降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★『トリダシ』の新聞社を読む (60)

2015年11月16日 | 新聞

( 11月13日付の続きです )

スポーツ新聞の舞台裏を活写した、本城雅人さん(49)の新刊小説『トリダシ』(文藝春秋、本体1,750円)=写真
同小説は、
「四の五の言ってねぇで、とりあえずニュース出せ!」
を口癖にしている、東西スポーツ野球部デスク・鳥飼義伸(とりかい・よしのぶ=44歳)が主人公の連作集。
第4話「裏取り」から、新聞社編集局や同整理部に関係する描写に注目してみた。


( 188~189ページ )
本人に当てたのなら間違いないか……違っていたら書くなくらいは言うだろう。
「でもそれならどうして鳥飼に連絡しなかったのですか」
本当は鳥飼にではなく、自分にと言いたかった。そういう約束になっていたはずだ。
うちが独自にやったんだ。グループだからってなにもご丁寧に教えてやることもない❶」
「局次長も約束したじゃないですか。向こうは騙されたと怒ってますよ。金輪際うちが組もうとしても受けてくれませんよ」
「馬鹿か湯上。うちがスポーツと組むことなど、二度とない❷」
「局次長」
「そもそも鳥飼だって文句言ってこないじゃないか。本当ならおまえより先に、あいつが怒鳴り込んで来てもおかしくないだろ」
今回の鳥飼は昔とはどこか違っていた。けっして角が取れたわけではないが、一人で闇雲に点を取りにいっていた昔のイメージとは重ならない。



❶うちが独自に……ご丁寧に教えてやることもない
「うち」とは一般紙の東西新聞で、露崎局次長(以下、局次)の発言。
露崎局次は
「俺たち東西新聞取材チームが、独自に掴んだ情報だ。僚紙とはいえ、鳥飼がいる東西スポーツに教える必要はない」
と言っている。その裏では
〈 天下国家を論じる俺たち一般紙さまは、エンタメ・アダルトなスポーツ新聞なんかより上に位置しているんだ。
子会社のくせに生意気なんだよ、東西スポーツの鳥飼は 〉
と新聞ヒエラルキーを持っている。
どっこい、その一般紙さま編集局にも政治部を頂点とする〝部ヒエラルキー〟があるので、話は複雑になっちゃう。
その点、あまり整理部(=編集センター)は関係ないので、ゴタゴタしたくない人は整理部を希望しましょう。

❷うちがスポーツと組むことなど、二度とない
子会社のスポーツ記者と、連携することは金輪際ないよ——ということ。
ムカッ、これはひどい発言(←僕が憤ってもしかたないけど)。
でも、
東西新聞(親会社) ⇄ 東西スポーツ(子会社)
間では異動が頻繁に行われているようなので、露崎局次も(出世競争に敗れると)東西スポーツ編集局長なのである(一般紙の局次長席は2~3あるけど、編集局長席は1つしかない)。
スポーツ編集局長になったら、全部員から総スカン間違いなし。
いるいるいるいるいるいる、こういう人。