深紅 (講談社文庫)野沢 尚講談社このアイテムの詳細を見る |
「深紅」野沢尚
修学旅行先の旅館で楽しい小学生時代のひとときを過ごしていた奏子は、父母に弟2人、一家丸ごとが凶漢に惨殺されたことを知らされる。
親戚に引き取られ、無難に中学高校を卒業し、大学まで進んで優しい恋人も出来た奏子。しかし心には癒しがたい大きな傷が刻まれたままだった。凶漢の死刑が確定しても、なんの慰めにもならない。家族はもう戻ってこない。
そんな折、ふとしたことから凶漢の娘・未歩の存在を知った奏子は、衝動につき動かされるままに未歩に会う。
自分の本当の名を隠したまま未歩と友人になる奏子。彼女の本当の狙いは? 心の奥底に秘められた願望の正体は?
ヒットメーカー、野沢尚渾身の一作。
一家殺人の被害者の娘が加害者の娘に出会う。なんというインパクトだろう。本当に、それだけで読む価値はあるのだが、主人公の心理描写や、中盤からラストまでの怒濤の大展開が素晴らしい。とくにラストシーンの描写の切なさと悲しさは、ちょっとここまでのものは他に思いつかない。小説で泣いたのもひさびさのことだ。実に深い一冊だった。
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