降版時間だ!原稿を早goo!

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「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★慟哭の「64/ロクヨン」観た。

2016年05月01日 | 新聞
©️2016映画「64」製作委員会

「わずか7日間でその幕を閉じた、昭和64年。
その間に起きた少女誘拐殺人事件、通称『ロクヨン』。」
「犯人は、まだ昭和にいる。」
———いいキャッチコピー。
横山秀夫さん(59)最高傑作「64/ロクヨン」前編を試写会で観た(瀬々敬久監督・前編5月7日、後編6月11日公開)=写真
小説も重量級だから、前編だけで2時間1分(どっこい、ぜんぜん疲れなし)!

【邪魔にならない程度の「ロクヨン前編」ストーリー】
元刑事で、一人娘が失踪中の県警広報官・三上義信(佐藤浩市さん=55)。
交通事故の加害者匿名で地元記者クラブと揉めるなか、昭和64年(1989年)に発生した少女誘拐殺人事件「ロクヨン」に関し、警察庁長官視察が決まった。
再び動きはじめたロクヨン事件。
遺族との交渉中、刑事部vs警務部、県警vs記者クラブ、中央vs地方警察の軋轢が一気に噴き出した。
娘の失踪に加え、県警内部の権力闘争。苦境に立たされた三上は……。

組織と個人の相克、そして組織に生きる男に負荷を加えるのが横山ミステリーの真骨頂だけど、これでもかッこれでもかッの負荷負荷負荷負荷に、観ている僕もつらくなる——圧巻の警察ミステリーは渾身の人間ドラマになった。

▼ここが良かった❶
いま、内に矜持を秘め、組織の不条理に抗う男を演じることができるのは、佐藤浩市さんしかいない(と思う)。
脇も重量級キャスト。
三上が所属する〈警務部〉には滝藤賢一、仲村トオル、綾野剛、榮倉奈々さんら。
対立する〈刑事部〉には奥田瑛二、三浦友和、小澤征悦さんら。
ほかに椎名桔平、永瀬正敏、赤井英和、吉岡秀隆、窪田正孝、夏川結衣さんら。
そして、原作を読んだとき僕は綾野剛さんあたりかなぁと思っていたコノヤロメな〈東洋新聞キャップ〉には瑛太さん。
県警と全面戦争をする東洋新聞は瑛太記者だけでなく、支局長もイヤなヤツなんだよなぁ!(笑)

▼ここが良かった❷
誘拐殺人事件から14年後を描いた前編は、テンポがいいので、2時間があっという間。
驚愕と謀略に息つく間もなく、さらなる大事件が起きた——あとは言えません。

(以下、小さな声……)
つくづく残念なのは『クライマーズ・ハイ』『半落ち』に加え、このロクヨンを書いた横山秀夫さんがサントリーミステリー大賞佳作、松本清張賞、日本推理作家協会賞しかとっていないこと。
あの「一件」さえなければ、直木賞選考委員ぐらいは今ごろやっていらっしゃるのではないか、と改めて思う。不遇の作家なり。

————前編、ふたたび映画館で観たい。
そして後編、はやく観たい。