自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
哲学・ビジネス・雑記・洒落物など等

カビールセガール『貨幣の「新」世界史』

2019-07-07 22:16:17 | 歴史・思想・哲学

著者名 :カビール・セガール

書籍名 :貨幣の「新」世界史

出版社 :ハヤカワ文庫

発刊日 :2018年10月15日

価 格  :1080円プラス税

ジャンル :世界史(お金)

読 日  :2019年7月7日

経 歴 :アメリカの電子決済サービス企業ファースト・データ企業戦略担当。元JPモルガン新興市場部門ヴァイスプレジデント。ダートマス大学、LSE卒業。ジャズミュージシャンで音楽プロデューサーでグラミー賞を2度受賞。大統領選挙戦のスピーチライターなども手掛ける。

構 成 :3部8章。1部:精神(なぜお金を使うのか)2部:身体(お金とは何か? お金の形態論)3部:魂(お金をどう使うべきか?)著者の問題意識は人間の未来がお金によって形成されていることをもっと知ってほしいとのこと。確かに。自分あるいは家族計画の未来を考える際にお金の算段も必ずと言っていいほど考えている。読んだところ、こんな流れだ。

著者は25か国を回り過去・現在・未来を考えた。まずはダーウィン種の起源のガラパゴスから。ここですべての生物はエネルギーを交換しあっている。食物連鎖もある意味そう。植物と昆虫の関係も。生物にとってエネルギーが貨幣とも言えることに気づく。動物だって余剰は困ったときに保存しておく。熊は冬を超えるためにお腹にエネルギーをためて冬をしのぐ。これも生き残るための行為。交換行為自体が生き残る機会が増す行為だから交換を行う。貨幣のルーツは物々交換または債務の流れで始まった。人類は、幸い、森から離れ、食料を求めて二足歩行になったときに余った手を使い、物を作ることを始める。道具は専門化を促す。専門化は分業を促す。分業はコミュニティネットワークを促す。そして、集団狩猟へ、そして農耕へと進化していく。手斧ははるか昔の120年万年前ごろのものが見つかったらしい。時代が近づくにつれて見つかった手斧の段々刃が薄くなっていくらしい。手斧が貨幣の役割も果たしていたのではという学者もいるそうだ。貨幣は、①価値尺度②交換③価値保存の役割・機能を持つと定義できる。ただ経済から離れて、価値の象徴としたほうが、より広い視点で貨幣を考えることができるという。物を作り始めて、表象的思考を手に入れることにつながる。表象的思考は、脳内で具体的なイメージを持つことである。都市計画等が旨く行くというのはまさに集団知がなせる業でしょうか。お金が社会で価値の象徴であることを共有している(さらに先ほどの①~③の3つを信頼しあっている)からこそ、価値の象徴、価値:重要なもの・貴重なものの象徴としての意味を持つ。金融危機が起こった時などは、国の経済施策より信頼がおける金(きん)に逃げたりするのもそのせいだ。原始通貨=金・銀・大麦等の他、代替通貨として地域通貨、マイル、ポイントカードと紹介され、決済、政治的な通貨供給量のコントロール、ビットコイン(通貨としてよりプロトコルとしての技術が評価されている)、クレジット決済、携帯決済、ペイパル等が紹介される。

お金=集団知が有効な社会でないとウォーキング・デッドのようなお金が機能せず、物々交換でしかやっていけない場合、特に初回交換時には血みどろの交渉が前提となってしまうことを考えると天災が起こっても機能できるセーフティネットやインフラはBCPならぬ国民生活復旧計画のメンタルセットが必要と思われます。また、国民生活安定のための道州制あるいは昔の藩今の都道府県レベルに権限を委譲したほうがうまくいくのでしょうか。おらが村根性の出し合いになってうまくいかない可能性も考えられるし、結局優秀な人が官僚や政治家になりたいという国にしていかないとお金だろうが金(きん)だろうがインターネットだろうが、携帯決済だろうが、ペイパルだろうが、終末やカオスになったらひどいことになるのは色々な映画や伊坂さんの『終末のフール』でも描かれておりますね。

