広島は6日、75回目の原爆の日を迎えた。広島市中区の平和記念公園では、市主催の「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が開かれ、被爆者や遺族、安倍晋三首相ら785人が参列した。
松井一実市長は平和宣言で、日本政府に「世界中の人々が被爆地広島の心に共感し『連帯』するよう訴えていただきたい」と要請し、核兵器禁止条約の批准を求めた。
式典には、83カ国と欧州連合(EU)の代表が参列。原爆が投下された午前8時15分には、マスクを着用した遺族代表らが「平和の鐘」を打ち鳴らし、1分間の黙とうをささげた。
松井市長は宣言で、新型コロナウイルスの脅威を乗り越えるためにも世界が連帯する重要性を強調。今の平和な広島があるのは先人が苦難に立ち向かった成果とし、「これからの広島は、世界中の人々が核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて『連帯』することを市民社会の総意にしていく責務がある」と訴えた。
世界の指導者に対しては、核軍縮への建設的対話を継続し、核に頼らない安全保障体制構築に向け全力を尽くすよう求めた。
安倍首相はあいさつで、「非核三原則を堅持し、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取り組みをリードする」と述べた。(JIJI.COM参照)
松井市長が安倍首相に求めた核兵器禁止条約について日本はまだ加盟していない。この条約は2017年7月7日、国連加盟国の3分の2を超える122か国の賛成で採択された。
現在、正式に参加を署名したのは82カ国、その内、批准したのは40カ国であと10カ国が批准すれば発効することになる。
世界で唯一の被爆国である日本が参加していないことは、他の非参加国の参加促進に大きな影響を与えている。同時に、核兵器禁止運動を進めている多くの国から不信感を持たれていることは間違いないだろう。
日本政府の考え方は、日米安保条約によってアメリカの核の傘の下に守られている日本が、禁止条約に参加する分けにはいかないというのが本音だ。
また、アメリカ、ロシアなど核保有国が加盟していないので、核兵器禁止条約が発効しても実行に移されないというのが正式な理由になっている。
しかし、現在、安保理常任理事国5か国と、イスラエルなど4か国の9カ国で約1万4500発の核爆弾を保有していると見られる。
その内大半を占めているのがアメリカとロシアだが、この両国による新戦略兵器削減条約(新START)はトランプ米大統領下で有名無実化の危機にさらされている。
米中の対立、北朝鮮、中東情勢の緊迫化などにより、核使用の危険性は皆無ではないと見られている中で、被爆国日本の存在感がほとんど感じられていない。
今日、広島の被爆75周年の日は、世界で、改めて核兵器の恐ろしさを認識し、決して使用してはならないという誓いを核保有国に確認させる日にしなければならない。「関連:2009年8月6日」