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自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
哲学・ビジネス・雑記・洒落物など等

町田康『くっすん大黒』

2008-06-15 15:20:37 | 小説

(文春文庫)

これは分類が難しい。

話の内容はつまらぬくないが、陰気くさい。この陰気臭さを極めると面白さ、果ては笑いに代わることに読んでいて気づいた。新発見。

大黒とは、人形のことで独立(たたずかすめただけですぐ倒れる人形のこと)せず、部屋に昔から置いてあって、主人公(これはたぶん著者本人と言ってよいのではないか)がその人形のニヤニヤした面になんだかむかついて、捨てることを思いつくが、こんなものを捨てると近所のおばば共の間でよからぬ噂となると勝手に思い込んで、人がいないところに不法投棄しよう、と考える話である。

この本は、友達から借りた本なのだが、何でこの本を購入したのか今度聞いてみることにしよう。まーなんとなく、理由はパンクつながりのような気は・・・・。


藤原伊織『シリウスの道 下』

2008-05-19 22:29:54 | 小説

藤原伊織 著
『シリウスの道 下』(文春文庫)
 少年時代の友情と少年の頃の淡くて切ない恋心。
約30年後の大人になってからの様々な人生を歩んできたあとの再会。
主人公の広告代理店における仕事模様。社内の面倒くさい軋轢。
美人の女性上司。最初は情けなかったが途中から、メキメキと力を
つけていく後輩。

 最後のほうで、主人公辰村の後輩である戸塚が、クライアントに対する
プレゼン終了後に、クライアント社長のアホな質問に対し、
見事な啖呵を切るが、名場面だった、泣けた。
 

 タイトルは、子供の頃に3人で見た空に輝く星の名前。


藤原伊織『シリウスの道 上』

2008-04-30 22:49:02 | 小説

藤原伊織『シリウスの道 上』(文春文庫)

久々に小説を読んだ気がする。著者は元大手広告代理店に勤務していた。

この本の主人公も広告代理店に勤める社内では異質な中間管理職。子供の頃の忘れようとしても忘れられない過去と現在の複雑な思いが交錯する。

萩原浩『明日の記憶』の映画で、渡辺兼が広告代理店社員の主人公を演じていたことが強く脳に焼きついているからか、読み勧めている間、どうにもこうにも、常に主人公の顔に渡辺兼がイメージされた。しかもはまり役だった。

このまま下に進む。


伊坂幸太郎『死神の精度』他

2008-02-11 20:50:05 | 小説

Dvc00176 伊坂幸太郎『死神の精度』(文春文庫)

音楽好きな死神と、その調査対象になった死ぬはずの人間の会話が

面白い。

死神の特徴=ドライ、音楽が好き、サボってもいいのにサボらず愚直に役割をこなす。調査対象の生殺与奪を握っている。素手で人を触ると・・・・(ここまでにしておきます。)

人間が死ぬ確率は、死神に取り付かれようが付かれまいが、遅かれ早かれ100%。

人間はいつだって自分の死を棚に上げている。

これを書いている自分も、これを読んでいる方も100年後にはいないでしょう。楽しまないと。

伊坂幸太郎他作品

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ジョージア・サバス『魔法の杖』

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企画が凄いね。どんな状況にも当てはまりそうなコメントを考えて全ページに

のせるというのは凄い。

うそっぽくてもこういうのは友達どうしで話題になるし、口コミに乗りやすい。スゲー。

鏡リュウジって何者だろ?って思ってたらこの本の監訳やっているんですね。


大崎善生『ドイツ、もしくはある広場の記憶』

2008-01-27 17:57:22 | 小説

(新潮文庫 刊)短編集

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第一話「キャトルセプタンブル」

フランスからの帰国子女として日本の高校へ入ることになった主人公、仲間はずれにはされていないが、深い関係も築けないでいた。そんな時、ギターの音色が聞こえた。主人公には、弾いている演奏者のSOSに聞こえた。

そして二人は出会い、恋の物語はドライブする。

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Dvc00173_2 装丁が綺麗。同著者『パイロットフィッシュ』(角川文庫 発刊)


1.萩原浩『明日の記憶』

2008-01-04 16:34:24 | 小説

萩原浩『明日の記憶』(光文社文庫)

