「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

後藤健二さんの死から私たちは何を学ばなければならないのか(その1)

2015-02-01 23:51:07 | 危機管理
後藤健二さん殺害の報に接し、謹んでご冥福をお祈りすると共に、
ご家族に心からのお悔やみを申し上げます。

後藤さん(と湯川さん)の拘束映像が流れてから、
かつて国際関係論を学び、また防衛庁(当時)の研究機関に勤めていた者として、
この問題について何を言えばよいのか、ずっと考えていた。

その際、我が身に言い聞かせていたことは、
人質解放に向け関係者は必死に活動しているであろうから、
(現在進行形のうちは)「岡目八目」「床屋政談」のようなことは言うまい、
ということであった。

不幸な結果が出てしまった今、その戒めを解いてもよかろう。
ただ、以下に記すのは疑問でしかなく、「旅の坊主」に答えを出す力はないのだが。

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論点1 なぜ、安倍首相は、イスラエルの地で「日本は中立的な立場だ」との宣言をしたのか。
その意図は何か。外務省はそれをなぜ止めなかったのか。

イスラエルについてのガイドブックを読めば誰でもすぐに分かる話だが、
「パスポートにイスラエル入国のスタンプがあれば
他のアラブ諸国から入国を拒否されることがある」と書いてある。

(ちなみに、「旅の坊主」がイスラエルを訪ねた時は、
帰国までに経由するアラブ諸国は穏健派のエジプトのみで、
かつ、パスポートの期限切れが近く、期限切れの前に他のアラブ諸国に行くことはない、
との判断で、普通に入国スタンプを押してもらったのだが。)

イスラエルに入るということ自体、アラブの世界では中立とはみなされないということは、
地球の歩き方の読者レベルでも常識だろうに、と思っていた。
外務省がそのことをわかっていないはずがない。

そして、ここは想像だが、「日本人二人が人質になっている」との情報が
外務省に入っていなかったとは思えないのである。

とすれば、この「ご本人としては中立と言いたいのだろうが、
客観的には誰がどう見ても中立とは受け入れられない」首相の記者会見を、
事務方として、なぜやってしまったのか、なぜやらせてしまったのか。
その思いが否めない。

「強行した場合、彼らにつけ込まれる口実を与えかねないのですが……。」
程度の意見具申が出来ないような組織であるならば、それは相当の危機的状況。
しかし、「官邸からの圧力でどうしてもエルサレムで記者会見を設定せざるを得なかったのだ……。」
というならば、まだ同情の余地がない訳ではないが……。

それとも……。
そのようなことは「百も承知、二百も合点」、つまりは織り込んだ上で、
「ご主人さま」に、「私達は中東の一部でも貢献しますのでどうぞよろしくお願いします」
そういうメッセージを伝えたかったのだろうか……。

「テロリストを決して許さない」との言説で誰を排除しようというのか。
誰を「敵」として位置づけようとしたのか。

「国際社会と連携」という言説で一緒に組んでやろうという相手が誰なのか。
その結果、(国際益なる抽象的なものではなく)どのような国益を得んがためであろうか。

疑問しか浮かばず、答えを持っている人とは接しようのない「旅の坊主」ではあるのだが、
ともあれ、しっかりと目を見開いて見極めなくてはならないことだけは間違いない。

論点2以降は、改めて。


1 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-02-03 06:48:05
安倍首相はパレスチナも訪問し、イスラエルの入植活動を明確な「国際法違反」と非難しておりますので、アラブ世界からも好印象を持たれています

安倍首相「入植政策は国際法違反」イスラエル紙に寄稿
イスラエルを訪問中の安倍晋三首相は地元紙「イディオト・アハロノト」(19日付)に寄稿し、イスラエルが推進するユダヤ人入植(住宅)地の建設について「国際社会が国際法違反とみなす」ものだとして、改めて見直しを求めた。(毎日新聞)

ISIS相手に中立はありえません
純粋な人道支援さえ、彼らにとっては敵対行為ですから
ISISと、他の一般のイスラム教徒を同列に語るのは、一般のイスラム教徒にとって非常に失礼かつ、差別に繋がります
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