 

 

 


世界史 中東

2017-04-22 13:38:17 | 歴史・思想・哲学

概要

時事通信社のベイルート特派員出身で静岡産業大学教授【森戸幸次氏】

アラビア語を駆使して調査したそうだ。

パレスティナ問題の理解には、

 ・国際システム

 ・中東システム

 ・アラブシステム

以上すべての近現代史の読み解きが不可欠とのこと。

トルコ・イラン・エジプトの一部を除き、近代化はされておらず、

有力部族支配がいまだ色濃く残っている。そんな中で独裁政権が崩れ、

復古派・過激派が台頭。ISにつながる。スンニ(スンナとも呼ばれる)派

過激派がシリア内戦・イラク分裂を利用して、シリア東部・イラク北部を占拠。

ネットを駆使して、権力正当化を図っている。

ユダヤ人の問題

 それからトルコ人もキー。

アラブ人の問題

アメリカとイスラエルの同盟

キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の宗教の問題

等未解決問題が集中。

エネルギー問題や、イギリスの二枚舌外交からのバルフォア宣言も

白黒つけられない状況にした。ちなみにイスラエルの諜報機関モサドは、パレスチナが

イギリス支配下にあった際に、反英国武装闘争の地下組織が前身だったんだそうだ。

たぶんムハンマドがどのような役割を果たしたか、この辺からアプローチしないと

わからないだろう。

ローマとペルシャが6世紀末に衰退。代わって、

ローマ、ペルシャ、インド、中華4つの帝国からユーラシア帝国へ統合される時代。

ユーラシア帝国は7世紀から14世紀(アラブ人→トルコ人→モンゴル人)まで。

アラビア半島のアラブ人が地中海南部から西アジア中央アジアの巨大な地域に

イスラム帝国を成立させる(ユーラシア)。

東西の交流が経済を促し、スーパー帝国に向かって世界史は進む。

歩兵中心の軍隊に対して騎馬遊牧民が圧倒していく。

7世紀後半から8世紀後半までアラブ遊牧民の軍事征服と大征服運動。

アッバース朝(イスラム独特の都市間交通による交通網)

草原・海・川、各道は、北欧・アフリカ・スペイン・中国とつながる。

イスラーム勢力は、ササン朝を倒し、ビザンツ(東ローマ帝国)から

シリア・エジプトを奪い取り、陸のペルシャと海のローマ2強間の争いにピリオドを打った。

6世紀末、ペルシャ(ササン朝)とビザンツ(東ローマ帝国)が戦争で、首都クテシフォンと

コンスタンティノープルが衰退。代わってメッカが新興宗教都市として成長。

イスラム帝国は大乾燥地帯=ユーラシアの古代史の完結とともに世界史をスタートさせた。

中心人物はアラビア半島の都市メッカに生まれたムハンマド(570-630年)だった。

ムハンマドの死後、スンニ派(正統カリフ)とシーア派(ムハンマドの従妹アリーとその子孫を後継者とする集団)

が対立を深める。

メッカは約200人で構成の遊牧部族がそれぞれの神(360)を祭った。つまり7万2000人?

→このイスラーム帝国の形成(地中海支配)が今度はヨーロッパキリスト教の再編を促す。

ローマ教会とフランク王国(フランス・ドイツ)が提携(ローマ教皇と皇帝カール大帝)。

 

