自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
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法学

2005-01-29 12:31:19 | 経営-ミッション-ビジョン-グランドデザ
法学 近代民法の基本原理

ジュリスト No.1126 
山本敬三著(京都大学教授) 『基本法としての民法』
要約

基本法としての民法
 人間の権利を、人間相互の関係、言い換えれば社会においてどのように保護し、その限界をどう画するかを定めた基本法が民法である。その意味で、憲法が国家の基本法だとすれば、民法は社会の基本法と見ることができる。
憲法システムにおける民法の役割として少なくとも3つの任務をあげることができる。
①憲法によって保障された基本権の内容を具体化すること。国家の介入が禁止されていても、何が基本権として保障されるかが特定される必要がある。市民相互間で問題となる状況に即して具体化し、その内容を特定することである。
②基本権を他人による不法行為の侵害から保護するための制度を用意すること。物権的請求権を認めるというのもこの意味で理解することができる。
③国家による自由をよりよく実現できるよう、支援するための制度である。契約制度自体が、この意味での基本権支援制度として位置付けられる。たとえば、自分の生活空間を自分で自由に形成するために、他人の同意を得ることによって可能にすることが契約制度に他ならない。
民法の独自性
 個々の概念を構成していくためには、その前提として全体の枠組みを構成する必要がある。特に、私法において、基本的な概念枠組みを構成する役割を担っているが民法である。民法総則は、民法のその他の部分他、広く法一般について権利を語るための基本構成を提供しているといえる。そのほか、物権や債権については、権利の発生・変更・消滅が規定され、さらに物権については、その内容に即して所有権・用益物権・担保物権などの下位類型が、債権については、その発生原因に即して契約・事務管理・不当利得・不法行為といった下位類型が形成されている。契約については、まず成立・効力・解消という三段階に分けて問題が構成され、さらにその内容に即して下位類型、典型契約類型が形成されている。契約における経済取引の仕組みは、「物、金銭、労働という価値の交換または移転」として捉えられる。
 さらに基本権の保障体制をどのような原理にもとづいて形成するかということに関しては権利能力平等の原則、所有権絶対の原則、私的自治の原則があげられる。



