鼠喰いのひとりごと

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霧の村

2018-05-12 09:13:40 | フリーゲーム(ファンタジー)
霧の村
アクション探索ADV・逃げあり・プレイできる映画
制作者:oo-heppo様

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父と二人、船に乗ってこの国を出るために旅をしてきたエクアリナ。
しかし、途中の宿屋で、近くの山にかかっていた霧が晴れた時、父は一人でその山に登ると言い出しました。
実は、この山の上には父の生まれ育った村があり、そこには息子…エクアリナの兄がいると言うのです。
そういう事情なら、と、エクアリナは一人宿屋で待っていましたが、やがて天候がくずれて雨が降ってきたのを見て、心配のあまり、後を追って山に入ります。
しかし、そこで見たのは、崖から落ちて血塗れで動けなくなっている父の姿でした。

霧が出ると身動き一つままならない崖の道。
夜になれば、人を襲う山犬が出る、恐ろしい山。
徐々にたちこめ濃くなりだした霧に、父は自分を見捨てて村まで急げと訴えます。
置いては行きたくない、けれど、自分一人では、大怪我した父を運ぶことはできない。
混乱しながらも、村で助けを呼んでこようとエクアリナは山道を急ぎ走りました。

霧で道が完全に閉ざされる頃に、やっとたどり着いたその村は、自分たちの住む場所を「聖地」と呼ぶ、火を崇める特殊な宗教を持つ人々が住んでいました。
穏やかな人々は礼儀正しくエクアリナを歓迎し、再び霧が晴れ山を下りられる日まで、ここで客人として過ごすことを許してくれました。
もう助けに戻ることもできない父を想い悲しんでも、エクアリナには他にどうする術もありません。

エクアリナはこの村で、これからどんな日々を過ごすのでしょうか。
「村では絶対に自分のことを話すな、兄も探すな」
という父の最後の言葉は、果たしてどういう意味なのでしょうか…




と、いうわけでー、カルトな村に一人迷い込んだヒロインが、自分の兄を探して暗躍する話です。

グラフィックもご覧の通りのリアルさなんですが、作中の人物のキャラづくりがまた、やけに現実的で!
複数の人間の思惑が絡んだ、甘すぎず苦すぎず…のドラマチックなシナリオになっております。

最初に注意書きが出てきますが、画像的には、そんなに怖い部分はないんですよね。
(最初の父親の血塗れの姿くらいですかね?ビジュアル的にやや怖いのは)
ただ、それ以上に、過去の出来事や一部のイベントで、倫理的にショッキングなシナリオ展開がありますんで…そういったものが苦手な方は覚悟のうえでプレイしてください。


主人公のエクアリナちゃんは勇敢で、物怖じしない性格の良ヒロイン。
自分からどんどん動いていく、かっこいい女の子でした。
明るく強く、いつも前向きの、まさしく主人公にふさわしいキャラだったと思います。どんとこい!

他のキャラはそれに比べて、癖がある…というか、けっこう見ていて「これはないわー;」という気分になる人が多いんですけど。
しかしですね。むしろこのゲームの凄さは、それらのキャラのリアルな性格設定にあるように思います。

特に複雑だと思ったのは、婿候補?のクリスくん。
善良だけれどヘタレな性格で「聖地」のルールを一切疑わずに生きてきた彼は、エクアリナにもそれを当然のものとして守らせようとします。
決して悪人ではないのですが…「言われたことを自分で考えることなく、そのまま信じている」せいか、言動がとても薄く感じるんですよねぇ。
エンド近くでは、エクアリナとのアレコレで成長?し、彼なりの決断や勇気を見せてくれますが…
心が弱いのは、それだけで一つの罪なんじゃないか?と考えさせられるキャラでした。

ちなみに、彼のご両親は、ラストまでいい人だった…
あまりにも良い環境に置かれると、かえって子供は成長できないもんなのかな?

酒場のマスターは、逆に聖地の問題や思想の偏りを知っていながら、それに従っている人。
ルールに逆らうことなく一定の距離を置きながら「自分ができることだけをやる」在り方の人です。
暴走気味な主人公にいろいろ教えてくれて忠告もしてくれる有難い人ですが、大人であるゆえの分別は、冷たく感じる部分も。

ほかにも、醜いものにふたをして、とにかく、今をやり過ごせばそれは平和であると考える人。
自分の境遇に不満を抱き、それを目下のものにぶつけることで晴らす人。
多くの人間関係の鎖に縛られて、身動きできないまま諦めて生きてきた人。
突然やってきて特別扱いを受ける人間に反感を持つボス的な少女と、それに進んで迎合する子、逆らえずに従う子。
噂話に惑わされ、急に態度を変える多くの人々…と。

あー、こういうの、あるあるあるーーー
と言いたくなるような、とても普通の人々の姿がテンコ盛りです。
見ていて、自分にも通じるところ…理解できるところがあると余計に『うへぇ』と思ってしまいますね~


人が集まるところには「場」ができて、そこだけのルールや雰囲気や、暗黙の了解ができてしまう。
作ろうと故意に思っていなくても、自然とそうなってしまう…ものなのかも。
群れて生きるのは人間の本能で避けられないことだけど、願わくば、このゲームに出てくるような集団の持つ圧力や、それ以外のものへの鈍感さ、を自分が行使することがないよう、気を付けていきたいものだわ…



さてさて、気になるアクション難易度は、やや高め!
作者さんは「よほど苦手な人でない限り、何回かやればクリアできる程度」と書かれていますが…
「よほど苦手な人」の私の場合、一か所の逃げに、大体20分~1時間ほどかかっております。
前半は人に話しかけて話を進めるADV要素が強いんですが、4日目~5日目くらいはもう次から次へとアクション要素が入ってくるので、私と同じタイプのゲーマーの人にはツラいかもしれないね…

苦戦したのは、穢れの道で山犬から逃げるところ、崖の道である人物に追いかけられるところ、村人たちから逃げて穢れの道に向かうところ、ラスト付近で落石の中をゆっくり逃げるところ。

…途中の障害物にさえひっかからなければ、案外余裕がある難易度…なのかもしれないんですが。
見えててもわかっていても引っかかる、それがアクション下手というもの!
…特に後半、追手や岩が一緒の画面でウヨウヨ動くと処理落ちしちゃってね…
キーの反応悪くて余計に難しかったです。

あと、画面切り替え処理が遅めなのに比べ、追手が出てくるタイミングが早く感じますかね。
そこの一瞬で油断して捕まって死ぬこと多かったっす。
画面切り替えの時は、ぜひとも方向キーは押っぱで!!

また、後半は「火打石」を使ったアクションが出てきます。
複数の灯明に時間内に火をつける、というイベントでは、基本・一発で火をつけられないと間に合いません。
案外これが…難しい; 
ふふふ…アクション下手はリズム感もないんですよ…orz
(昔リズ天プレイしてめちゃめちゃ苦労した思い出が…)

しかし、そんな苦手なアクションイベントをひたすら粘ってクリアしたのは、ひとえに「先が気になる」話だったから。
無事、エンディングを迎えられた時は感無量でしたよ!
…これ、アクション下手用に、EASYモードを作ってくれたら嬉しいなぁ…



最初、リアルめなキャラグラに、最近にしては珍しいな?と思いましたが、プレイ後にはむしろ、このシナリオには二次元な漫画絵はつけられないな、と感じました。
シナリオが濃くて面白い話だったので、興味を持たれた方はぜひぜひプレイしてくださいませ。

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