参考松岡正剛『世界と日本のまちがい』、宮崎正勝『世界史』


世界史 宮崎正勝

2017-03-28 23:28:30 | 歴史・思想・哲学

上から下への世界史の流れ

・グレートリフトバレー

・大乾燥地帯

 狩猟

・農業(麦)牧畜(山羊・羊)=定住化

 人口の増加、都市形成、国家結成の起源

 食料、労働力を求める侵略の起源

・大河(灌漑)を起点に都市化・交易

 4つの河川文明

 ナイルのエジプト、

 メソポタミア文明

 インド半島のインダス文明

 黄河文明、長江文明

・都市国家化の促進

 都市(十分な農地・畑がないため)自給自足できない。

・都市の出現と同時期に宗教・哲学が出現

 ユーラシア規模で同時期出現する背景→都市の成熟

・都市の農村支配の構図

 法律・軍隊・官僚制(軍事都市・宗教都市・交易都市が栄える)による。

・農耕部族と牧畜部族の対立

・馬と戦車→帝国(ペルシャ・ローマ)の形成

・乾燥地帯

・東地中海=東ローマ帝国

・ペルシャ戦争

 海(ギリシャのポリス)と陸(ペルシャ)の戦い

・マケドニア アレクサンドロス

・ローマ帝国 カエサル

・ビザンツ イスラム帝国

 →中国 春秋戦国時代

 →漢帝国

 商人ムハンマド アラビアメッカ


非武装という名の武装

2009-08-28 01:23:32 | 歴史・思想・哲学

差別を含む暴力に対し、

非暴力という名の抵抗が有効であることはガンジーが過去に証明してみせた。

文字通り、命をかけての真理の追求であったのだが。

日本も、この方法にかけてみるというのも有効な選択肢の一つではないだろうか。

具体的な一例では、北朝鮮の脅威に対して、非暴力的な態度を貫くのだ。何があっても。その時、建前であってはならない。ガンジーの非暴力は建前ではない。本質である。だから彼は真理という表現を取っているのだ私は思う。

人間は、時にいくらでも狡猾になれると思うが、その同一人物の中には、人を思いやる気持ち、つまりは優しさも同時に存在するのだ。

ごく少数だが、狡猾さしか持ち合わせていない人間もいるかもしれないが、その人達さえも窮地に追い込むほどの覚悟が必要なのだ。


卒業式

2007-03-27 00:11:46 | 歴史・思想・哲学

桜は気象庁の発表とは異なり、少なくとも九段の武道館までの道のりでは咲いていなかった。

10年後、20年後になって、今日卒業した人たちはどうなっているのでしょうか?

本質は何も変わっていないか?

女の子、男の子にモテタ人はどうなっているのか?

大企業に勤める人たち、20年後には社内でのそのさらなる将来の立場が見えているころでしょうか?

暗い顔する毎日を送っているのか?

他人・環境の愚痴ばかりの人間になっているか?

自分はどうなっているか?ではなく、どうなりたいか、だと思う。

その結果が10年後、20年後の時を積み重ねた結果だと思う。

結果は、選択の連続の結果だ。

今一度戒めよう、自分を。

結果は、選択の連続の結果だ。

人生の最後に、どういった思いを胸に抱いて死ぬことができるか。

人生のすべてはその瞬間にある。

「あー、俺の人生、満足だった」なんて思って死ねる奴は、一割もいない、とある人がいった。

「でも、少なくともその一割に入りたいと思わなければ、無理なんじゃない」と言い返した。

人生は自分だけのもの。自分で何らかの選択をした結果の積み重ねだ。


レビット

2006-11-11 12:33:07 | 歴史・思想・哲学

ハーバード・ビジネス・レビュー2006年11月号をチラ見。

セオドア・レビット『マーケティング近視眼』を読む。

鉄道産業は輸送産業と再定義できる。

 環境・技術、ニーズ、産業構造など様々な変化の結果、鉄道産業は自動車の普及によって低迷しているが、事業を定義しなおすことで、新たな事業ドメインを開拓できる。まだまだ成長が期待できるというものだった。

金言なり。

「木に穴を開けたいな~」と思った人がいたとして、ホームセンターに買い物にいく。

・しかし、企業は、その消費者がドリルを欲していると思ってはいけない。木に穴をあけることができれば、ドリルである必要はないのだ。

・消費者は、洗剤など本当は欲してはいない。汚れが落ちればいいのだから、洗剤が必要ないことに越したことはない。

事業を定義しなおすときに最も必要な視点は、消費者の視点である。


Rent Seeking 利権追求 公私混同は許されない

2006-10-17 00:50:42 | 歴史・思想・哲学

 先進国、途上国問わず問題になっている今ホットな経済テーマだ。タイのタクシン政権が崩壊した理由もまさにこれ。

 福島県知事の辞職もこれ。規制で守られた部分の権益を手に入れれば、市場活動を通じて事業を行うよりも莫大な利益が得られるため、その権益を追求して利益をあげようとする活動を指す。