丸山 敬『夢!21世紀の生命科学』

2005-01-29 12:23:56 | 小説以外 

『夢!21世紀の生命科学』 丸山敬 丸山工作 丸善ライブラリー

 遺伝子組み換えというのは生命が進化する過程で、生命が誕生して以来、行われてきたことであり、人為的な遺伝子組み換え食物もある意味では自然現象の延長線上にあるといえる。確かに害虫に対する抵抗性を増すために組み込まれた遺伝子の産物が何らかの影響を人に及ぼす可能性はある。ある特別な素因がアトピーを引き起こす可能性も否定できない。しかし、応用されるのは新しい技術なので、残留農薬の危険性と同じように冷静に判断する必要がある。
 ゲノムプロジェクトは難病の画期的な治療法開発につながると期待されている。しかし、こうした技術価値の賛否を評価するには、当然、基礎的な知識が必要となる。
 ヒトゲノムプロジェクトが1988年に発足し、2003年に完了する(完了した)。
 生物の本質は蛋白質であり、蛋白質は、アミノ酸(という単位が長くつながった構造をしている=ペプチド)配列によって作られている。したがって、アミノ酸の配列が分かれば、蛋白質の機能も分かる。脂質、糖質、骨などの蛋白質以外の物質もみな蛋白質の酵素によって作られている。蛋白質のアミノ酸配列とその蛋白質を作り出すときの量の情報だけで生物をつくりだすことが可能ということ。その基本情報が遺伝情報である。生命活動とは、ゲノム核酸の遺伝情報にもとづいた化学反応ということができる。
 遺伝情報は細胞の中の核酸にしまわれている。核酸は、蛋白質がアミノ酸の縦列と同じようにG(グアニン)A(アデニン)T(チミン)C(シトシン)の4種類の単位がずらずらつながった構造。この塩基配列が核酸の性質を決める。
DNAや遺伝暗号は人や大腸菌でもほとんど同じ。大腸菌には塩基が数千個並んだだけの短い遺伝子もある(=プラスミド)。このプラスミドは細胞分裂とは関係なく複製することが可能。このプラスミドのDNAを切断したり、つなげる酵素がまず、発見された。そのプラスミドに人のDNAを入れても大腸菌で増えることうまく工夫すると大腸菌の中でも人のDNAが機能することが見出された。こうした技術が遺伝子工学である。遺伝子工学のおかげで、インスリンや成長ホルモンが大腸菌で安価で大量に作れるようになり、糖尿病や小人症の治療に役立っている。
個体レベルでも遺伝子組み換えが可能となり、遺伝子組み換え動植物が生まれている。今の段階では遺伝子組み換え食品が残留農薬より危険ということはないが、人がある目的のためにつくりだした遺伝子が自然界で著しく増えた場合に環境にどのような影響を与えるか、ということに関しては慎重に考える必要がある。
ある固体の細胞はすべて同じ遺伝情報を持っているので(生殖細胞や免疫細胞など例外がある)その個体の細胞核を次々にランに核移植していけばその固体とまったく同じ情報を持った個体(クローン)を多数複製できる。これはクローン技術と呼ばれている。
 クローン動物を最初に作成したのはイギリスだが、再クローン(クローンの細胞からクローンを作成する)は日本で作成された。再クローンは細胞の死亡仮説に問題を投げかける。寿命は解明されていないが、染色体の端のテロメアが細胞分裂を繰り返すごとに短くなりやがて染色体が機能しなくなって寿命を迎えるというのが仮説。たとえば皮下組織の細胞を取り出して培養すると50回も分裂すると死滅する。クローン牛や再クローン牛は最初からすでにテロメアが短くなった細胞核からスタートしている。その寿命がどうなるのかというのは問題である。
 卵からひよこにかえる過程を発生といい、卵の細胞が皮膚の細胞、眼の細胞、心臓や腎臓など特別な機能や形を持つようになる家庭を分化という。
 骨髄細胞のようにいろいろな細胞に分化できる細胞を幹細胞という。幹細胞を使って脳や各臓器の細胞を作り上げることで医療に広範に応用できる可能性がある。
 遺伝病とは、親の病気が子供に引き継がれること。ゲノムプロジェクトによって、いろいろな遺伝性疾患を容易に診断することが可能になる。出産前診断で、おなかの中にいる赤ちゃんがその病気になるかを確実に知ることができます。やがて性格や能力するかなり自由に選択する、希望な遺伝子だけを持った子供だけを生むということが少なくとも、医術的には可能になる。しかし、今不都合な遺伝子変異であっても、環境によっては、有益な遺伝子変異になる可能性がある。そのために人が好みのままにある遺伝子変異を抹殺してしまうと、想像できないような不都合を招く危険がある。
