降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★「ネタ元」新聞社を読む⑦

2015年04月12日 | 新聞

(きのう4月11日付の続きです。写真は、本文と関係ありません)

横山秀夫さん(58)の短編ミステリーの舞台となった地方新聞社に注目してみた。
短編「ネタ元」(2000年9月発表。文春文庫『動機』収録)に登場する新聞社は、とある地方の「県民新聞社」。
主人公は、横山さん作品としては珍しく女性社会部記者・水島真知子(29)。
ある日、発行部数800万部の全国紙・東洋新聞から、同記者に引き抜きの誘いが来た………=太字部分は、本文から引用しました。


ネタ元。そう呼ぶには、あまりに希薄な関係だった。
しかし、過去に二度、彼女は記者室の県民新聞ブースに電話を寄越した。真知子を電話口に呼び出し、未解決の事件の名を挙げ、その犯人に逮捕状が発付されたことを漏らしたのだ。

(中略)
真知子は逮捕状抜きのネタ元を社内の人間にも秘した。
進藤(僕注
=県民新聞社編集局社会部デスク)はさすがに声をかけてきたが、
ネタ元は墓場まで持っていけ。たとえ上司にだってバラすな
というのが彼の口癖だ。

(中略)
求められればやるしかない。真知子はそう思った。
たったいま、人生の岐路に立っている。東洋に行ける。このチャンスを絶対に逃したくない。
舵取りすら失った泥船の中で疲弊するだけの毎日はもう真っ平だ。大海原に向かって泳ぎだしたい。

(後略)=218~222ページから。


【よけいな解説】
▽ネタ元は墓場まで持っていけ………バラすな
僕は整理部なので、出稿記者のニュースソースはあまり知らないが、
報道部長から同じ言葉を聞いた覚えがある。
んまぁ、彼は書き手側だから取材源・人脈がいろいろあるのだろーけど、
僕たち整理部には、墓場まで持っていくものは無い(と思う。持っていくものがあるとすればナンだろう? 倍尺だろーか、笑)。

▽求められれば………このチャンスを絶対に逃したくない
(引き抜きの声をかけられた真知子記者の気持ち)分かるぞ、分かるぞ、分かるぞぉ~!
ステップアップのチャンスを逃すなっ、真知子記者!
………と言いたいところだけど、どーなのかしらん。
中途入社組、経験者採用組の先輩たち(主に報道部)を見てきたが、
ムニャムニャ(←言えない)でムニャムニャ(←とてもじゃないが言えない)のようで、けっこうご苦労されている。
かなり、社風が左右するのではないかなあ。

▽疲弊するだけの毎日………
この場合の「毎日」は〝日々〟の意味で、
決して毎日新聞のコトではありません。