はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

RENT

2007-08-26 19:49:25 | 映画
 自分しかない 今しかない
 後悔してると人生を逃してしまう
 他に道はない 方法もない
 あるのは今日という日だけ

「RENT」監督:クリス・コロンバス

 52万5600分。それは一年を分で計算した数字。1989年12月24日のクリスマスイブ。ニューヨークのイーストヴィレッジのとあるアパートメントでは、元ロッカーのロジャー(アダム・パスカル)と映像作家志望のマーク(アンソニー・ラップ)が、家主から滞納している家賃(レント)の支払いを要求され困り果てていた。家賃なんて払わんぞと気勢を上げてみても、代替わりした家主ベニー(テイ・ディグス)の圧力は強いし、夢がかなうどころか今日の飯代にすら事欠く自分達のお先はまさに真っ暗。時に酒に酔い、見通しの立たない未来や悔やんでもどうにもならない過去を思ってはため息をつく。
 しかし根が明るく陽気なボヘミアン・イーストヴィレッジの芸術家連中。元MITの講師コリンズ(ジェシー・L・マーティン)やドラッグクイーンのエンジェル(ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア)。ヌードダンサーのミミ(ロザリオ・ドーソン)。パフォーマーのモーリーン(イディナ・メンゼル)と、その彼女にして優秀な弁護士のジョアン(トレーシー・トムズ)なども加え、決して暗くなりすぎることはなく、絶望の泥沼に片足突っ込みながらも能天気で奔放な日常を送っていた。
 死んでしまった昔の恋人の亡霊を跳ね除け結ばれたロジャーとミミのHIV感染者カップル。コリンズとエンジェルのHIV感染者+ゲイカップル。性別の境を越えて結ばれたモーリーンとジョアン。マークにいたってはモーリーンが行った過激な政治ライブのドキュメント映像が認められ、映像業界への道が開かれ、といいことづくめ(?)。しかし世の中うまくはいかない。当然の如くそれぞれに死期は近づき、そのために気持ちは乱れ、あれほど仲の良かった彼らの関係は千々に切り裂かれ遠ざかっていく……。
 1996年の初回公演前に急逝したジョナサン・ラーソン(原作・作詞・作曲・脚本)の存在と、その観客への訴求力により脅威のロングランヒットを記録した伝説の舞台を映画化したもの。貧困と病魔。ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、HIV感染にドラッグと様々なものに蝕まれた若者たちの「ある一年」を生きてゆく姿が印象的だ。小さくて頑丈な箱の中で窒息死するのを待ちながら見る夢。その儚さと甘美さ、残酷さが、きっと多くの人の心をとらえて離さないのだろう。一本筋の通った良い映画だ。

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