 免疫とは、自己と他人を正確に区別して外敵から身を守る体の防御機構。免疫は外から侵入してくるのを敵とみなして疾患を防いでいる。実際に機能しているのは抗体という蛋白質。この蛋白質は病原体などの敵に結合して悪さをしないようにする。また、リンパ球という白血球の一種の細胞の表面にも外敵に結合する蛋白質があって、外敵にリンパ球がくっついて除去する。はしかなど一度かかると通常は二度とかからなくなるのも免疫の典型。
 胎児が母親の免疫系によって攻撃されないのは、抗体を主とする体液性免疫が上昇して細菌などの感染症から退治を守り、臓器移植の際の拒絶反応で主役となる細胞性免疫を低下させて、胎児への拒絶反応を軽減する方向に変化するとされている。
 ワクチンとは、病原体と似たものをあらかじめ人為的に摂取してその病原体に対する免疫を確立しようとする予防法。注射ではなくポリオワクチンという飲むワクチンもある。しかし、経口摂取でなく死滅したウイルスの注射によるワクチン接種のほうが安全という傾向もある。
 ワクチンも体にある反応を引き起こすので副作用がある。体調が悪くなったり、発熱するぐらいだが、10万人に1人ぐらい脳障害などを引き起こす場合もあるが、ワクチン接種をやめてしまうと、伝染病のない社会が崩れてしまう。現状では副作用のためにワクチン接種を控えることは賢明ではない。
 DNAワクチンとは、一種の遺伝子治療で、DNAを病原体の体の一部の蛋白質を作らせるように設計して注射する。注射されたDNAが適当な細胞に取り込まれて、そこで病原体の一部、ワクチン蛋白質を作り始めて、それに免疫系が反応してその病原体に免疫が確立する。しかし、安全性が確認されていないので、実用化されていない。アレルギーや免疫効果を減弱させてしまう可能性がある。
 DNAチップとは一センチぐらいのガラスの板の上に数万個のDNAをきれいに並べたもの。細胞で機能している遺伝子の種類やその機能のレベル(活発に機能しているのか、ほどほどか)を大規模に機械的に行おうとするもの。癌化のメカニズムを詳細に調べ、がん細胞のタイプをすぐに調べることができるようになる。またオーダーメイド医療の検査技術として期待されている。
 抗生物質とは、カビや細菌が邪魔な細菌が増えないように自分たちの生存を有利にしようとした物質で最初に発見されたのがペニシリンである。ペニシリンは人の細胞には作用せず、細菌のみを死滅させる。抵抗力が弱まった患者の感染症には抗生物質で簡単に対処できる。しかし、耐性菌が問題となった。ペニシリナーゼというペニシリンに耐性を持った最近が生まれた。抗生物質が存在すれば、それに耐性を持った細菌も生まれてくる状態である。不老長寿薬として期待されているのが血液を固まりにくくしたり、体の熱を下げるアスピリンである。しかし、副作用として劇的なものに、5歳から15歳の小児に発生するライ症候群である。インフルエンザや水疱瘡に感染しているときにアスピリンが投与されると肝臓障害と脳障害が発生する。また、胃潰瘍などの引き起こしやすくなる。
 神経組織は大きく分けて、神経細胞(ニューロンと)とグリア細胞の2種類の細胞からできている。グリア細胞は神経細胞を補佐していて、電気的な信号の情報処理を行っているのが神経細胞(ニューロン)である。脳というのは神経細胞(ニューロン)が複雑に連結した神経回路の集合体である。神経回路の集合体の機能として本を読解するなどの精神活動が行うことができる。しかし、そのメカニズムは解明されていない。
 ポストゲノム研究として、脳機能が解明されれば、創造力、知能、学習能力を自由にコントロールできるようになる。つまり、努力する必要もなくなることになる。夢となるか人類の破滅か。
 神経は、脳・脊髄という中枢神経とそれ以外の末梢神経に分けられる。中枢神経は障害を受けるとほとんど回復しない。リハビリは神経細胞を回復させるのではなく、別の領域に代償させること。神経細胞の非再生性によって脳における記憶あるいは学習能力を獲得しえたと推測できる。生物の知的能力の大前提といってもいい。

