降版時間だ!原稿を早goo!

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「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★編集を急いだ?『妻、のぶ代へ』❷止

2015年11月08日 | 新聞/小説

( きのう11月7日付の続きです )
10月25日発売後3日で10万部突破——そのうちの1冊が、僕が買ったものです。
『娘になった妻、のぶ代へ/大山のぶ代「認知症」介護・夫が明かす2700日』(砂川啓介さん、双葉社=本体 1,300円)=写真

巻末の「特別企画③夫婦対談・これからの二人」には、ちょっと衝撃を受けてしまった。
砂川「なぁ、ペコ。今回、俺たちの半生が本になったよ。俺たちが出会った50年前のあの日から、君の病気、俺の病気、そして今の二人の日々を一冊にまとめてみたんだ」
大山「あら、そうなの?」
( 236ページから )

アルツハイマー型の認知症発症前の大山のぶ代さん(現在82歳)は、料理番組に出て才気煥発・当意即妙の会話を見せていたけど、この「対談」では——
大山「あら、そうなの?」
「そうねぇ」
「えぇ」
「啓介さんは優しいわ」
「あら、嬉しい」
「そうね、そうよね!」
「あら、ヤダわ! 急になによ、アハハ」
「うん。そしたら私、笑うわ」
「はーい、啓介さん」
「啓介さん、ずっと一緒にいましょうね」
——ワンフレーズでの受け答え。
編集段階で手を入れたのだろうけど、のぶ代さんの病状がリアルにわかるのがつらかった。


以下は、編集サイドの話——。
【 おそらく1年後、文庫化するときに手直ししてほしいなぁ~的な箇所 】
妻のぶ代さんの病状を公表(今年2015年5月)後、この本の発刊(同10月25日)まで5カ月ほどなので、雑な編集が多少みられた。
おそらく1年後に双葉文庫に入るので、手直ししたほうが読者に親切だよねぇ、なところ。

①12時間制なのか24時間制なのか?俺か僕か?
チェックミス。
「毎日、決まってトイレに起きる23時頃」( 154ページ )
「午後5時。僕は夕食の準備に取り掛かる」( 176ページ )
本文の時制が統一されていないので、通して読み進んでいくと「アレレ?」なのだ。
さらに、基本的な「俺」「僕」も不統一。

②年号が混在
これも編集側の〝手抜き〟。
西暦と和暦が混在して、読者に不親切。
たとえば、著者紹介でも——
砂川啓介(さがわ・けいすけ)
昭和12年2月、東京・深川に生まれる。
昭和36年、体操のお兄さんとして大ブレイク。
昭和39年、大山のぶ代と結婚。
2008年、のぶ代夫人が脳梗塞で倒れる。
2012年秋、夫人が認知症を発症。
2015年5月、ラジオ番組でこの事実を公表し、話題となった。
——これほどしっちゃかめっちゃかは珍しい。

③うーむ、やはり共著ではないだろーか
確かに砂川さんの著作だけど、のぶ代夫人の略歴が書かれていないのはいかがなものだろう……「共著」ともいえるので、やはり載せたほうがよかったのでは。

余計な深読み=この本の発売が先にあって、ラジオ公表を逆算したのではないだろうか……