中国で今起きていることもまさにこれ。

 鄧小平が78年に改革・解放政策を実行に移してから28年、幾度もの行政機構改革、党政分離などを主張・実行しようとするも何らかの抵抗につまずきうまくいかなかった。ウェーバーの述べた官僚制を目指したことに間違いはなかった。改革は、特に経済改革は斬新的と言われるも、急激に効果が効果が表れた。だが、政治・行政機構改革を後にしたがために改革の効果が表れたころには既に、中国の人口と広大な土地の規模を考えれば、市場導入や機構改革によってその構造は縮小されていた。そして、格差解消を党主導で是正しようと考えても、逆に党の市場介入は腐敗の温床となり、格差を広げる力に寄与している。

 朱鎔基元首相も三大改革(国有企業・金融・行政改革)を掲げ、汚職・腐敗と戦った。彼は国計委(国家計画委員会後は国家発展計画委員会)の権限を削減し、権力基盤だった国経貿委(国家経済貿易委員会)に権限を移動させ、自身が統治しやすいように改革していった。これは中国ではまず官僚組織を自分の下に置かなければ、正しい理念、問題を解決するための意識を持ち、それを実現するための戦略を策定しても実行不可能な現実を分かっていたからだ。

 胡錦涛総書記、温家宝首相が真に清廉ならば、腐敗の温床となっている党の市場介入(許認可権限の濫用、公私混同)を徹底的に取り締まる必要がある。もし、そのために地方の権限が邪魔になるならばもう一度中央集権を強化させることも考える必要がある。

 

 


市場対国家あるいは大きな政府小さな政府

2006-10-06 10:42:54 | 歴史・思想・哲学

 この議論の前提として忘れてはならないのが、誰(主体)が何(客体)を持って市場参加となりうるのか。実はこの部分の議論が今まで乱暴に、素通りされてきたのではないか。

 こう指摘するのが、稲葉振一郎・立岩真也 『所有と国家のゆくえ』(NHK出版)である。二人とも専門は社会学。

 確かに、つまり所有の問題である。

 このブログのテーマにもなっているが、何が自己で何が他者か、という問いにも関わりがある所有の問題。

 中国の抱えている問題の理解を深めるために読み始めたのだが、中国は今その問題が表面化している真っ最中だ。

 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、ゴールドマンサックスの人が言いだした言葉では南アフリカは含まない)の中でも断トツな経済成長(改革・解放以降年率9%)を遂げている中国にとっては所有の問題はまさに避けて通れない、政策の中心的問題なのだ。

 中国では徴税制度が整っていない、税務職員不足のために徴税率がものすごく悪い。そもそも、なぜ我々は税金を納めなければならないのか、という問いに今の中国の政治体制でうまく答えることができるのか。

 共産党幹部の汚職・企業との癒着の問題もそう。私有財産と公共財の境界が曖昧だから起こっている問題。

 農地の問題(三農問題)もそう。集団所有ですすめられてきた農地改革、農業生産性の向上、この問題の解決となるカギは所有制をどのような枠組みで認めれるか。

 先進国でも今は自明として財産権は機能しているが、この先も機能し続けるかは不透明。その問題に離陸したばかりの中国が挑んでいる。


マックスウェーバーとアダムスミス

2006-09-29 11:29:24 | 歴史・思想・哲学

マックスウェーバーの正統的支配形態

①伝統的支配形態

②カリスマ的支配形態

③合法的支配形態

 近代における合法的な支配形態は官僚制の形態をとる。国家統治だけでなく、企業も同じ(結果として今の企業形態となった)。

 官僚=価値中立的、職権、専門性、一定の階層存在、没主観的義務観念

しかし、そうであるがゆえにそこには既に問題が内包されている。

 官僚主義問題である。・・・形式主義、非能率的、非人間的、前例主義、本来人格とは無縁のはずが、人間関係ネットワークを築いている。(国分良成『現代中国の政治と官僚制』(慶應大学出版会))