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記憶というのは自我なんだ。読んでいる途中でそう思った。

どんな人でもなる可能性がある。淡々と、時にはギャグも交えながら書かれているが、記憶がなくなるという恐怖は半端ではなく本当に恐ろしい。数十年連れ添った妻との関係が壊れていく。娘の旦那、娘の名前・顔さえも思い出せなくなる。そして徐々に自我さえ失われていく。

こんな恐怖を乗り越えるには、心のそこから愛しあう経験を共有している奥さんの存在あるいは旦那さんの支えしかないのではないか。そうした人でさえ困難なのではないかとも思う。しかし、どうしたって周囲の本当に近い存在の人しか支えることはできないだろうと思う。

自我がなくなっても肉体が存在し続ける限り、人間は生きていくことしか道は残されていない。


白石一文『私という運命について』

2007-12-24 19:04:29 | 小説

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小説の何が面白いか。風景描写ではなく、人間の感情のやり取りであるダイアログがいいものは、どれも面白いことに気づいた。

たけしが監督した映画でセリフがない映画(確かサーフィンの映画だった)があったが、これは映像で正解。

この本では、手紙がキーになっているけれど、この手紙の内容もダイアログではないがそこからそれておらず、感情の流れがあってとても興味深い。

きっと本当に大切なことは言葉では出しづらい、または伝えづらい(わりづらい)というのをどこかで知っているからだろう。または、思いを表現したその瞬間に消えてしまう言葉より、残るまたは振り返れるから書くのかもしれない。また、存在の証として世に残したいという気持ちからもかくのかな。最初にダイアログが面白いって書いておきながら矛盾しているか??

さらに著者は、男なのに女性の気持ちを(主人公は女性)見事に表現している、ように思う。

人生とは、選択の連続である。選択の連続的な結果が運命である。良くも悪くも運命である。だが、運命が先にきてはいないことに注目して欲しい。選択が先だ。そう、運命とは選択の結果である。人は「運命に身を委ねよう」、という言い方をする。しかし、それは、言い換えれば、「自分の選択の結果」に身を委ねただけだ。したがって、運命だろうがなんだろうが、その結果を引き受けるのは、当然自分である。であるならば、自らの意思で道を選択し、運命に委ねるのではなく、運命に抗おう。選択し続けよう。そう思えば、運命なんて、恐れる対象ではない。なぜなら自分で選択した結果なのだから。


五條瑛 『プラチナビーズ』

2007-12-09 20:05:28 | 小説

(集英社文庫)

 元防衛庁(現防衛省)、情報アナリストの著者の渾身の作品。慢性的な食料不足に苦しむ国民が多く暮らす朝鮮民主主義人民共和国。食糧援助は各国からなされてきたが、独裁体制が変わらぬ限り、この食料不足、飢えの問題は解決されそうにない。

 強く感じたのは、同時代をいきながらも飢餓で死ぬ、あるいは苦しむ人々がこの世界には多く存在するわけだから、毎日食べ物を口に出来ること、それ自体が幸福なこと。そう意識していれば食べ物を粗末にするようなことはないので、生きている限りこういう認識をもっていたい。


起業前夜 上 下

2007-11-21 22:27:53 | 小説

高任和夫著『起業前夜 上』『起業前夜 下』

講談社文庫

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バブル崩壊からグローバル化のなみ、そして金融ビックバン。

証券会社で働く主人公猪狩は、数十の企業を上場させた公開引受部のやり手の公開請負人。だが主幹事の座を得るために、上司の命令によって、思わぬ形で公開準備のために飲食店を経営する企業へ出向することになる。

時代に翻弄された(を翻弄した??)金融業界の中で正義を貫くことの難しさ。だが、貫くことによって得られる充実感。

思わぬ形の出向に最初は戸惑うも、通称黒豹と呼ばれる辣腕経営者と出会うことで、主人公の中で新たな価値観が醸成されていく。

一方で、金融全体を揺るがすことになる利益供与、業界全体に蔓延する飛ばし。隠れ債務の驚愕な金額が徐々に明らかになっても、何一つ手を打てない経営陣。主人公は、美人のキャリアウーマンと策定した会社再建計画をもって上司を飛び越え、会長に面と向かって直訴する・・・・。

