鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

ぼくの帰る町

2017-10-21 00:06:56 | フリーゲーム(ノベル)
「ぼくの帰る町」
ノベル・アメリカ映画風・スタンドバイミー
制作者:長根様(ナガネギ舎

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学校でも家でも苛められ、いつも殴られているマック。
学校が長い夏休みに入ったその日も締めくくりとばかりに殴られて、ついに我慢の限界に達した彼は、誰もいなくなった後、「あいつらなんて殺してやる!」と口にする。
そこへ、ふいに現れた少年セオドアは、軽い口調でマックを宥めたあと、その殺人計画に自分も協力すると申し出た。
そこにどんな思惑があるのか、なんのためなのか…本心を見せないセオドアのペースに巻き込まれるようにして、マックは穴だらけの殺人計画を練り直し、準備を進めてゆく。



水彩っぽい塗りの、美麗なグラフィックで語られるのは、アメリカの田舎町?を舞台にした、少年たちの青春物語。
この方の前作も、少年同士の友情をテーマにしたものを作られていて、それも雰囲気がかなり良かったんですよね。
スタンド・バイ・ミーの雰囲気が好きな方なら、きっとこの作者さんのゲームは好みだと思うな。

淡い色彩のグラフィックはふわふわして現実感がなく、彼らの「計画」すらもどこか架空のもののよう。
なんとなく、この物語自体が誰かの過去の回想か、思い出のようにも見えて、どこかノスタルジック。
シナリオそのものは「殺人計画」に沿って進んでいくんですが、セオドアとマックの少年らしい会話や、アメリカンなジョークを交えた軽口が心地よく、ハートフルな仕上がりです。

いや、子供の世界って過酷だわあ…自分の力で生きていけないうちは、与えられた環境にしがみついて順応して、必死に大人になるしかない。
そして、マックとセオドアは、ちょうどティーンエイジャーにさしかかる年頃で、ただ泣いているだけの子供ではなく、さりとて、自分でなんでも決められる大人でもなく。
まだまだ「作りかけ」の心と体でなんとか現状を変えようとあがく姿が、時に強く頼もしく…また時には哀しくも見えました。

最終的に、彼らが現実と、どうカタをつけていくのか…
その答えは、皆さんが自分の目で確かめてみてくださいな。



なにしろ、物語は夏休みの…ほんの短いインターバルの中の出来事です。
この休暇が終われば、もしかしたら、また打ち伏せられて絶望するときもあるのかもしれない。
けれど、それを一緒に受け止められる誰かが、そばにいてくれるなら…もしかしたら?

セオドアとマックの友情に幸あれ。
とても、読後感の良い物語でした。お勧めですよ~



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