DREAM/ING 111

私の中の「ま、いいか」なブラック&ホワイトホール

村上春樹★アフターダーク

2007-12-11 | 


~ そいつはいろんなかたちをとる。国家というかたちをとるときもあるし、法律というかたちをとるときもある。もっとややこしい、やっかいなかたちをとることもある。切っても切っても、後から足がはえてくる。(中略)そいつはね、僕が僕であり、君が君であるなんてことはこれっぽっちも考えてくれない。そいつの前では、あらゆる人間が名前を失い、顔をなくしてしまうんだ。僕らはみんなただの記号になってしまう。ただの番号になってしまう」
P142~P143

「僕が言いたいのは、たぶんこういうことだ。1人の人間が、たとえどのような人間であれ、巨大なタコのような動物にからめとられ、暗闇の中に吸い込まれていく。どんな理屈をつけたところで、それはやりきれない光景なんだ。」
P145



打ち合わせと実査で、外出が多くなると、
時間調整で、外で本を読む時間が増えます。
で、思うのですが、村上春樹の本は
外で読むほうが精神衛生上よい気がします。
や、偶然、これがそういう作品なのかもしれないけれど。

「ねじまき鳥クロニクル」である種の蜜月が終わり、
あまりの評判につい手を出した「海辺のカフカ」では、
2度と復縁はないのだと思い知り、
でも「東京奇譚集」で、あぁ、やっぱり好きなのかも?
とか勝手なことを勝手に思い・・・
「走ることについて語るときに僕の語ること」では
あなたも私も年をとっていくのだなぁ、
と感慨深く感じたりして・・・


「アフターダーク」はアフターカフカだったので
まったく読む気がしなかった記憶があります。

で、ざっと書評をさらうと、カフカファンには不評らしい。
こんなに毎回書評が割れる作家も少ないようにも思いつつ。
(影響力と人気の関係もあるのでしょうが)
・・・私はずっと好きです、この作品のほうが肌に合う。

作品の中に、見ると100%確実に睡魔に襲われるので有名な(あっしだけ?)
ゴダールの『アルファビル』がでてきて、それなりにびっくり!
で、登場人物の1人がナルコレプシーっぽく描かれていて
そういう個人的キーワードの合致もまた、なんともくすぐられてしまいました。

誰もがそれぞれに闇を抱えている。多かれ少なかれ。
そして誰にも誰かの本当の闇なんて、見えない。
でも暗闇の中でそばにいることはできる、そんなお話かな、と。

というわけで、ひさびさ、
わい雑で、でも手を伸ばしたら感じることができそうな
誰かの記憶のような、寄り添うあたたかさのような、
底が見えない人知を超えた怖さのような、
そういう奇妙な都会の闇を味わっています。

・・・誰かの闇を測れる&そして自分だけは裁ける気になる、
それは本当は人の闇の深さに気付いていない人間だけなのかも・・・。


関連:
村上春樹★走ることについて語るときに僕の語ること
村上春樹★東京奇譚集
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
文庫の「東京奇譚集」よろしく。 (eno)
2007-12-14 21:00:50
「東京奇譚集」の表紙の猿を描いた榎です。
絵も気に入ってもらえると嬉しいです。
(´・ω・`)ノENOKI
返信する
eno様 (なる@)
2007-12-15 01:56:34
ようこそ〜♪創作者からのコメント、
サプライスドでとっても嬉しいです。

文庫本、書店ですごくいい感じに目だっていますよー!
作品の持ち味を凝縮されているように思いました。

絵ノローグにもお邪魔しましたが
うるしや他の数々の作品、とっても素敵でした!(猫ちゃんも可愛い♪
機会を見つけてぜひ実物を拝見したいと思います。
ご訪問、ありがとうございました。
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