 近代経済学(古典派経済学)の祖、アダム・スミスによれば、「自由競争であれば、資源の最適配分(パレート最適)が達成される」が、個が集まった段階(組織・企業ができた段階)で、上記の考え方による説明では、企業の存在正当性が説明できなくなってしまう。

 市場対国家(政府)、私対公、自由対規制、効率対公正という2者の対立軸では物事の本質は見えてこない。

 制度経済学が台頭している理由でもある。その対象として、法だけでなく、習慣や恒例が含まれているからである。

 個に引き戻して考えてみると、個としてのスキルの高い職業、士(弁護士、公認会計士、税理士)の人々は、組織を嫌い、個人として働く人が多い。なぜなら、自分が他人によって煩わされるのを嫌うからだろう。上司や部下というヒエラルキーが組織に入れば必ず存在するから。

 一方で、企業、特に大企業でヒエラルキーの上層に入り込んでいくためには、個人的スキルとは別に、他人(上か横か下か)の関係調整(スキルと見るならばスキルか・・・)が絶対的に重要となる。いわば政治的駆け引き。

 きっとこれをスキルと捉える事のできない人は、個で生きようと独立するのだろう。

 組織の難しさを理論的に説明を試みたのが、例えばポール・ミルグロム、ジョン・ロバーツ『組織の経済学』、歴史的視点で組織と社会を考察したダグラス・ノース『文明史の経済学』、ウィリアムソンの「エコノミック・オーガニゼーション』などである。

彼らが制度派と呼ばれる経済学者である。


中国に関する文献

2006-06-02 02:24:05 | 歴史・思想・哲学

シリーズ現代中国経済全8巻 (名古屋大学出版会)各2800円

1.中兼和津次 『経済発展と体制移行』

2.厳善平 『農民国家の課題』

3.丸川知雄 『労働市場の地殻変動』

4.今井健一 渡邉真理子 『企業の成長と金融制度』

5.大橋英夫 『経済の国際化』

6.加藤弘之 『地域の発展』

7.佐藤 宏 『所得格差と貧困』

8.菱田雅晴 園田茂人 『経済発展と社会変動』

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9.中兼和津次『改革以後の中国農村社会と経済』(筑波書房)

10.陳桂棣 『中国農民調査』(文藝春秋)

11.浜田宏一 内閣府経済社会総合研究所『世界経済の中の中国』(NTT出版)

12.王 保林『中国における市場分断』(日本経済評論社)

13.イアン・ジョンソン

14.関 志雄『日本人のための中国経済再入門』(東洋経済新報社)経済政策レビュー⑥    

15.王 在喆 『中国の経済成長』(慶應義塾大学出版会)

16.石田収 『中国の黒社会』(講談社新書)

17.森谷正規『中国経済 真の実力』(文春新書)

18.関満博

19.莫 邦富

20.鮫島敬治・日本経済研究センター

『2020年の中国 政治 外交 経済 産業の将来を読む』(日本経済新聞社)

『中国 WTO加盟の衝撃 対中ビジネスはこう変わる』(日本経済新聞社)

『中国の世紀 日本の世紀 米中緊密化の狭間で』(日本経済新聞社)

『中国リスク 高成長の落とし穴』(日本経済新聞社)2007・7月

21.朱 建栄『中国 第三の革命』(中公新書)

22.渡辺利夫

23.レスター・ブラウン

24.ゴードン・チャン『やがて中国の崩壊がはじまる』

25.中嶋嶺雄

26.小森義久

27.落合信彦『誰も見なかった中国』(小学館)

28.大前研一『チャイナ・インパクト』(講談社)

         『中華連邦』(PHP)

29.ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー

30.フォーリン・アフェアーズ・ジャパン『次の超大国・中国の憂鬱な現実』(朝日文庫)

30.ダニエル・バースタイン

31.李昌平『中国農村崩壊』(NHK出版)

32.興梠一郎 『中国激流 13億のゆくえ』(岩波新書)2005・7月

          『現代中国 グローバル化のはざまで』(岩波新書)

