殺人だからね。自分がいつ殺されてもいいと思っていれば、他人を殺すことに対する罪悪感なんて微塵もなくなるさ」

人は誰でも100%死ぬ(by養老孟司氏)存在であるからこそ自殺も他殺もする権利を有していないのである。というか許してはいけないのである。この世に生まれついた時点で生物は例外なく、皆、死に向かっているからである。


西 加奈子『さくら』

2006-05-18 23:52:50 | 小説

西 加奈子『さくら』(小学館)を読んだ。

昨日、帰宅中に鼻血(涙の代わりか・・・)を出しながら読んだ本。感想は本でもやっぱり幸せや悲しみは伝染するということ。著者が一生懸命幸せという形がなく掴み所のないものを「家族」をテーマに書いているのが伝わってきた。家族の温かさを感じたことがある人なら、幸せってなんだっけ、と忘れていた人もこれを読んで、自分が幼いころ味わった言葉にできない「ぽわっと」温かい陽のあたる様な感覚を思い出すことだろう。

印象に残った言葉

P.189

「嘘をつくときは、あんたらも、愛のある嘘をつきなさい。騙してやろうとかそんな嘘やなしに、自分も苦しい愛のある嘘をつきなさいね。」

愛のある嘘は自分も苦しい。


石田衣良『IWGPⅣ 電子の星』

2006-04-03 18:40:37 | 小説

石田衣良『池袋ウエストゲートパークⅣ 電子の星』(文春文庫)

を読んだ。前作『IWGPⅢ 骨音』も面白かったのだが、こちらも面白かった。石田衣良はこのIWGPを含め、アキハバラ@DEEPなど今の時代の一部をうまく表現する内容の小説が多いね。

●コンテンツ

1.東口ラーメンライン

ラーメン屋を起業した元池袋ギャングの

兄弟からの依頼。

2.ワルツ・フォー・ベイビー

上野ギャングの元ボスの父親からの依頼。

3.黒いフードの夜

ある日真島家が営む果物屋にビルマ出身(現ミャンマー)の子供がやってきて話を聴き、放っとけず、マコト自身から行動。

4.電子の星

田舎から出てきた負け犬少年から

連絡取れず、行方不明の友達を探して欲しいと頼まれる。

など4つの物語で構成。

コアの登場人物は主人公の真島マコト、

それと最低限のコミュニケーションで

話が成立する仲間、

池袋ギャングの王様タカシ

やくざの中間管理職サル。


森淳一『ランドリー』

2006-03-28 00:19:00 | 小説

森淳一『ランドリー』(メディアファクトリー)を読んだ。

 登場人物は少ないが、一人一人のキャラクター

がきちんとイメージできるように書かれている。

頭に傷をもち、帽子をかぶっていないと主人公の

テルはひきつけを起こす。ばあちゃんからは穴(マンホール)

に落ちてできた、と聞かされる。テルの仕事は、

ばあちゃんの経営するコインランドリーで客の洗濯物

を盗まれないようにする監視役だ。

そこで一人の常連ではない女性客と出会う。


森博嗣『ナ・バ・テア』

2006-03-21 17:27:27 | 小説

森博嗣『ナ・バ・テア』(中公文庫)を読んだ。

None But Air。空気以外には何もない。

スカイ・クロアに続く第二弾。

今巻の主人公は、前巻の主人公カンナミの上官、草薙水素。噂に聞く、天才パイロットであるティーチャと出会い、一緒に飛行し、標的を墜とす。

戦闘機パイロットの視点で鳥の飛び方をみると参考になるところが結構あるんだろうか。

2種類の戦闘機のどちらが良いかという議論をティーチャと草薙している場面で、ティーチャが乗っている飛行機の方が重い分、上から下へ急降下するスピードが早く、標的を狙いやすい、軽い戦闘機は水平移動のスピードは早いがそれは逃げる側にとって有利なだけで、攻撃する側にとっては前者の機能が高い方が良いということを話している場面がある。

それをティーチャ、草薙が鳥が急降下する動きを見ていっていた。


空の子

2006-03-17 02:13:16 | 小説

2006年3月17日(金)

森博嗣 『スカイ・クロラ』(中公文庫) 