 技術がここまで進歩してしまうと、法律(政治の介入)などでリスクを制御するのは不可能に思えてきた。ハックスレーが描いた『すばらしい新世界』のように支配する側とされる側に遺伝子によって分けられる世界が現実になってしまう恐れもある。
やはり、一番重要なのは研究者の負の部分をイメージする力とそれを行動にするための倫理観だと思う。研究から生まれたメリットを享受する人間は同時にデメリットも享受していることも考えなければならない。
 


新植物をつくりだす

2005-01-29 12:20:13 | 国際・政治・社会・経済
『新植物をつくりだす』 岡田吉美 著 岩波ジュニア新書 

 植物はわたしたち人間を含む多くの生物が生きるために欠かすことのできない食糧や酸素を供給してくれている。分子生物学の発展は新しい植物を作りだし、それは人間の生活にさらに恩恵をもたらす可能性を秘めるとともに、不安や危険も秘めている。
 わたしたちが口にしている農作物の多くは近代科学発展以前にすでに栽培植物として存在していたもので、人類祖先の努力によって栽培に適した良い植物が選抜(育種の第一歩)され、今日まで伝えられたのである。
 近代科学が発達してくると遺伝学、生理学、生態学などを基盤にした科学的な育種技術がうまれ、合理的な植物改良が行われる。育種とは、違う品種間で交配を繰り返すことで、植物の悪い性質を改良し、病気に強く、収穫量の良い、新しい品種の植物に一歩一歩改良すること。いろいろ方法はあるが、広く行われているのは二つの品種を掛け合わせ(交配)て行う交雑育種である。交配とは二つの植物を掛け合わせて受粉を行うこと。100年前まで経験的に行われてきたが、20世紀になるとメンデルの遺伝法則を応用した科学的な育種が行われるようになった。
 形質や、対立形質、表現形とは植物を改良するための基礎となる遺伝学の用語である。
 形質とは、「生物にあらわれた遺伝子によって決定されている性質で花の色や形、茎の長さなどのこと」。遺伝とは、形質が子孫に伝わっていく現象。どのように伝わり、どのように現れるのかを調べるのが遺伝学である。染色体とは細胞の核の中にある「たくさんの遺伝子の集合体」。遺伝子の本体はDNAという核酸の一種。染色体のDNAはヒストンというたんぱく質と結合して安定している。染色体は遺伝子DNAとたんぱく質からできている構造体で、生物の形質を決めるおおもとである。人間の体の細胞には対をなして2本ずつあり、ひとつは父親から、もうひとつは母親から受け継いだものでこれを相同染色体という。染色体は人は46本、はつかねずみは40本、ショウジョウバエは8本というように数や形は生物によって違う。相同染色体の間で、あるひとつの形質が互いに異なっている場合(一方の花は赤、もう一方は白など)を対立形質という。それに関係している遺伝子を対立遺伝子という。植物の形質として現れる形態や生理的な性質の型をこの植物の表原型という。表現型として現れる形質を優性形質、隠れている形質を劣性形質という。優れている、劣っているという意味ではない。
1856年メンデルはエンドウの交配実験の結果をまとめ、発表するも注目されず、1900年フリースら3名が引き継ぎ、論文を発表すると真価が認められ、近代育種の出発点となる。劣性形質が3対1の割合で現れてくる現象をメンデルの分離の法則という。メンデルの遺伝学の法則はソラマメの交配実験によって見つけられた。もうひとつ重要なのが遺伝の粒子説を提唱したこと。流体のようなものが遺伝をつかさどっていると考えられていたが分離の法則が説明できなかったので、メンデルは粒子のようなものが遺伝をつかさどっているのだ(遺伝因子)と考えた。この因子が遺伝子と呼ばれるようになる。
交配による育種の特徴は、交配によって生まれる子孫が一種類ではなく、ランダムにできてしまう。良い品種が生まれるかどうかは運まかせだった。また植物育種の基盤技術になっている交配は同じ種の中でしか成立せず、種の壁が存在した。イネはイネ、トマトはトマトというように同種でしか交配できない。
 フリースはメンデルの法則に従わない形質をを持つものが突然現れることを発見する(突然変異)。その後、ビードルがアカパンカビを使って遺伝子が支配している形質の現れ方(発現)を研究し、栄養要求株が突然変異によって現れることを発見し、さらに放射線を当てると栄養要求株の現れる確立が非常に高くなることが分かった。遺伝子は普通安定物質で、細胞の中で正確にコピーされ子孫に伝えられるが、時折エラーが生じる。放射線はエラーを引き起こす原因となる。エラーは、遺伝子である核酸分子の塩基配列に変化が起こることで、それは遺伝子が指定しているたんぱく質のアミノ酸の並び方も変わることであり、結果、生物の形質も変化する。このような変異した遺伝子を持っている個体を変異体、変異株という。自然界における突然変異の頻度は普通10万分の1から100万分の1程度で、ペチュニアやアサガオのように頻度の高い遺伝子もある。放射線照射によって頻度を高めるという方法は植物の生存に不利に働くものが多く農作物の改良に利用できるものはなかった。現在は自然界の突然変異を探し出し、有望な遺伝子を見つけ育種に利用するのが主流。自然突然変異株は国際間の紛争を招くほど重要な資源となっている。しかし、突然変異の持つ形質も交配によってしか目的の栽培植物に導入できない。主の壁は越えられない。