33.小島麗逸 『現代中国の経済』(岩波新書)1997・4月初版

他。


国家と歴史

2006-05-31 09:19:52 | 歴史・思想・哲学

この瞬間も時間は流れ、やがて時代が変わる。

しかし、歴史は繰り返す。

 国家の壁を超えようと試みた国は多い。

しかし、だからこそ、そこには矛盾もはらんでいた。

スペイン・ポルトガルはそれに失敗し(19世紀初め)、17~20世紀にかけて、イギリス、オランダ、フランス、ロシアと続き、どれも失敗し、だが、失敗したからこそ、今のEUに至ったのである(結果論だが、歴史は結果の積みかさねだ)。これはアウフヘーブンか?矛盾が内在していないと物事は発展しないのか?

 世界は、国と国は、通信・ITの発達によってつながっていることが眼には見えないが、意識できるようになった。そのうち世界は、より宇宙船地球号のようになるだろう。どこかがポシャレば、連鎖倒産していく。アジア通貨危機のように。組織体としての企業、個人としての人間、それらを充足させる資金の流動性は高くなる一方だ。世界恐慌が起こりやすくなった。そのとき、国は、政治をつかさどる人間はどのような行動をとるだろうか。壁を設けるか。それは可能か。ともに解決しようと手を取り合うか。それとも一緒に不幸を受け入れるか。

きっと、また歴史は繰り返されんだろうな。そのときまでに自分が守りたいと思う範囲の人や組織は守れるような実力を身につけていたい。その実力は状況を把握する力であり、ドメインを認識する力であり、方向を定めたり、誘導したりする力なんだろうと漠然とだが思う。

(参考 ピーター・ドラッカー『ポスト資本主義社会』ダイヤモンド社 )


中国の経済発展に見るクズネッツの逆U字カーブ

2006-05-26 00:58:44 | 歴史・思想・哲学

 中国は鄧小平が1978年に改革開放を指示し、先富論を提唱したので、現状の経済格差は仕方がないものと見るべきなのか。発展初期は格差は大きいが、発展が進むにつれ、やがて格差は縮小していく(これをグラフにするとU字の下への出っ張りが逆になるから逆U字)。しかし、そうなるとまだ中国は発展初期段階ということになる。またクズネッツは貿易に関して、大国ほど貿易依存度は低くなることを証明している。国際比較でも中国のGDPに占める輸出ー輸入の割合(貿易依存度)は低い。おそらく「国内市場が大きいから」ということだろう。しかし、中国の場合FDI(直接投資=外資導入政策)依存度が高い。経済特区という形で外資を誘致している。こうした経済特区を経済発展にモデルに組み込んでいるのだが、地域開発の研究者はこのことをどう考えているのだろうか。

2008年度北京オリンピック

2010年上海万博

ここまで、沿岸部の主要都市の地価は上がりつつけるようだ。その後、どう舵をとっていくのか。下手するとバブルとなりはじけてしまう。


ハワード『明日の田園都市』

2006-05-24 01:03:52 | 歴史・思想・哲学

エベネザー・ハワード、地域開発論の講義で、教わった人の名である。

イギリス人で速記者をしていた人らしい。

 イギリスの産業革命期、エンクロージャーという地主による土地の囲い込みによって、それまでその土地を借りて農業に従事していた人々が失業し、職を求めて都市に流入していった。その結果、上下水道も整備されていなかった都市部は急激な人口流入によって汚れ、さすがに上下水道などを整備しなければ、衛生的に悪化し、ウイルスが発生する事態を改善することができないことに気づいていった。そしてインフラを整備していった。

 一方、都市のごみ収集や清掃などの雑用に従事する労働者はお金がないために、夜中もうろつきまわり、スラムを形成していった。これは解決しなければまずいと大勢の人が効率的に住める住宅地・団地を創り始める。

 逆に金を持った知識人・文化人は郊外へと逃れていく。といっても歩くにはきつい距離でせいぜい10キロ20キロの距離だったそう。そして営利目的の民間企業(デベロッパー)は、都市郊外に鉄道を敷設し、公園などもつくり、土地に付加価値を付け、金持ちの需要に答え(供給し)ていった。

