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歴史秘話 習志野の“フランス兵”

2023-10-10 17:52:12 | 俘虜収容所

習志野の“フランス兵”

 

 久しぶりに、ドイツ捕虜研究者のHさんを訪ねてみました。以下、編集部でうかがったお話です。

アルフォンス・ドーデの「最後の授業 La Dernière Classe」

アルフォンス・ドーデの「最後の授業」というおはなしがありました。昔、国語の教科書で読まされたように思います。

フランスのアルザス地方に住む少年は、今日も学校が嫌で遅刻します。てっきり先生に叱られると思って教室に入ると、先生は怒らず、早く座れと言います。先生は、戦争でフランスが負けた結果、この村はドイツ領になり、フランス語で授業をするのはこれが最後なのだ、と言うのでした。先生は最後に、黒板に「フランス万歳!」と大きく書くと泣き伏してしまったのだった、といった物語です。

陸続きのヨーロッパでは、そんなことがあるのだなと思ったものです。

ドイツ領になったり、フランス領になったりの「アルザス・ロレーヌ地方」

 この物語は普仏戦争(1870~71)でアルザス地方(もう一つロレーヌ地方というのがあり、二つ合せてアルザス・ロレーヌ Alsace-Lorraine 地方と呼ばれます。なおドイツ語では、エルザス・ロートリンゲン Elsaß-Lothringen といいます)が負けたフランスからドイツに割譲されたときのものです。その後、第一次世界大戦では、負けたドイツから再びフランスに返され今日に至っています。

この地域、実は習志野と深く関わっている

ところで習志野は、実はそのことに深く関わりがあるのです。

ドイツが負けてアルザス・ロレーヌはドイツ領からフランス領になったため、ドイツ兵として戦ったアルザス・ロレーヌ出身者は戦勝国フランスの国民としてすぐに故郷に帰れた、というややこしいお話

こちらは「歴史写真」という月刊グラフ雑誌の、大正8年7月号(国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できます)の中の一ページです。

最近解放せられんとするアルサス・ローレン 二州出身の独逸俘虜」とあり、日本の女性が大きなやかんを持って、ドイツ兵の水筒に水を入れてやっているのを、集まった一同が笑いながら見ている場面です。日本の衛兵も微笑を見せています。

解説文にはこうあります。「講和会議の項目中には普仏戦争に於て独逸(ドイツ)が仏蘭西(フランス)より奪取したるアルサス・ローレン二州を此のたび仏国に返還することを議定してある。此の一事は既に独逸も充分承認の意向を示しているので、青島(チンタオ)戦役に於て我国に俘虜とした右両州出身者百二十余名を仏国大使の斡旋にて近く解放することになり大正8年6月上旬全国各地に分居している該俘虜を一先ず習志野収容所に集合せしむることとなった。写真は広島県下似島収容所に居たベルシャンヂレン外15名が6月3日午前七時東京に到着したる光景であるが、一行は何れも戦役当時支那内地から召集された予後備兵で35歳から50歳位までの老兵許(ばか)りであった。」

 前年11月に大戦が終り、ヴェルサイユ講和条約の中でアルザス・ロレーヌ両州はフランスに返されることになりました。そこで日本各地の収容所にいる両州の出身者を習志野に集め、東京のフランス大使館に引き渡して早く帰国させようというプロジェクトがあったのです。

 習志野収容所に全部で何人のドイツ兵がいたのか、と問われると、「およそ1千人弱」とあいまいな答えになってしまうのは、実はこのことが関係しています。他の収容所から習志野に移送されてくる者と習志野でフランス大使館に引き渡される者の出入りがあるので、数え方が難しいのです。なお、この写真の撮影場所は「東京に到着したる光景」というのですが東京駅ではなく、習志野収容所である可能性も否定できないでしょう。

