降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★「ネタ元」新聞社を読む④

2015年04月05日 | 新聞

(3月31日付の続きです。写真は、本文と直接関係ありません)

横山秀夫さん(58)の短編ミステリーの舞台となった地方新聞社に注目してみた。
「ネタ元」(2000年9月発表。文春文庫『動機』収録)に登場する新聞社は、とある地方の「県民新聞社」。
主人公は、横山さん作品としては珍しく女性社会部記者・水島真知子(29)。
ある日、発行部数800万部の全国紙・東洋新聞から真知子記者に、転社の誘いが来たが………=太字部分は、本文から引用しました。


二、三日中に返事を下さい。上の者に会わせます。草壁はそう言っていた。考えるまでもないような気がする。もう気持ちの大半は東洋新聞に飛んでいた。
未練などない。
県民新聞は泥沼だ。外からは、丁々発止、県友タイムスと張り合っているように見えるのだろうが、しかし、発行部数はあちらが四十万、こっちはその半分だ。いや、とっくに警戒ラインの二十万部を割り込み、広告収益も激減している。

(中略)
経営を圧迫する夕刊は一昨年廃止した。採算の上がらない出版事業部も解体した。だが、焼け石に水だった。
真知子が入社してからだけでもオーナーが三度替わった。

(後略)=207ページから。


【よけいな解説】
▽ 上の者に会わせます。
編集記者にとって麻薬の言葉「引き抜き」。
地方紙・真知子記者の場合は、東洋新聞の総支局長あたりからの面接だろうか。

僕の場合。
転社先の人事部長から
「まず、あなたの編集した紙面を数部もってきてください」
と言われ、持参した紙面を見ながら整理部長→副社長と面談。
なんとかかんとか副社長面談を終えた後、再び人事部長からヒソヒソ
「普通ならですね、次の役員面接の前に、英語を含む筆記試験をやっていただくのですが、あなたの場合は………まぁ、無しにするようにしますから。面接頑張ってくださいね」
と言われた(→筆記なんかやったら、コイツはダメだ、と思われたのね。だから、人事部長には頭が上がらない、笑)。

記者引き抜き(中途採用)面接の場合。
必ず書いた記事や担当紙面を要請されるから、我ながら良くできたと思う紙面を日頃から用意しておきましょうね。

▽ 警戒ラインの二十万部を割り込み………激減
恐らく〝押し紙〟込みの部数。
小説の中では、朝日、読売、毎日、産經、東洋、県友タイムス6紙が発行されているエリアなので、「二十万部を割り込み」は確かにキツいどころか、ヤバい。
意外にも、日経が出ていない地域のようだ。

▽ 夕刊は一昨年廃止
横山さんがいた上毛新聞は1961年に朝夕刊を一本化していたので、かなり早く見切っていたのだなぁ。