1950年代に、大腸菌と大腸菌に感染してそれを殺すウィルスの遺伝子の分子レベルの研究を中心にした分子生物という学問が誕生。この研究から種の壁を越えた遺伝子組み換え技術が誕生した。生きている細胞が研究対象だったが、やがて、生きている細胞を壊して、内部物質の有様を探る学問の生化学が生まれる。生化学は細胞の中で起こる化学反応を発見し、酵素という特別の機能をもったたんぱく質が重要な役割を果たしていることをつかんだ。その後、物理学者が「生命現象も物理学の法則に従っているのか、それとも生命特有の法則によって支配されているものなのか」という問題意識から分子生物学の研究に参入してきた。生化学の研究対象は主に動物細胞だったが、独立した生命を持ち、もっとも単純な系である大腸菌やファージを研究したほうが解析しやすく、研究も進むと考えた。分子という視点から見た生命現象には種の壁はなく、遺伝子こそ生命現象の中心にある分子だと考えた。DNAの二重らせん構造の発見によって遺伝子は物質としての姿を現し、遺伝という現象はDNAという分子のふるまいだと理解された。遺伝子に記された情報はDNA分子の塩基の並び方であり、配列とその意味の解読が始まった。セントラルドグマというDNAからRNA、RNAからたんぱく質という情報の流れ、またその過程で機能する反応が解明され、「遺伝コード」が地球上の生物種すべてに共通していることを発見した。遺伝コードとは、mRNAの塩基配列がアミノ酸に翻訳されるときに使われる辞書。たとえば、ウラシルが三つ並んだ「UUU」という配列は「フェニルアラニン」というアミノ酸を指定するコードである。この遺伝コードが地球上の生物すべてに使われていることが分かった。つまり、まったく異なった生物種間(細胞からできている)でもDNAという分子レベルでは種の壁はなく、交配が可能という発想が生まれた。それを実現させた技術が遺伝子組み換えである。1974年カエルの遺伝子DNAを切り出して、大腸菌の中で増やす実験に成功し、75年DNAの塩基配列がどのようになっているかを突きとめる技術も開発され、「ある生物の遺伝子を、人工的に多種の生物の遺伝子の中に加えたり、入れ替えたりする」ことが可能になった。こうして組み換え動物、組み換え植物が誕生し、分子生物学は真核細胞の遺伝子セットであるゲノム研究へと向かった。
 遺伝子の本体がDNAという核酸の分子であると突き止めたのは形質転換という実験を繰り返し行った細菌学者のエイブリーである。
 遺伝の仕組みはDNAの2重らせん構造によって説明できた。DNAは、リン酸と糖が交互につながった長い鎖状の分子。糖には塩基がついている。塩基にはアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の4種類ある。「リン酸、糖、塩基」を一単位としてヌクレオチドという。DNAはヌクレオチドが長くつながってできた分子。ヌクレオチドがたくさんという意味でポリヌクレオチド呼ばれている。DNAの塩基配列はACGTというように表す。遺伝情報はすべてDNAの塩基配列として書き込まれているため順番は非常に重要である。DNAはどんな立体構造をしているか、シャルガフはDNAの塩基組成を分析し、どんな生物からとったDNAでもGとCの含有量は等しく、またAとTの含量も等しいという規則性を見つけ、ワトソンとクリックはDNAの分子構造のモデル二十らせん構造モデルを打ち立てた。それは、互いに逆方向の二本のポリヌクレオチド鎖が二十らせん構造をとり、そのらせんの内側に向けて塩基が飛び出しているというモデルである。このモデルでさらにDNA遺伝子としての生物学的性質も説明することができた。
 DNA塩基配列は大きく分けて二つある。一つは構造遺伝子と呼ばれ、細胞やその集合体である個々の生物が生きていくために必要な、たんぱく質のアミノ酸の配列を塩基の配列として指定(コードする)しているもので、生物の形質はたんぱく質によってきまる。もう一つは構造遺伝子の働きを制御しているもの。DNA分子の塩基配列の指令に従って、たんぱく質が生合成される過程を形質発現という。形質発現の過程はすべての生物細胞で共通の基本的な方式でそれがセントラルドグマ。DNAの塩基配列の構造遺伝子の領域が、RNAポリメラーゼという酵素の働きで、RNAの塩基配列に読み替えられ(転写)そのRNAの塩基配列が「リボソーム」と呼ばれる細胞内の粒子の上で、アミノ酸配列に変換されて(翻訳)たんぱく質が合成される。しかし、原核細胞と真核細胞とではセントラルドグマに従うも形質発現の機構には大きな違いがある。それは遺伝子の編成が違うから。原核細胞は細菌の細胞のこと。細胞内部で遺伝子DNAは裸で存在している。真核細胞は動物や植物の細胞で、微生物の仲間で酵母も真核細胞。