ドイツ人からフランス人になった兵隊が、「ラ・マルセイエーズ」を唄うと、ドイツ兵が「ラインの守り」をラッパで吹き鳴らしていやがらせ

 フランス大使館への引き渡しについては、こんな面白い話が残っています。

「我々の内のフランス人もまたその大多数は、エルザス・ロートリンゲンの出身者だった。すべての収容所から集められ、我々の収容所から100メートル足らずの所に並んでいる、昔のロシア捕虜収容所に収容された。我々は、彼らがそこを歩き回っているのを見ることが出来た。ある晴れた日に、そこにフランスの三色旗が高く掲げられ、今から集められた新フランス人が、その祖国への宣誓をするのだという話だった。フランス公使館の高官か公使自身が、姿を見せていた。そこで、我々の側のある戦友がラッパを持ち出して来ると、収容所の柵の所からフランス人収容所に向けて、あらん限りの力で、あの懐かしい、ドイツの闘争と抵抗の歌を吹き鳴らしてやったのだ。『雷鳴の如き雄叫び起こり、干戈の響き轟き渡る。ラインへ、ラインへ、我がラインへ!我ら皆その防人たらん』と。

 これは明らかに、向う側の行事を妨げた。一人の使者が日本の収容所長の所に現われ、ラッパの吹奏によるこの挑発を直ちに禁止するよう、要求した。日本側はしかし、このフランス側使者の明らかに横柄な調子に腹を立てたらしく、捕虜が音楽を演奏することは、明確に許されていることだ、と宣言した。今になって禁じることはできない、と。

(「カール・クリューガーの回想録から」「習志野市史研究3」所収)

 習志野収容所の外でフランス国旗を掲げ、ラ・マルセイエーズを歌ってアルザス・ロレーヌ出身者の解放式をやっていると、まだ帰れないドイツ兵がラッパを持ち出し、「ラインの守り」を吹いて妨害した。怒ったフランス大使館が山崎所長の所に押しかけ、あの妨害を何とかしろと抗議したが、日本側は肩をすくめて見せただけだった、というのですね。

 昨日まで戦友だったのに、今日からフランス人だ、お先にバイバイというのでは、残されたドイツ兵も面白くなかったのでしょうね。

ラ・マルセイエーズ(フランス国歌)

ラインの守り(ドイツ軍歌)

映画「カサブランカ」には、習志野とはちょうど逆の、こんな場面が出てきます。

ナチス・ドイツの将校が「ラインの守り」を歌っているのを聞いたレジスタンスの闘士ヴィクター・ラズロが、バンドに命じて「ラ・マルセイエーズ」を演奏させ、みんなで歌ってドイツ将校たちを黙らせる、というシーンですね。

ラズロとリック(ハンフリー・ボガード)の間で揺れ動く女性を演じたイングリッド・バーグマン、本当に素敵でした。

ちなみにラズロのモデルは、後のEUにつながる「汎ヨーロッパ主義」を唱えたリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー(日本名「栄次郎」)。日本人の血を引く人物です。

そのお母さんはクーデンホーフ光子(青山みつ)

 話がそれましたが、今でもアルザス・ロレーヌ地方に行って探してみれば、うちのひい爺さんはドイツ兵として、日本のナラシノという所にいたそうだ、というフランス人はいるのでしょう。

 なおアルザス語というのはゲルマン語の一つで、元々はドイツ系の人々です。またドーデの「最後の授業」は学校で公式の言語として教えるものがドイツ語に変更させられたということを言っているのであって、実際にはドイツ語もフランス語も出来るバイリンガルな住民がほとんどだそうです。例えば指揮者の小澤征爾さんの師匠に、シャルル・ミュンシュ(1891~1968)というフランスの名指揮者がいたのですが、彼はアルザス州の州都ストラスブール(ドイツ名:シュトラスブルク)の生まれで、生まれたときはカール・ミュンヒというドイツ人だったそうです。「密林の聖者」と呼ばれノーベル平和賞を受賞したアルベルト・シュヴァイツァー博士(1875~1965)もアルザスの人。やはり、生れたときはドイツ人でした。

 習志野の郷土史を紐解くと、意外にもヨーロッパというものが垣間見えてきますね。

(余談)

ドイツ帝国の国歌は、イギリスの「ゴッド・セーヴ・ザ・キング」の替え歌でした。

第一次世界大戦では、敵になったイギリスの歌ではさすがにまずいだろうということで、これに代えて「ラインの守り」が使われたのです。「ラインの守り」は日本では、同志社大学のカレッジソングとして知られています。

なお、今日ドイツ国歌として知られているハイドンの曲は、第一次大戦の時代にはオーストリア=ハンガリーの国歌でした。

ややこしいですね。

 

 

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セコ過ぎる!万博って「維新の会の勢力拡大とカジノ誘致」「大阪の町おこし」が目的だった?

