<たつの市遠望>
だらだらと続く長い石段を登り切り、
やっとの思いで野見宿禰神社(陵墓)の前に立つと、
そこはやはり神社というより、
人が葬られた古墳という表現が相応しい場所でした。
聞くところによれば、この地が野見宿禰の
陵墓の比定地となったのはごく近年のことで、
古墳内にどのような人物が埋葬されているのか、
はっきりとはわからないのだそうです。
恐らく、たつの市の全景を一望できるこの場では、
かつて野見宿禰とも縁する土地の有力者が
「国占め」を行い、ご神体山である
的場山に向かって祭祀をしていたのかもしれません。
ちなみに、野見宿禰が考案したとされる「埴輪」ですが、
実際に葬儀での使用が一般的になったのは、
もっと後の時代だという話もあります。
ゆえに、野見宿禰が埴輪を造ったという確証はないものの、
野見宿禰という人物が、強靭な身体能力と
前衛的な知識を有していたことは事実でしょう。
プチ登山の唯一のご褒美ともいえる、
山上からの眺めを堪能しながら、
相撲取りでもあり呪術者でもあった
野見宿禰が果たそうとしていた目的、
そして「埴輪」という不可解な焼き物について
つらつらと想像していると、ふいに頭の中に
「ある焼き物の産地」が思い浮かんでまいりました。