はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

Xの螺旋

2011-10-14 10:27:27 | 小説
Xの螺旋 (徳間文庫)
クリエーター情報なし
徳間書店


「Xの螺旋」柳原慧

 白血病を患う女性患者の体から、突如有毒性のガスが発生。医療スタッフがばたばたと倒れていく中、主治医の剣持は、患者の胸部に手をかける。が、ツンとした刺激臭に襲われ、彼までもが意識を失って……。
 薬物テロのような大事件だが、奇跡的に1人の死者も出なかった。患者自身を除いては。
 原因不明の事件の真相を探るべく、微生物学者の森村菜々は、剣持、ジャーナリストの山南らと共に、事件の暗い闇へと一歩を踏み出した……。

 炭疽菌、タリウム、サリン……形状、種類は問わないが、世の中に、薬物テロの例は数多い。しかも種類が特定できなければ発見自体も容易ではないのが質が悪い。極端な話、二酸化炭素の濃度を濃くしただけでも人は死ぬし、カフェインだってとりすぎれば死に至る。問題は、それを扱う人間にある。
 本作は、ガスの種類も、犯人像もまったくわからないところから始まる薬学ミステリーだ。未知の細菌とか、異国の辺境の村での大量中毒死とか、興味深いキーワードが目白押しだった。
 問題があるとすれば視点のブレ。主人公の菜々以外に剣持と山南の視点があるのだが、視点変更が多くて読みづらかった。菜々(8割)と剣持(2割)ぐらいで良かったのではないだろうか。落ち着かなかった。
 あと、この3人は同じ研究室にいたらしく、薬学に関する知識をあらかじめ持っているのだけど、一人くらいはずぶの素人を混ぜたほうがよかったのではないだろうか。それだけで、もっと効果的な説明ができたはず。特別わかりづいらいわけではなかったけど、もうちょっと、ね。
 ラストは拍子抜けだった。例のブツも、犯人も安易な扱いで、肩透かしをくらった気分。そこまでは面白かっただけに残念。
 川端裕人の傑作「エピデミック」を頭に置きながら読んだというのもあるけどね。それでハードル上がったかな?

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