猪狩軍団と業界からも恐れられた公開引受部の同士たちの魅力にもひきつけられる。

唯一、読後に寂しく感じられたのは主人公のプライベート、中でも特に冷たい家族。この家族像が現実として一般化可能だとしたら家族っていったいなんだろう。


9/21~『虎を鎖でつなげ』、『空のレンズ』

2007-09-24 19:08:58 | 小説

9/21 友達とDVD(ミスチル)を観ながら、聞きながら飲む。

9/22 BSフジ 台風で3日予定が1日しかできなかったという今年の嬬恋ApBank フェスを観ながら、聞きながら飲む。氷室京介が出ていて『BELIEVE』、『CALLING』が流れる。格好良い。

9/23 ◎つくばのおいしいうどん屋さんへ。肉入りうどん、カマンベールチーズ揚げ、ポテトフライ、友達は生ビ、自分は運転なのでラムネ(懐かしい味を堪能)。ここは二回目だが、最高、うどんがうまいどん。

    ◎ボーリング、前回180を越えたのでスコアが楽しみだったが、結果は90ぐらい。悲劇的な数字。

    ◎本日も飲み屋へ。今回も運転でソフトドリンクのみ。

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今週購入した本、2冊。

1.落合信彦『虎を鎖でつなげ』(集英社文庫)

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中国と台湾、さらにその周辺国の政治情勢を描く物語。城島が格好良すぎる。

AMAZON評価はあまり高くないが、城島シリーズの他の2冊、『王たちの行進』、『そして帝国は消えた』と同じぐらい面白い。卒論で中国について書いただけに、農民暴動や共産党幹部の腐敗は酷いことは周知の事実となりつつある。

身構える虎は、台湾を力ずくで統一しようとする中国の作戦、虎を鎖でつなげ、とは、その作戦を阻止するために立ち上がった2人の日本人とその片方の同胞たちの中国に対する作戦。

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2.片山恭一『空のレンズ』(講談社文庫)

 Dvc00069_1 設定から石田衣良『アキハバラ@~』にちょっと似ている気がした。


村山由佳『星々の舟』

2007-09-08 15:02:19 | 小説

p337、p406

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「赦されることを前提に謝ることを、詫びとはいわない。」

自分が赦されたい、それが前に出るような謝罪なら、いっそのこと忘れないために、一生背負って生きたほうが、きっと間違いではない。いやむしろこちらの考えのほうが正しい。

自分が赦されることでその相手を傷つけた罪を忘れるぐらいなら。


白石一文氏と乙一氏の本

2007-08-26 09:51:59 | 小説

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白石一文著 『見えないドアと鶴の空』光文社文庫

霊能あり、不倫あり、障害あり、仏教思想ありなどいろいろなテーマが上手に物語を形成して面白い。人生について考えさせられる文章が豊富。

これでこの著者の文庫については全て読んだ。長編作品は、どれもすごくいい本だった。

p130 「どんな大切な関係であっても、その大切さはそれが終わったあとでしか知れない。なぜなら全ての人間関係は必ず滅する運命にあり、だからこそ人間は常に新しい関係への期待を捨てることが出来ないからだ―」

p166「どこへ人間は行くのか。何をなすべきやということを本当に知りえたものだけがこの地上において生まれた喜び、生きていることの喜びを感ずるのです。しかもその、人生の意味を知らせてくれる真理というものは、どこにもある。道はまことに近きにある。ただ心なきものは、ちょうど匙がスープの味を永遠に知ることのないように、人生の中にいて人生の味と価値がわからないで死んでしまう。法然上人の言われた通り、月影の至らぬ里はなけれどもながむる人の心にぞ住むのです。」(もとは、友松円諦『法句経講義』(創元社から))

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Dvc00066 乙一『失われる物語』(角川文庫)

56ページに見事にまとめられた「Calling You」を読んだ。構成がうまい。

「失われる物語」喧嘩ばかりするようになった頃、僕は、トラックに突っ込まれるという事故に遭い、その結果、右腕の感覚以外全てを失った。妻は毎日先が見えぬ看病を続け、ある日から指で夫の腕をなぞり、日々の状況を右腕を通じて伝え始める。さらに妻はピアノが得意で、夫の右腕を鍵盤代わりに弾き、夫はそれを通じて、妻の愛情や自分が立たされた絶望的な状況など、それまで感じたこともなかった感情がこぼれだし、抱きしめ、苦悩し、その結果・・・・。