 真核細胞では、細胞分化という現象があるため原核細胞より遺伝子の発現を制御する機構は複雑で、その過程では細胞分裂の際に形質の違う二つの細胞になる現象が起こる。植物では分裂した一つの細胞は根の細胞になりもう一つは葉の細胞になるという現象が起こる。これを細胞分化といい、転写の過程に原因があると考えられている。
 種の壁を越えた遺伝子操作が可能になったのは、長いDNA分子の鎖をある特定の場所でだけ切断する制限酵素と呼ばれる酵素が発見されたため。制限酵素とはDNA鎖の4つまたは6つの塩基配列だけを認識してその場所だけでDNAをある長さをもった断片に切断する酵素。いろいろな細菌が制限酵素を持っており100種類もの酵素が取り出され市販されている。制限酵素の一種EcoRIは認識配列を四塩基ずれた位置で切断するので生じた二つの末端には四塩基の一本鎖DNAの部分が残る。この一本部分同士はお互いが結合して二本鎖DNAをつくることのできる相補的塩基配列になっているから別のDNAのEcoRI断片と簡単に結合して、組み換えDNAを作ることができる。このときの遺伝子が動物や植物の遺伝子だと種の壁を越えた組み換えができたことになる。DNAをハサミで切断し、できた断片ののりしろ同士をつなぎ合わせて遺伝子を組み換えるというのは制限酵素の機能を説明するもの。
 ある特定の遺伝子だけを取り出して大量に増やすことをクローニングといい、後に植物へ外来遺伝子を導入する方法に応用された。大腸菌の細胞には染色体とは別に細胞質で自己増殖している、小さな環状DNAがある。これをプラスミドと呼び外来遺伝子を目的の細胞に運ぶ運び屋(ベクター)としてつごうのよい性質を持っている。このプラスミドのDNAに増やしたい外来遺伝子のDNAを組み込めば、プラスミドの増殖とともに外来遺伝子も何百倍に増やすことができる。
1976年には人成長ホルモンを組み込んだ大腸菌が78年にはヒトインシュリン遺伝子を組み込んだ大腸菌が作られ、今では大腸菌に人の成長ホルモンやインシュリンを作らせ医薬品として使用されている。
バーグは、大腸菌のベクターに動物ウイルスの遺伝子を挿入した、組み換えDNA遺伝子を初めて試験管内で作りノーベル賞を受賞している。
 しかし、バーグも倫理的な問題意識から組み換えDNAを大腸菌に導入して増殖させる実験をすぐには行っていない。そして1975年にはDNA組み換え実験に関する会議を開き、組み換えDNA実験のガイドラインを作ることにし、科学者が作った新しい技術が生み出すかもしれない危険性を想定し自主規制した。
 遺伝子組み換え植物が最初に実用化され市場に登場したのは92年に中国で作られたタバコ、94年アメリカでは日持ちのよいトマトが登場した。99年のマーケット取引高は20億ドルを突破している。
 近いうち登場する新植物には大きく分けて3つある。①生産者である農家だけでなく消費者にも利益をもたらす新植物。②暑さ、寒さ、乾燥などの悪い環境にも強い新植物。③分子農業に利用できる植物。①は食糧や飼料などの栄養価を向上させるような形質を持った作物。すでにアメリカでは95年にオレイン酸高生産性ダイズが商品化されている。オレイン酸は血中コレステロールの値を下げる効果の脂肪酸である。また主食である米としてゴールデンライスと呼ばれる開発途上の人々のビタミンA不足を解決するために計画された組み換え作物が注目されている。②に関しては不飽和脂肪酸の含量を低くすることで暑さに強い植物作るという研究や乾燥に強い作物を作るために塩害に強い植物の研究が進められている。③は植物を工場のように利用しようという研究。すでに医薬品や検査薬が植物から生産されている。注射でなく食べるワクチン開発もこの分野の課題。開発途上の人々にとっては食べるワクチンができればおなかを満たすだけでなく、健康をも改善できるものになる。
ここまで遺伝と植物の進化を述べたが、組み換え遺伝子技術へのリスクにどういったことが考えられ、何が不安材料か。まず、遺伝子技術に対する理解を深めるための教育的課題として、アメリカの有名大学では生物学を全学生の必須科目にしているのに対し、日本では生物学の単位を取らなくても医学部に入学できることを述べている。そもそも日本では理解される土壌ができていないといえるのではないだろうか。
 種の壁を越えた遺伝子組み換えは自然の摂理に反する技術か。DNAのレベルでは種の壁は存在しないことが分かった。遺伝コードは地球上の生物すべてにおいて共通している。また細菌などの原核生物の世界では種の壁を越えた遺伝子組み換えが、頻繁に起きていることが分かっているとする。わたしは遺伝子組み換えの研究に当たっている研究者は高い倫理のもとで行動し、恩恵を享受する消費者には組み換え技術について理解を深めるための教育が必要であり、さらに著者が指摘しているように輸出国と輸入国双方の行政機関が責任を持って流通の過程を厳しくチェックすることは最低限必要なことだと思う。



