昨日、終戦75年の節目の年を迎え、東京の日本武道館では政府主催の「全国戦没者追悼式」が行われた。
天皇陛下は、お言葉のなかで「深い反省」を述べられ、終戦後の天皇の戦争に対する反省の意を継承した。
ただ、誰に対して反省するのかについては、明言を避けてはいるが言外に「周辺諸国」や「国民」に対する言葉であることは察せられる。
安倍晋三首相は、第二次安倍内閣発足以来、「全国戦没者追悼式」の挨拶で「反省」や「お詫び」と言った言葉はいっさい語らず、今回についてもまったく触れることは無かった。
今回、例年の挨拶に加えたのが「積極的平和主義」という得意の一節だ。しかし、安倍首相が語る積極的平和主義は、集団的自衛権を容認する「安全保障法制」制定の目的に使われたことは記憶に新しい。
天皇陛下が述べた「深い反省」が誰に向かって言われたのかあいまいな点があるのも、安倍首相の言葉とバランスを取らざるを得なかったように思われお気の毒に思う。
しかし、天皇の「深い反省」という言葉は、戦争で多くの被害を被ったアジア諸国では好意的に受け止められている。
反面、安倍首相がいっさい戦争についての「反省」「お詫び」に触れないことは、1995年の50周年記念式典の際の「村山談話」が変化したと受け止められている可能性もある。
安倍首相は、いつまで「お詫び」するのか際限が無い。と独自の判断をしているかも知れないが、アジア諸国民の心の中は見透かすことはできない。
特に、安倍首相になってから「お詫び」などがないため感情的な側面で外交が滞っているのが中国、韓国、北朝鮮ではなかろうか。
中国とは経済的な利害関係から何とか正常化に向けて歩み寄ってはいるが、韓国とは慰安婦、徴用工、経済問題で泥沼状態になっている。
また、北朝鮮とは会話が途絶えてから長い空白ができ、拉致被害者の帰国についてまったく糸口も見出すことができない。
このような近隣諸国との外交改善が進まない根本的な原因は、やっぱり、日本の首相が戦争責任について、あいまいな態度を続けているためということは間違いない。
安倍首相の任期は来年の9月なので、このままでいけば来年の「全国戦没者追悼式」も安倍氏が同じようなあいさつすることになる。
安倍首相はもう諦めて、次の首相には、素直に戦争についての反省を世界に語れる人物が就くことを望むしか道はない。「関連:8月15日」