降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★共同輸送便が出るぞ!=「北海タイムス物語」を読む (97)

2016年05月10日 | 新聞

( 5月8日付の続きです )

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目した——の第97回。
(小説の時代設定や登場人物のほか、新聞編集でつかう「倍数」「CTS」などの用語は随時繰り返して説明します)

【 小説新潮2015年12月号=連載③ 370~371ページから 】
「一面もOK!」
「よし、一面降ろせ!」
「なんで今日はみんな遅いんだ!」
「整理、てめえらいい加減にしろ!」
刷版がダンゴになっちまった❶ろ!」
「社会面急げ! 共同輸送❷のぶんが間に合わない!」
「社会面なにやってんだ!」
「急げ! リミットだ!」
「よし、火事の原稿が来た❸ぞ!」
「早くここに流せ!」
「社会面、早くしろ! もう七分遅れてるぞ!」
「あと一本来てない! 釧路の漁船沈没のやつ! 一時間以上も前に生原で出してるぞ! どこかに紛れてないか!」
権藤さんが叫んだ。



❶刷版がダンゴになっちまった
「ダンゴ」は集中降版の意味。
整理が次々「OK!」を出すと降版ラッシュとなり、印刷局刷版の処理が遅れてしまうことがある。
不測事故をまねくことがあるので、集中降版は避けましょう——とは言ってもねぇ、整理部だって好きで遅くしているわけじゃないし(小さな声)

❷共同輸送
読売、毎日新聞との共同輸送便に乗せること=写真
小説当時(1990年)の各紙部数は不明だけど、広い北海道だから自社便を出すのは経費がかかるのだ……ものすごく。

*他紙に迷惑かけられぬ(←整理の鑑じゃんwww)
事件が飛び込み→降版遅れで、僕も朝刊が共同輸送便に間に合わなかった経験がある。
「いやぁ~申し訳ない! ホント申し訳ない! ウチの整理のバカが遅れてるんだわ!」
と製作工程管理委からの頭ペコペコ電話で10分ぐらいは待ってくれるけど、過ぎると容赦なく出発してしまう。
他紙まで配達が遅れてしまうから仕方ないよね。


❸火事の原稿が来た
「原稿が来た」は印字された記事ゲラができた、の意味。
当時の北タイ紙の編集工程は分からないけど、出稿→入力センターを経て
①5階の校閲で初校し、赤字を反映させたゲラ
②あるいは、未校(校閲ノーチェック)でも、時間が時間だから組み込んじゃえ!
校閲さん、素読みしてくれ! そこんとこよろしく!
——なのかもしれない。

————というわけで、続く。