仏教における執着の否定について 

2005-01-29 12:14:29 | 経営-ミッション-ビジョン-グランドデザ
哲学
仏教における執着の否定について

 執着とは、一つのことに意識を固定化させることによって、そのほかのことにまで考えが及ばなくなり自分を中心に物事を考えてしまうことである。
 では、執着とはどのような場合に起こるか。人は生きている限り、何らかの目的を持つことは必然であるが、立てた目的が人生のすべてだと思い込んでしまうと、人間は執着に陥ってしまう。目的を持つことが執着の問題ではなく、目的を絶対視してしまうことが問題なのである。人間はいかにすばらしい目的を立て、それを追求したところで、自身のみでは生きることはできない、なぜなら、この世の森羅万象は、縁起の法則にしたがっているからである。縁起の法則とは、すべての物事は原因があって起こるということである。すべての事物は存在する限り、相互に依存しあう関係なのである。目的を絶対視してしまうとそのことを忘れ、自分が他とは関係ない存在だと思ってしまう。仏教はこれを否定している。
 これは自然についてもいえそうである。人間は自然を破壊しているが、それはやがて自分やその子孫の未来を破壊することに帰着する。そのことに我々はしばしば気づかない。これを説明するために植物を考えてみる。植物は我々の食糧となり酸素を供給してくれている。にもかかわらず生活を便利にするなどの理由で、植物を容易に無駄に破壊してしまう。我々は植物がなければ生きることができないのに。植物は人間がいなくてもいきることができるのである。地球を守ろうなんて掛け声はおごりとさえいえそうである。地球は我々が守らなくても存在し続けるだろう。それがなければ生きていけないのは私たち自身である。自分が何らかのものに依存していることをもっと冷静に考えなければならない。



生産行動

2005-01-29 12:09:58 | 国際・政治・社会・経済
生産行動理論
参考:ジョゼフ・E・スティグリッツ ミクロ経済学
経済学原論Ⅰ

ミクロ経済学
 企業の目的とは、利潤(収入と費用の差)を最大限にあげることである。その目的を果たすために企業はどのような要因を考慮しながら生産行動を決定しているのか、各企業はどのように産業を組織し、市場を形成しているのかを考えてみたい。
企業と費用
 生産関数とは投入物(生産要素=原料や燃料、労働力など)の組み合わせから生産される産出量を表したものである。
投入量が増加するよりも少ない割合でしか産出量が増加しないことを収益逓減という。一方、投入量が増加するとそれ以上の割合で産出量が増加するような企業は収益逓増(徐々に増える)であり、投入量に対して産出量が同じ割合で増加するようなケースを収益一定であるという。
 利潤最大をめざす全ての企業は生産したい産出量での費用を最小にする生産方法を選択する。費用が最小ならば利潤が最大になるからである。それまで扱っていた投入物の価格が上昇するとき、他の安価な投入物で代替しようとすることを代替の法則という。
生産の決定
 収入曲線とは企業の総産出量と収入の関係を表すものである。競争的企業にとっては、生産物をもう一単位追加的に販売することによって得られる限界収入はその財の価格に等しく、市場価格(もう一単位生産を増加することによって得られる限界収入)と限界費用(産出物をもう一単位追加して生産するために必要となる費用の増加額)が等しくなる産出量を選択すると利潤が最大になる。
 財の市場価格が平均費用(総費用=生産にかかる全ての費用を産出量で割ったもの)の最小値を上回っているならば販売によって得られる収入がその財を生産するための費用を上回るため、企業は利潤を得ることができる。よってこの場合には企業は市場に参入する。反対に、財の市場価格が平均費用の最小値を下回り、かつサンクコスト(回収できない費用)がない場合には、企業は即座に市場から退出し、サンクコストがある場合には、短期において少なくとも可変費用以上の収入が得られる限り、その企業は生産を継続する。 
市場構造 
 市場構造は完全競争の他、競争が制限されるタイプとして主に三つに分けられる。①市場供給のすべてが一企業だけで行われており、競争相手がいない状況を独占という。②いくつかの企業が市場に供給する場合を寡占といい、③企業数が寡占より多いが完全競争ほど多くない場合には独占的競争と呼ばれる。寡占や独占的競争を不完全競争ともいう。市場が完全競争ではなく不完全競争となるのは比較的少数の企業が市場を支配したり、品質や価格、立地点の違い、消費者の認識の違いまたは各企業が差別化された製品を生産する場合であり、意図的に参入障壁を高くしようとする既存企業の戦略によるところが大きい。
  しかし、寡占企業はライバル企業と共謀してより高い利潤を得るか、それとも競争して利潤を高めるかについて選択しなければならない。さらにライバル企業が自社のとる行動に対してどのように反応するかについても決定しなければならない。
寡占産業においてはライバル企業が値引きに同調するが、値上げに同調しない場合、企業は屈折需要曲線に直面する。屈折需要曲線に対応する限界収入曲線は、垂直方向に不連続な部分を持つが、そのために企業は費用条件が少々変化しても価格や産出量を変えないかもしれない。