2023-10-10 16:16:36 | 国政、県政

(DIAMOND onlineの記事より)

大阪万博が失敗確定、世界もあきれる“驚きの開催目的”とは?

大阪万博が失敗確定な「4つの理由」、世界もあきれる“驚きの開催目的”とは?

一地方の地域おこしに、世界も企業も協力できない

大阪万博のHPを開いてみると、開催目的として次のように記載されている。

<「万博」には、人・モノを呼び寄せる求心力と発信力があります。この力を2020年東京オリンピック・パラリンピック後の大阪・関西、そして日本の成長を持続させる起爆剤にします。>

 ちょっとびっくりである。地域の成長の起爆剤だったのだ。これでは、大阪以外の人の共感は得られまい。

もともとの目的があまりに直截的で、これではパビリオンを出そうかなと思った国の大使も「どっちらけ」だろう。

すでに一流企業として認識されている企業にとって、今の時代に万博にパビリオンを出すメリットはあまりない。日本に来た外国人にアピールできるといっても、基本的には日本人が多く集まるイベントなのだ。さらには、22年までドバイでど派手な万博が開催されていたので、万博については食傷気味といったところではないだろうか。

大阪で一丸となって、関西で一丸となって、あるいは日本全体で一丸となって……という機運が高まっているなら、それを無視することはかなり難しい。しかしながら、目的のところにあったように、このイベントの主役は大阪であり、ちょっと拡大して関西、そして取って付けたかのように日本の経済発展のためにやるイベントであると明記されている以上、まずは大阪が頑張れば良いのであって、その他の地域の人は良くて様子見である。

 ただ、関西といっても決して一枚岩ではない。対関東・対東京ということでは団結することもあるかもしれないが、大阪の近隣県はそれぞれ、「うちは大阪とは違いますから」と一くくりにされることにむしろ抵抗する傾向さえある。大阪の中であっても、「うちはみなさんが思っている大阪とは違いますから」と思っているに違いないし、必ずしも万博を歓迎していない人だってたくさんいるだろう。

全体として、「しょぼい」ことになってしまう可能性は高い。

「撤退」の英断を誰が下すのか

もはや中止しかない。これまで費やした手間暇お金、国際的な恥辱……いろいろあろうが、そもそも、この万博というフォーマット自体、サイバー空間で世界がつながる時代には「オワコン」だ。このようなものの開催にエネルギーを注いだことが無駄だったのである。

 大がかりな建設工事が始まる前にやめてしまえば被害も最小限で済む。なお、ゼネコン関係者は万博を開催した方がもうかるのではないかと思う向きもあるかもしれないが、昨今の資材の高騰や人手不足が続く現状では、なかなか手出ししにくいと思われる。というのは、こうした公共的な事業の場合、当初の予算以上にコストがかかった分は持ち出しになってしまうことが多いからだ。

(東京新聞の記事より)

「大阪万博は国家事業」って維新のご都合主義では? 整備費は倍以上、建設遅れも…責任はどこへ?:東京新聞 TOKYO Web

「大阪万博は国家事業」って維新のご都合主義では? 整備費は倍以上、建設遅れも…責任はどこへ?

