鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

エンドロール

2016-06-04 20:50:16 | フリーゲーム(ホラー)
「エンドロール」 ほのぼのの皮を被った鬱ゲー・
制作者:せがわ様(公式サイト


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最初にゲームを始めたとき、前作「ミノニヨク」をプレイした方なら、
あ、雰囲気似てる、って思うのではないでしょうか。
しかし…しかし、油断してはいけません。

「では、レッツ、ハッピードリーム!」

毎回言われるこの、かるーい言葉。
話が進むにつれ、どんどん、どんどん、重く感じてきます。

あかるい色彩、あたたかな人々、やさしいやさしい夢の世界。
しかし、内容はものごっつい鬱ゲーでした…やられた…やられたわ…orz

プレイしていて、一番打ちのめされたのは、主人公がまだ子供だってとこですね。
話が進むと、彼がなぜそうなったのかもわかりますし、
自分で望んで「イカレ野郎」になったわけではないこともわかってくる。

けれど…この物語は「エンドロール」
流れる文字の背後に、細切れに表示される回想シーンと同じこと。
全てはもう、終わってしまって、取り返しがつかない…

トゥルーエンドを迎えたプレイヤーはみな、最後に思い知るでしょう。
このゲームを開始した、その時にはすでに、変えられるものなど何一つなかったのだと。

ある意味「終わらない物語」だったミノニヨクとは、対極のゲームでした。

うう…シナリオの組み立てとしては見事だと思うけれど…
プレイ後の、この絶望をどう処理すれば…;

ここはひとつ、「ミチビキ」さんに来てもらって、
ラッセルくんをミノニヨクに連れて行ってもらおう、そうしよう。
何も自覚することなく、あの町で、ずっと幸せに暮らしたらいいよ。

後日追記:

 やりこみやってまーす。2周目でなんとか隠し?キャラを仲間にできました。
 たぶん他世界も全部オープンした…と、思うんだけど…?
 情報屋から行くやりこみステージの最後がすごかった……さすが絶望系…
 まさかこんなところでまでオトされるなんてorz
 でも、2周目はなぜか海底ホテルのワープポイントが最後まで出現しなかった…
 行くのが早すぎたのかのう。

 2周目やって思ったこと。
 このゲームの何がここまで心に残るのかって、
 最初から最後まで、プレイヤーの価値観を定まらせることなく、
 揺すぶり続けるところなのかもしれないなと。

 「でも…」「だけど…」「だからって」「しかし…」
 てな感じで、終始、善悪や正誤の視点をぐらぐら行き来して、
 落ち着かないったらありゃしない。
 白黒どちらにも傾けないまま、言葉にできない「何か」を
 ただただ、プレイヤーの中に蓄積していくような…そんなゲーム。

 ゲームに限らず、本でも漫画でも、印象に残る作品は、
 それを見たものの心を、どれだけ動かせるかにかかっているような気がします。
 別に恐怖や悲しみでなくてもいい。
 爽快感でも、ときめきでも、達成感でも、感動でも。

 そういう意味では、せがわさんのゲームはいつも、長いこと心に残ります。


ラッセルくんの年齢は本当に絶妙でした。
実際、子供育ててて思いますが、中学生くらいまでって、
まだまだ人真似子猿なんですよね。
彼らを構成するすべては、周囲の大人の価値観や、読んだ本、漫画、
映画、今まで見たもの聞いたもの…からの借り物で、
それら全てを吸収してバラして組み立てて「自分」を作っていくまっ最中。
思いやりや、優しさも、もともと備え持ってるものじゃなくて、
周囲の誰かの行動を見て、あるいは自分が与えられて、初めて学び覚えるものだったり。

その「自分を組み立てる」過程で、マトモなパーツを与えられないまま育った子供。
14歳は、まだ周囲に責任を求められるギリギリの年齢だった…んじゃないかなと。

…どんなに悲惨な育ちだったとしても、大人には年相応の責任がありますからねえ。
30過ぎた犯罪者が、自分がこうなったのは親や世間のせいだ、って言っても、
ちょっと同情できないでしょ?