シリーズ第一巻 

現役大学助教授と作家を兼務する著者の本。

自分は、本を買うときには大体アマゾンのページを一目みて、どんな内容かをイメージして購入しているのだが、「これは買い、面白そうだ」と思った作品。裏切られることなく、読み終わり、次の巻を読み進めている。なんとなくだが、良い本に書かれている文は現実的に考えても違和感がないように思う。

主人公は戦闘機パイロット「カンナミ」、上司の草薙水素(ミズト)、土岐野(パイロット)、笹倉(メカニック)などが主な登場人物。自分の心情にあう「動」というより「静」をイメージする小説だった。時代は未来、世界各国で戦争が繰り広げられている。殺されない限り永遠に死ぬことのない(歳をとらない)キルドレ(Children?)と言われる対戦争用に造られた人間。それがカンナミであり、ミズトだった。

カンナミは、一人を好んで生き、周囲との軋轢を避けるために無理に周囲と溶け込んでいる振りをして生きてきた。パイロットは孤独な仕事のようだ。特に戦闘機パイロットは。生と死、子供と大人をどう位置づけることができるか、考えさせられる表現が多い。


石田衣良『池袋ウエストゲートパークⅢ 骨音』

2006-03-04 14:57:13 | 小説

石田衣良『IWGPⅢ骨音』(文藝春秋)読了。

池袋に住み、池袋を愛するがゆえに

まことは池袋で起こる難問事件

を解決するために持てる資源の全てを注ぐ。

親友、睡眠、直感、店番などなど。

NPO、通貨、地域通貨、信用などに対する

経済観点は面白かった。

シリーズⅢから読んでしまった。

池袋ウエストゲートパークⅠ、Ⅱ、Ⅳ、外伝も

読もっと。


伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

2006-02-17 01:45:38 | 小説

伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』(東京創元社)

を読んだ。吉川英治文学新人賞受賞作品。

主な登場人物

■椎名 現在として展開される語り手

■河崎 二枚目の顔で女好き

■ドルジ ブータン人。河崎から日本語を教わる

■琴美 二年前に遡っている時の語り手

河崎とわずかな期間付き合う ドルジと同棲

ペットショップでバイトをする。

■麗子 ペットショップ店長 色白美人

はじめの方は退屈だったが、途中からはすらすら読めた。

犬や猫を無残に殺す男女三人に偶然会ってしまう

琴美とドルジ。そこから悲劇が始まる。

なんか、こういった動物や人間が無残に

殺されるというパターンの作品が多いのは気のせいか?

現実に起こりそうだからか?微妙にリアリティを演出

するためか。小説だから別にかまわないと思うけど。

●印象に残った表現

「政治家が間違っている時、正しいことは全て間違っている」

「背負うはずの罪悪感がうやむやになったことに胸をなでおろす」

「善いことをすればいつか報われる、

悪いことをすればいつか報いがある」

「足掻き→熱さ」

「自信=経験+実績」

「強い意志が漲っていた」

ダックスフントを購入した客が返品しに来たとき、

その客対店員(琴美)の心

「返品するわ、引き取って」「あなたこそ息を引き取りなさい」

「怒りは憎しみに変わり報復に向かう」

「美人の敵は時間」

「若者が一番恐れているのは貧乏や性病や成績の悪化

より、「ダサイ」ことを嫌う。」

などなど。

 


石田衣良『4TEEN』

2006-02-15 15:38:13 | 小説

石田衣良『4TEEN』(新潮文庫)を読んだ。

直木賞受賞作品。

東京月島に住む中学2年生の4人を主人公にした話。

4人の紹介

■北川 4人の中で一番中学生らしいバランスのとれたヤツ

■ダイ 背は高いがそれを超える太っちょキャラ。

一番明るい印象だが父が暴力をふるうという悩みを持っていた。

■ジュン おばさんたちから人気のある眼鏡をかけた秀才

■ナオト お金持ちの子供。ウェルナー症候群という早老の病気を持つ

ふざけた話をよくするが、仲間の悩みは

みんなで真剣に共有し、解決しようとする4人組。

軽い嫉妬を覚えるほど仲のいいやつらだ。