はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

むかし僕が死んだ家

2008-11-28 19:59:38 | 小説
むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)
東野 圭吾
講談社

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「むかし僕が死んだ家」東野圭吾

 大学に務める「私」の前に現れた元カノ・倉橋沙也加。7年前に終わった男のもとに彼女がもってきたお願いは、逝去した父の遺品の謎の鍵の用途を知ることだった。
 男ってのはバカなもので、昔の女はいつまでも自分とのことを忘れないと思っている。私もそれは同様で、ひさしぶりの再会に邪な期待で浮き立つ。人妻という垣根もあったりして、背徳感はいやが上にも高まるが、いやいやお泊りだけはしないようにしなくてはとあれこれ気を使ったりする30ウン歳。
 そんなこんなでたどり着いたは別荘地。地元の人間でも難しいようなわき道を通った先にあるのは無人の洋館。正面の玄関は締め切りで裏口からしか入れず、調度品の古さもまちまち。いやさそもそも、近辺住人の誰1人としてここに人が住んでいたのを記憶していない……。
 洋館の謎を探るうち、私は沙也加の特殊な境遇を知ることになる。小学校より前の記憶が1ミリたりとも存在しないとか、したくないのに我が子を虐待してしまうとか、それら陰惨たる事実が洋館の遺品と結びついたとき、そこには驚くべき過去が待ち構えていた……。

 外れ知らずの東野圭吾。90年代半ばの作品。
 郵便すら来ないような無人の洋館。天気も悪く日も暮れて、一層寂寥感の増す中に2人きり。そんな状況だけでも怖いのに、同じ時間で止められた時計や置き忘れられた(?)財布、書きかけの日記といった不気味な遺品があわさって、ちょっとしたホラーみたいになっている。
 状況作りで一本。後半一気の謎解きも読み応え充分。さらに張った伏線をすべて回収して、切ないラストに収束させている。お見事。

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