パビリオン建設が遅れる2025年大阪・関西万博。そもそも開催できるのか、日に日に疑問の声が高まる中、強力に旗振りしてきた日本維新の会から、首をかしげたくなる発言が相次いで出た。「万博は大阪の責任ではない」「国家事業だ」。開き直りや自己保身にも聞こえる言葉。この期に及んで国頼みをあらわにするのは、ご都合主義が過ぎないか。

 さかのぼること9年前。大阪府の万博推進局によると、大阪維新の会の府議団などが2014年8月、にぎわいづくりの一環として万博の誘致を提案した。

19年1月には、開催準備に当たる「日本国際博覧会協会(万博協会)」が国主導で発足した一方、協会は府の咲洲庁舎内に事務所があり、府市の職員が派遣されているほか、幹部の副会長には府知事と大阪市長が名を連ねる。費用負担の面でも府市は深く関与しており、協会によると、万博の会場建設費1850億円のうち、国と府市、経済界で3分の1ずつを負担する。

◆維新は選挙公約に「万博の成功に向け」

 大阪が地盤の日本維新の会も万博推しだ。
 そもそも府市のトップは維新の幹部が務めてきた。昨年の参院選の選挙公約でも「万博の成功に向け、国と開催都市、官民が強力に連携して国内機運の醸成に努めます」「関連事業は会場周辺のみならず大阪府全域を始め、関西や全国へと拡大・展開します」とうたっている。
 大阪在住のジャーナリストの吉富有治氏は「もともと万博の誘致で一生懸命旗を振ってきたのは府市であり、維新だ。大阪開催が決まってから最近の選挙まで『誘致に成功したのは維新の功績だ』と大々的に宣伝してきた。地元では万博イコール維新という認識に揺るぎはない」と説く。

◆万博はカジノをつくる大義名分にすぎない?

 帝塚山学院大の薬師院仁志教授(社会学)は「維新にとっては、もともと夢洲にカジノをつくることが目的。万博はその整備を進めるための大義名分に過ぎない。もっといえば、夢洲の開発そのものを目的にしているように見える。バブルの過剰投資と同じ。維新の理屈は当初から変わっていない」と語る。
 
(神戸新聞NEXTの記事より)

関西万博、兵庫県のパビリオンは建設費ゼロ 150を超えるプログラムで誘客目指す取り組みと狙いは

 2025年の大阪・関西万博で参加国のパビリオン建設の遅れが問題となる中、隣県の兵庫県は「フィールドパビリオン」を掲げ、新たなハコモノを建てない誘客を目指している。県は「県全体がパビリオン」と訴えるが、それってどういうこと? 

 島の周囲約10キロを約40分かけて漁船で巡るクルーズは3月、「ひょうごフィールドパビリオン」の中でも、兵庫県が特に情報発信に注力する「プレミア・プログラム」に選ばれた。

 県はほかにも、西脇市の播州織ブランド「タマキニイメ」による工房見学体験や、丹波篠山市の丹波焼の里を訪ねるツアーなど計5件を「プレミア」に選定し、情報発信に力を注ぐ。

 フィールドパビリオンはハコモノを必要としないため、当然費用も抑えられる。万博会場となる夢洲の建設費は当初予定の1・8倍となる2300億円程度まで増額することが見込まれているが、兵庫の場合は建設費ゼロ。23年度当初予算にプロモーション費用などで約1億8千円を計上しているだけだ。

 一方で、象徴的な建物がないことからインパクトに欠ける上、多すぎるプログラムは埋没する危険性も併せ持つ。
 

 

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ま、当然でしょうね。埼玉の「虐待禁止」条例案、9月定例会での成立断念…「子どもだけの登下校まで」批判相次ぐ

2023-10-10 15:22:23 | 国政、県政

(読売新聞の記事より)

埼玉の「虐待禁止」条例案、9月定例会での成立断念…「子どもだけの登下校まで」批判相次ぐ

埼玉の「虐待禁止」条例案、9月定例会での成立断念…「子どもだけの登下校まで」批判相次ぐ(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

 子どもを自宅や車などに放置する行為を「虐待」として禁止しようと、埼玉県虐待禁止条例の改正案を提出していた自民党県議団は、開会中の9月定例会での成立を断念した。10日に正式決定する。改正案には県民などから「子どもだけの登下校まで禁じるのはおかしい」などと批判が相次ぎ、理解を得られない中で成立させるのは困難と判断した。

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