 また、中にはこう考えて来る人も出現した。「デベロッパーが儲かるのではなく(営利目的ではなくて)、金持ちでもなく、一般の労働者が暮らすことができるような、その地域に住む人々に利益を還元することができるような職住接近型住宅地、田園都市を創ることができたら、いいのにな~と」そうした考えをもつ人々の中心にいたのが、エベネザー・ハワードその人である。彼はこうも考える人間だったらしい。政府は基本的には非効率な組織だ。民間にできることは民間がやるべきだ(現在の日本にもいっている人がいますな)。

 そして、彼は自分の思いを理解してもらうために講演して周る。その中にはもの好きなお金持ちがいて、ガーデン・シティ・アソシエーションという協会ができたりしたらしい。そのメンバーの中にはあのジョージ・バーナード・ショーなんかもいたそうな。しかし、うまくいかなかったらしいのです。株式会社の株を買い取って、高く売ってしまおうとか、いろいろな思惑を持つ人がいたために。現在ではその郊外都市レッチワース、ウェリーといった名の都市は存在するが、超高級住宅街(いわゆる金持ちのステータス住宅地)になっているらしい。

 しかし、その後、労働党が政権を握っているとき、皮肉にもこのハワードの考え方、アイデアがパクラれて公的セクターが乗り出して、一般労働者が住めるような住宅地を都市郊外に建設していったらしい。 

このハワードの街づくりアイデアは日本のあの田園調布(あの田園都市線)にも生かされていると聞いたときには驚いた。面白い考えですね。こういう地域開発の考えを何とか途上国の経済発展モデルに活かせたら良いのに、と思うのであります。


田坂 広志『使える弁証法』

2005-12-24 02:00:03 | 歴史・思想・哲学

田坂広志氏著『使える弁証法』を読んだ。

田坂氏の本ははじめて読んだ。以前、MBAの取得者が勧める参考書をランキング化した本で田坂氏が「クリシュナムルティの本」を勧めていたというぐらいしか印象になかった。この本を読んだ後、難しいことを意味を変えずに、いかにして読み手がわかりやすいようにするかという点にこころ配りをしていることが伝わってきて驚いた。

弁証法:広辞苑によると、

「本来は、対話術の意味で、ソクラテス・プラトンではイデアの認識に到達する方法であった。アリストテレスは多くの人が認める前提からの推理を弁証的と呼び学問的論証とは区別した~略~ヘーゲルは思考活動の重要な契機として,抽象的・悟性的認識を,思弁的・肯定的認識へ高めるための否定的理性の働きを弁証法と呼び、これによって全世界を理念の自己発展として認識しようと試みた。~略~。」

→確か、ロースクールでソクラテス式教授法として原因と結果の間を論理でつなげ、弁論を鍛えるための方法として使っているところがあった。

この本では物事それ自身やその栄枯盛衰を理解する思考法として弁証法が紹介されている。印象に残ったところは、

・螺旋的発展の法則

→物事が発展するときは直線でなく、螺旋的に発展する。つまり、古く懐かしい物事に付加価値が加わって発展していくということ。

・矛盾の止揚による発展の法則

止揚:広辞苑によると、

「ドイツ語でアウフヘーブン。廃棄、高めること、保存することの意。ヘーゲルの用語。弁証法的発展では、事象は低い段階の否定を通じて高い段階へ進むが、高い段階のうちに低い段階の実質が保存されること。矛盾する諸契機の統合的発展。」

→全ての物事にはその内部に矛盾が含まれていて、またその矛盾があるからこそ物事は発展する。

大前研一氏も『ザ・プロフェッショナル』の経営に内包する矛盾においてヘーゲルの弁証法(止揚)例にこの発展を説明している。

人間も過去の反省から成長し、矛盾が内包されているからこそ成長するんだろうと思いました。それにしても、田坂氏や大前氏をはじめ、思考訓練ができている人は、読むべきものとして共通しているものですね。