降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★13時間勤務 ?!=「北海タイムス物語」を読む (105)

2016年05月23日 | 新聞/小説

(5月22日付の続きです。写真は、本文と関係ありません)

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目——の第105回。

【小説の時代設定と、主な登場人物】
1990(平成2)年4月中旬@北海タイムス札幌本社ビル。
▽僕=北海タイムス新入社員・野々村巡洋(じゅんよう)。東京出身23歳、早大卒
▽秋馬(あきば)=同紙整理部員で、野々村の3年先輩。空手の大ファン。この日は2面の面担(めんたん=紙面編集担当者)だった
▽松田(まつだ)=野々村と同期の北大中退24歳。柔道部出身。小説作者・増田さんの投影キャラと思われる
▽権藤(ごんどう)=整理部員。この日は社会面担当

【 以下、小説新潮2016年1月号=連載④ 455~456ページから 】
「奥の階段のとこに座ってたんです、こいつ」
秋馬さんが僕の尻を叩いた❶。泣いていたことをバラされると思ってビクビクしていたのでほっとした。
ちらりと権藤さんがこちらを見た。僕は慌てて目を伏せた。
誰かが「ああ、あそこか。魔のトライアングル階段。俺も新人ときいつもあの辺に隠れたよ。あそこは滅多に❶人来ないからな」と言った。
デスク❷がミットの捕球部位を右拳でぱんぱんと叩いた。
「明日は六社リーグの開幕戦だからな。いなくなっちまったらどうしようかと思ってたんだ」

(中略)
みんなが「めしめし」「行こう、行こう」「今日の定食はなんだろうな」と口々に言いながら連れだって編集局を出ていく。
「野々村君も行くよ」
松田さんが促した。
「僕はいいです……」
「だめだめ。夜もたないから」
「何時まで仕事なんですか」
「夕刊からの人間は十時か十一時くらい」
たしかにそれではもたない。
それにしても朝十時前に出社して夜十一時って、十三時間も労働時間がある❸のか。



❶叩いた/滅多に
新聞社のルールブック「記者ハンドブック/新聞用字用語集 第13版」(株式会社共同通信社発行)では、
▽たたく叩く)→たたく。たたき上げ、たたき売り、たたき台、たたきのめす(△は漢字表にない字)
▽滅多(滅多)→めった。めった打ち・撃ち、(副)めったに
——それぞれ平仮名表記にしましょう、といっているけど、著作物なのでこのまま行ってください。

❷デスク
ありゃ、やっぱり整理デスクがいたのかぁ!(僕注・この日のデスク名は金巻=かねまき)
夕刊編集のドタバタ事故にもかかわらず、4階制作局に姿が見えなかったから不在かな、と思っていた。
おそらく5階の編集局で朝刊の追い込みもの作業をしていたのかもしれない。

❸朝十時前に……労働時間がある
たしかに、野々村くんが驚くのも無理はない13時間!
食事時間などを引いても11時間以上……う~む、う~む。
10:00~15:00=夕刊編集
15:00~16:30=食事
16:30~23:00=朝刊編集(遠隔地向け早版地方版か、追い込みもの・フィーチャー面編集なのかしらん?)
かなり過酷な勤務ダイヤなのだが……。

————というわけで、続く。