資本主義と信用

2005-01-29 12:05:12 | 国際・政治・社会・経済
参考:都留重人 編 経済学小事典 岩波書店
   明治大学政経学部教授 飯田和人 経済学言論Ⅱ 講義

資本主義経済と信用
 商品流通が発達してくると、買い手と売り手の事情によって商品売買が貨幣の後払いの約束を信用して成り立つようになり、それが市場経済での信用の基礎形態をなす。資本主義のもとでは、再生産にたずさわる諸資本のあいだにおける商品の信用売買が、商業手形を媒介に商業信用を形成する。商業手形は、裏書による連帯債務保証を加えて、さらなる商品の購入に用いられ、基礎的な信用貨幣として、資本家間の商品流通を弾力的に拡大する機能を持つ。 しかし、商業手形はその特定の金額、支払期限、信用度などにより、流通性に限度がある。 
 銀行信用は、商業信用にもとづき、債権・債務の関係をさらに社会的に拡張し、組織する。古典的には、銀行は一覧払いの約束手形としての銀行券を発行し、諸資本の遊休貨幣資本を預金として集めて社会的な債務を負い、他方で産業資本や商業資本の必要に応じ、その保有する商業手形をその銀行券や現金と引き替えて、利子分を割り引きつつ、手形債権を取得する。銀行券は、商業手形より高次の信用貨幣をなし、古典的金本位制のもとでは、諸銀行の銀行としての役割を果たす中央銀行の銀行券もそのさらに高次的な展開形態をなす。こうした商業信用と銀行信用からなる信用制度は、産業資本と商業資本の遊休資本の相互利用を資本化社会的に媒介し、それによって利潤率の増進と均等化の運動を弾力的に促進する。 
 しかし、その反面で、産業循環の局面によっては、諸資本の投機的発展を過度に助長し、その崩壊過程で、支払手段としての貨幣の入手困難とその連鎖を介して商品の投げ売り、諸資本の倒産、大量失業の発生を伴う恐慌による資本の価値破壊をもたらす不安定性を内在させている。
 このような恐慌対策として、中央銀行は貨幣流通量や利子率を独立変数として動かすことができる。しかしながら、投機的動機にもとづく貨幣需要量の増加に対して金融緩和を行っても、利子率はあるところまでいくと下がらなくなるので注意が必要である。
 中央銀行券にも金兌換を停止して、通貨の国家的管理体制を強化している現代資本主義は、こうした信用の機能の社会的統御を重要な課題としてきた。
{国際的側面}
 国際取引の決済手段として最初に用いられた国際通貨制度は国際金本位制である。金本位制とは、金を貨幣制度の基礎となる貨幣とすることをいう。この金本位制度は四つの原則に支えられていた。①金の一定量を持って貨幣の単位とし、②銀行券と金貨との兌換は自由であり、③金貨の鋳造・鋳解の自由④そして金の輸出入の自由である。
 金為替本位制度とは、国際金融の中心国が金貨本位制(アメリカ)か金地金本位制(イギリス)を採用していることを前提として、その他各国は金本位制をとる中心国の通貨(基軸通貨)で払うことを約束した為替手形で、国際間の決済システムである。第一次大戦後の再建金本位制で金準備を持たない国が採用した。第二次大戦後は、IMF体制(ブレトンウッズ体制)であったが、この制度は世界に対する国際流動性の供給をアメリカの経常収支赤字に頼っており、流動性の供給と回収は困難だった。そして71年ニクソンショックが起こるとアメリカは金との交換を停止し、73年には主要国が自由変動相場制を採用し、ブレトンウッズ体制は崩壊した。現在は資本移動の自由と変動相場制を特徴とする国際通貨制度となっている。