降版時間だ!原稿を早goo!

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「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★「ネタ元」新聞社を読む⑤

2015年04月06日 | 新聞

(きのう4月5日付の続きです。写真は、本文と直接関係ありません)

横山秀夫さん(58)の短編ミステリーの舞台となった地方新聞社に注目してみた。
「ネタ元」(2000年9月発表。文春文庫『動機』収録)に登場する新聞社は、とある地方の「県民新聞社」。
主人公は、横山さん作品としては珍しく女性社会部記者・水島真知子(29)。
ある日、発行部数800万部の全国紙・東洋新聞から真知子記者に、引き抜きの誘いが来たが………=太字部分は、本文から引用しました。


東洋新聞でも事件をやるのだろうか。ふと真知子は思った。
全国紙に中途採用で行く。となれば、最初はおそらくどこかの地方都市の支局に配属される。
見ず知らずの土地。そこで警察を回る。また一から警察官の名前と癖を覚え、官舎や自宅を探し歩き、休みなしに夜回りを掛ける。
それでもいい。そう思った。

(中略)
午前六時。後輩の織田からの電話をベッドの上で受けながら、真知子は、読売新聞と県友タイムスの紙面を手荒く開いていた。こっちも特ダネはない。
(中略)
一年生記者の加納ひろみ。
〈毎日はなしですけど、東洋が変なの書いています。えーと、読みます〉
東洋新聞が書いたのは、主婦殺しに関する鑑識ネタだった。
『犯人はAB型血液』の大見出しの下に、小さなクエスチョンマークがついている。

(後略)=209~212ページから。


【よけいな解説】
▽東洋新聞でも事件をやる
(地方紙・県民新聞にいる真知子が)移籍先の全国紙・東洋新聞でも警察・事件ものを担当する、の意味。
んーまぁ、所属希望と移籍先欠員事情があるだろうけど、たぶんサツ関だよね。
記者(ライター)が引き抜きを受けた場合、
間違っても整理部配属は無いと思う(キッパリ!)。
もしも、もしも、この場合、移籍先新聞社から
「んじゃあ、編集センター整理部では?」
と言われたら、彼女はどうするんだろうか(笑)。
きっと、真知子記者は、
「行きません!
だって私、記事は書けるけど、倍数だのUだの見出し本数だの知りません!整理部は専門職だと思いますよ!」
と言うと思うのだ。

▽全国紙に中途採用で行く
知人が転社したけど、
「外から見るのと、内から見るのとは………ムニャムニャだよ、ほんとぉ、ハァ~(ため息)」
「3人寄れば派閥ができるっていうからなぁ」
と言っていた。

▽読売新聞と県友タイムス
真知子記者は、自宅で「読売」と県紙ライバル紙「県友タイムス」2紙を定期購読しているのが読み取れる。
この2紙の組み合わせは、かなり意味深。

▽大見出しの下に、小さなクエスチョンマーク
〝大見出し〟は地紋見出しだろうか。
中G白ヌキベタ黒「犯人はAB型血液(?)」
(?)部分をマル囲みにすれば、グラフィック部ではポイントを落として入力する(はず。新聞社によってルールが異なることがあるので)。
活字3段47倍見出しなら、5倍Mでも目立つ(Gはゴシック体、Mは明朝体)。
でも、大見出しとあるから、裸活字見出しとは考えにくい。
*裸活字見出し=地紋スクリーンがない、活字だけの見出し。アミかけ(ダミーの網スクリーン)を被せる場合も含む。